変な夢と変わらない日常
第七話 変な夢と変わらない日常
翌朝。
教室。
僕は眠そうなルミナを見ていた。
「眠そうだね」
「むぅ……」
机に突っ伏している。
完全に寝不足だった。
「昨日遅くまで起きてたの?」
「違うよ」
「じゃあ?」
ルミナは顔を上げた。
「変な夢見た」
僕は思わずベルの話を思い出した。
封印。
謎の声。
もしかして。
「どんな夢?」
「大きなお城があった」
「うん」
「知らない女の人がいた」
「うん」
「それでね」
「うん」
「巨大プリンが追いかけてきた」
沈黙。
「プリン?」
「プリン」
隣で聞いていたシオンが吹き出した。
「なんだその夢」
「怖かったんだよ!」
ルミナは真剣だった。
どうやら本当に怖かったらしい。
すると。
メイアが興味深そうに聞く。
「どれくらい大きい?」
「家くらい」
「強敵」
「強敵なの!?」
朝から何の話をしているんだろう。
昼休み。
中庭。
僕たちはいつものように集まっていた。
最近の日課だ。
シオンはパン。
リンは本。
メイアはプリン。
ルミナはスケッチブック。
僕はのんびり空を眺めていた。
「平和だなぁ」
「そうだね」
リンが微笑む。
そんな時だった。
「アキラー!」
遠くから誰かが走ってくる。
ベルだった。
「ベル?」
珍しく慌てている。
でも。
どこか嬉しそうでもあった。
「大変です!」
「敵!?」
「封印!?」
「遺跡!?」
みんなが身構える。
しかし。
ベルは首を振った。
「違います!」
「じゃあ何?」
ベルは一枚の紙を見せた。
【学園祭開催決定】
沈黙。
「……学園祭?」
「学園祭です!」
ベルだけテンションが高かった
リンが目を丸くする。
「そういえばそんな時期だったね」
シオンは立ち上がる。
「屋台だ!」
メイアも立ち上がる。
「食べ物」
ルミナも立ち上がる。
「お祭り!」
みんなの目が輝いた。
もちろん。
僕もだ。
「楽しそう!」
「ですよね!」
ベルが頷く。
その日の放課後。
学園祭の出し物を決めるホームルーム。
教室は大盛り上がりだった。
「喫茶店!」
「演劇!」
「お化け屋敷!」
色んな意見が飛び交う。
そんな中。
シオンが手を挙げた。
「巨大迷宮!」
「却下」
リン。
「早い!」
即死だった。
すると。
ルミナが小さく手を挙げる。
「お絵描き展示会!」
教室が静かになる。
「いいかも」
「可愛いな」
「見たい」
意外と好評だった。
ルミナは嬉しそうに笑う。
「えへへ♪」
その笑顔を見ていると。
なんだかこっちまで嬉しくなる。
その夜。
寮へ帰る途中。
夕焼けが綺麗だった。
僕たちは並んで歩く。
何気ない時間。
何気ない会話。
だけど。
それが心地いい
すると。
ルミナが僕の隣で呟いた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「うん?」
「みんなといると楽しいね」
その言葉に。
僕は少し笑った。
「そうだね」
「ずっと続くといいな」
ルミナは空を見上げる。
夕焼けに照らされた横顔は。
少しだけ大人びて見えた。
だけど次の瞬間。
「学園祭でプリン百個食べる!」
「無理だよ!?」
いつものルミナだった。
みんなが笑う。
平和な笑い声が響く。
けれど。
誰も気付いていなかった。
その夜。
ルミナの額に浮かぶ金色の紋章が。
昨日より少しだけ大きくなっていたことを――。




