あと1%
第十八話 あと1%
【同期率99%】
【統合システム待機中】
【あと1%】
「いやいやいや」
僕は表示を二度見した。
「なんでそんな気軽な感じなの!?」
クロも同意する。
「あと1%って宿題じゃないんだから」
「それ!」
久しぶりに完全一致だった。
シオンが腕を組む。
「つまりあと少し仲良くなれば完成か」
「完成って言うな!」
「俺は応援してるぞ」
「何を!?」
リンが呆れていた。
その時だった。
ゴォォォォォ……
空の巨大な門がさらに開く。
まずい。
誰が見てもまずい。
巨大な赤い目。
その周囲に無数の黒い雷が走る。
世界そのものが悲鳴を上げているようだった。
『時間切れだ』
低い声。
それだけで空気が重くなる。
黒い騎士たちが一斉に剣を掲げた。
「来る!」
ルナが叫ぶ。
次の瞬間。
千体以上の騎士が突撃を開始した。
「多い多い多い!!」
僕は叫んだ。
『迎撃開始』
アキラ三号が前へ出る。
光の剣が出現。
一振り。
ドォォォォン!!
騎士たちが吹き飛ぶ。
二振り。
さらに吹き飛ぶ。
三振り。
『肩慣らし終了』
「今まで肩慣らしだったの!?」
全員が驚いた。
だが。
それでも敵は止まらない。
むしろ増えている。
空が黒で埋まる。
ベルの顔色が悪くなる。
「まずいです」
「最近それしか聞いてない!」
でも本当にまずそうだった。
すると。
セレナが静かに言った。
「終わりです」
その背後に巨大な魔法陣が現れる。
今までで最大。
学園どころか空全体を覆うほどの大きさ。
「嘘でしょ」
リンが呟く。
メイアですら表情が硬い。
その時。
クロが前へ出た。
「アキラ」
「うん」
「僕たち」
「うん」
「多分同じこと考えてる」
僕は頷く。
実際そうだった。
説明できない。
でもわかる。
「右から行く?」
「そう思った」
「三秒後?」
「三秒後」
シオンが頭を抱えた。
「なんで会話が省略されてるんだ!」
僕も分からない。
クロも分からない。
でも通じる。
その瞬間。
【同期率100%】
表示が変わった。
「えっ」
「えっ」
僕とクロが同時に固まる。
嫌な予感。
ものすごく嫌な予感。
【統合開始】
「待て待て待て待て!」
【待てません】
「返事した!?」
システムが会話してきた。
怖い。
【緊急事態のため強制実行】
「強制なの!?」
ルナが青ざめる。
「止まりません!」
ベルも慌てる。
「止め方がありません!」
「設計した人誰!?」
『私です』
アキラ三号だった。
「お前かぁぁぁ!!」
全員のツッコミが重なった。
『当時は必要だと思いました』
「絶対思ってない!」
だが。
光が溢れる。
僕とクロの身体が浮かび上がる。
「うわっ!」
「うわっ!」
最後まで息ぴったりだった。
光が世界を包み込む。
その中で。
僕は見た。
遥か昔。
一人だった頃の自分。
世界喰らいと戦う少年。
そして。
その隣に立つ少女。
長い銀髪。
優しい笑顔。
「……誰?」
少女は微笑む。
そして。
僕に向かって言った。
『やっと思い出してくれた』
その瞬間。
光が弾けた。
ドォォォォォン!!
全員が目を閉じる。
そして。
静寂。
ゆっくりと光が消えていく。
「アキラ!?」
リンが叫ぶ。
「クロ!?」
ルナも叫ぶ。
そこに立っていたのは――
一人だった。
黒髪でも白髪でもない。
黒と白が混ざった不思議な髪。
左右で少し色の違う瞳。
そして。
「……あれ?」
少年は自分の手を見る。
「増えてない」
第一声がそれだった。
「そこ!?」
シオンが全力でツッコんだ。
だが。
次の瞬間。
門の向こうの存在が初めて動揺した。
『その姿は……』
赤い目が見開かれる。
『なぜ貴様がここにいる』
少年はゆっくり顔を上げる。
そして。
なぜか少し困ったように笑った。
「うーん」
「僕もよく分からない」
どこまでもアキラだった。
しかし。
その背後には。
世界そのものが共鳴するような力が渦巻いていた。
ついに。
長い物語の始まりとなった本来のアキラが目覚めたのだった。
第十九話へ続く




