第三封印の鍵と二人の銀髪少女
第十四話 第三封印の鍵と二人の銀髪少女
食堂の空気が静まり返る。
ベルの言葉はそれほど衝撃的だった。
「その子は第三封印の鍵です」
ミナはプリンを食べていた。
「美味しい♪」
そして隣のメイアも食べていた。
「美味しい」
緊張感がなかった。
驚くほどなかった。
「いやいやいや!」
最初に叫んだのはシオンだった。
「第三封印の鍵って何だよ!?」
「そのままの意味です」
ベルは真面目な顔で答える。
「ルミナさんにかけられた封印を解除するために必要な存在です」
ミナはスプーンを止めた。
「私が?」
「はい」
「へぇー」
軽かった。
びっくりするくらい軽かった。
「もっと驚こうよ!?」
思わずツッコんでしまう。
「だって分からないし」
ミナは首を傾げる。
「それに」
「それに?」
「お腹いっぱいになってから考えたい」
全員が黙った。
ある意味大物だった。
ルミナがそんなミナをじっと見つめる。
「ねぇ」
「ん?」
「本当に私がお姉ちゃんなの?」
ミナは少し考えた。
そして。
「たぶん」
「たぶん!?」
今度は全員がツッコんだ。
「いや、だって私も詳しく覚えてないんだもん!」
「どういうこと?」
リンが聞く。
ミナは少しだけ困ったような顔をした。
「気が付いたら外の世界にいたの」
「外の世界?」
「うん」
「それで?」
「ずっと誰かを探してた」
そう言って。
ミナはルミナを見る。
「ずっと探してたらお姉ちゃんを見つけた」
その表情は真剣だった。
いつもの明るい顔ではない。
「だから会いに来た」
ルミナは少し戸惑っていた。
でも。
嫌そうではなかった。
むしろ。
どこか安心しているようにも見えた。
「変なの」
「変かな?」
「うん」
ルミナが笑う。
「でも嫌じゃない」
ミナの顔が明るくなった。
「本当!?」
「うん!」
次の瞬間。
ぎゅうううう!
「わっ!?」
また抱きついた。
「会えて嬉しい!」
「苦しい苦しい!」
仲良くなるのが早かった。
その様子を見ていたシオンが小さく笑う。
「なんか本当に姉妹っぽいな」
「そうだね」
僕も頷いた。
銀色の髪。
紫色の瞳。
笑った顔。
本当にそっくりだった。
その時。
ベルが小さく咳払いをした。
「実はもう一つ分かったことがあります」
みんながベルを見る。
「第三封印は近いうちに開きます」
食堂の空気が少し変わった。
「どれくらい?」
リンが聞く。
ベルは答える。
「数日以内です」
「早っ!」
シオンが驚く。
僕も同じ気持ちだった。
そんなに近かったのか。
しかし。
「じゃあその前に遊ぼう!」
ミナだった。
全員がそちらを見る。
「え?」
「だって数日あるんでしょ?」
「まぁ……」
「だったら遊べる!」
満面の笑み。
ルミナも反応する。
「遊ぶ!」
「遊ぶ!」
二人とも目が輝いていた。
ベルが頭を抱える。
「緊張感が……」
「ないね」
僕が言った。
「ないな」
シオンも頷く。
でも。
少しだけ思った。
不安なことはある。
封印のことも。
ミナのことも。
まだ分からないことばかりだ。
それでも。
今この瞬間は。
みんなで笑っていたかった。
「じゃあ明日どこ行く?」
僕が聞く。
「街!」
ルミナ。
「街!」
ミナ。
またハモった。
「仲良いなぁ」
シオンが笑う。
「似た者同士」
メイアが言う。
その言葉に。
みんなが笑った。
こうして。
アキラたちは久しぶりに学園の外へ出かけることになる。
しかし――
その頃。
王都から遠く離れた山奥。
一人の男が静かに目を開いていた。
漆黒のローブ。
赤い瞳。
そして。
手には古びた石板。
「第三封印が動いたか」
男は不気味に笑う。
「ようやく見つけた」
その視線は。
王立アルカディア学園の方向へ向けられていた。
平和な時間は続いている。
だけど。
少しずつ。
新たな物語も動き始めていた。




