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学園祭準備は大騒ぎ

第八話 学園祭準備は大騒ぎ


 学園祭まであと二週間。

 王立アルカディア学園はお祭りムード一色だった。

 廊下には飾り付け。

 校庭には特設ステージ。

 生徒たちは朝から大忙しだ。

 そして僕たちのクラスも――


「喫茶店に決まりました!」


 担任の先生が発表した。


「おおー!」


 教室が盛り上がる。


「普通だね」


 僕が言う。


「まぁ...ね」


 リンが頷く。


「巨大迷宮じゃないのか……」


 シオンが残念そうだった。


「まだ言ってる」


 どうやら本気だったらしい。

 放課後。


 準備開始。

 机を運ぶ人。

 メニューを考える人。

 飾り付けを作る人。

 みんな忙しそうだった。


「アキラ」


「うん?」


「これ持って」


 リンから木材を渡される。


「了解」


 運ぼうとした。

 しかし。

 足元の布に引っかかる。


「あっ」


 ぐらっ。


 木材が傾く。


「危ない!」


 その瞬間。


 ひょい。


 メイアが片手で受け止めた。

 片手で。


「ありがとう!」


「気をつけて」


 周囲の生徒たちがざわつく。


「今の木材重くなかった?」


「片手だったよな?」


「さすが学園最強……」


 本人は気にせずプリンを食べていた。

 平常運転だった。

 一方。


 教室の隅。

 ルミナはスケッチブックを広げていた。


「何描いてるの?」

 僕が覗き込む。


「看板!」


 そこには。

 可愛らしい喫茶店の絵。

 笑顔のお客さん。

 美味しそうなケーキ。

 そして。

 中央には大きな文字。


【ようこそ!】


「上手い!」


「ほんと?」


「うん!」


 ルミナの顔がぱっと明るくなる。


「やったー!」


 嬉しそうだった。

 その様子を見ていたクラスメイトたちも集まってくる。


「可愛い!」


「これ使おう!」


「賛成!」


 満場一致だった。

 ルミナは照れながら笑った。


「えへへ」


 その頃。

 シオンは厨房担当になっていた。


「俺に任せろ!」


 なぜか自信満々。

 しかし。

 三十分後。


「なんでこうなった!?」


 厨房から悲鳴が聞こえた。

 僕たちが駆けつける。

 そこには。

 黒い何か。

 黒い煙。

 黒い物体。


「……何これ」


 リン。


「クッキー」


 シオン。


 沈黙。


「クッキー?」


「クッキーだ」


「炭じゃなくて?」


 シオンが傷ついた顔をした。


挿絵(By みてみん)


「炭ではない」


「食べてみる?」


 僕。


「遠慮する」


 リン


「遠慮する」


 メイア。


「遠慮する」


 ルミナ。


「全員!?」


 見事な即答だった。

 夕方。

 準備もひと段落。

 みんなで教室を見回す。

 テーブル。

 飾り付け。

 ルミナの看板。

 少しずつ形になってきている。


「なんか学園祭っぽい」


 僕が言う。


「学園祭だからな」


 シオンが笑う。


「楽しみだね」


 リンも微笑む。

 メイアは看板を見ていた。


「いい絵」


 ルミナが嬉しそうに笑う。


「ほんと?」


「うん」


 短い会話。

 でも

 どこか温かかった。

 その夜。

 女子寮。


 ルミナはベッドで眠っていた。

 すやすや。

 穏やかな寝顔。


 しかし。

 夢の中。

 またあの声が聞こえる。


『近い』


『もうすぐだ』


 そして。

 前よりもはっきりと見えた。


 白い神殿。

 金色の光。


 そして。

 一人の少女。


 銀色の髪。

 紫色の瞳。

 その姿は――


 ルミナ自身によく似ていた。


『迎えに行く』


 少女がそう告げた瞬間。

 ルミナの額の紋章が強く輝く。

 だが。

 本人はまだ知らない。

 自分の中に眠る本当の力を。

 そして。

 学園祭の日。

 大きな出来事が待っていることを――。

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