学園祭前日は大忙し!
第九話 学園祭前日は大忙し!
学園祭前日。
朝から学園は大騒ぎだった。
廊下には飾り付け。
校庭には屋台。
あちこちから楽しそうな声が聞こえてくる。
「いよいよ明日かぁ」
僕は教室を見回した。
喫茶店の準備もかなり進んでいる。
ルミナの描いた看板も入口に飾られていた。
「可愛い」
通りかかった生徒たちも褒めている。
ルミナは照れていた。
「えへへ」
その頃。
厨房。
「今度こそ成功させる!」
シオンが気合十分だった。
目の前にはクッキーの材料。
そして。
監視役のリン。
「変なことしないでね」
「しない」
五秒後。
「隠し味に激辛スパイスを」
「却下」
「早い!」
リンの判断は速かった。
むしろ速すぎた。
「なんで入れようと思ったの?」
僕が聞く。
「面白そうだから」
「喫茶店だよ!?」
危うく罰ゲーム大会になるところだった。
一時間後。
「できた!」
シオンが完成したクッキーを持ち上げる。
みんなが見る。
そして。
沈黙。
「黒くない」
メイア。
「黒くないね」
リン。
「黒くない!」
ルミナ。
「基準がおかしい!」
シオン。
前回がひどすぎた。
とりあえず食べてみる。
サクッ。
「おぉ」
「美味しい」
「普通に美味しい」
「やった!」
シオンがガッツポーズした。
まるで勇者が魔王を倒したみたいな喜び方だった。
午後。
教室の飾り付け。
僕は脚立に乗って飾りを付けていた。
「よいしょ」
あと少し。
その時。
ぐらっ。
「えっ」
脚立が揺れる。
落ちる。
そう思った瞬間。
シオンに抱えられていた。
「助かった!」
「アキラはよく落ちるなぁ」
「そんなに?」
「おぉ!!」
周囲のみんなも頷いていた。
解せぬ。
教室の隅。
ルミナは新しい絵を描いていた。
「何描いてるの?」
リンが聞く。
「学園祭!」
完成した絵を見せる。
そこには。
笑顔の僕たち。
ケーキを運ぶシオン。
本を持ったリン。
プリンを抱えたメイア。
そして。
中央で笑うルミナ。
「いい絵だね」
リンが優しく微笑む。
ルミナは嬉しそうだった。
「宝物にする!」
そう言って絵を大事そうに抱きしめた。
夕方。
準備終了。
みんな疲れていた。
でも。
達成感もあった。
「終わったー!」
シオンが机に突っ伏す。
「頑張ったね」
僕も笑う。
教室はすっかり喫茶店らしくなっていた。
看板もある。
飾り付けもある。
クッキーも黒くない。
完璧だ
「明日楽しみ」
メイア。
「私も!」
ルミナ。
その顔は本当に楽しそうだった。
見ているこっちまで嬉しくなる。
帰り道。
夕焼けの空の下。
みんなで歩く。
いつもの帰り道
だけど今日は少し特別だった。
「明日は絶対成功する」
シオン。
「クッキー焦がさなければね」
リン。
「まだ言う!?」
みんなが笑う。
僕も笑う。
ルミナも笑う。
メイアも少しだけ笑った。
こういう時間。
本当に好きだな。
そう思った。
その夜。
ルミナは窓から月を見ていた。
「楽しみだなぁ」
明日の学園祭。
みんなと過ごす時間。
自然と笑顔になる。
その時。
額の紋章が一瞬だけ光った。
しかし。
本人は気付かない。
ただ。
どこか遠くから。
優しい声だけが聞こえた。
『もう少しだよ』
そして。
学園祭当日の朝がやって来る――。




