始まりの記憶
第十七話 始まりの記憶
世界が揺れていた。
空ではアキラ三号が黒い騎士たちを吹き飛ばしている。
ドォォォン!
ドガァァン!
すごい。
ものすごく頼もしい。
でも。
『敵性存在、七十三体撃破』
『敵性存在、百二十一体撃破』
『敵性存在、二百三体撃破』
「数えなくていいから!」
『了解』
『数えるのをやめます』
一秒後。
『現在二百四体撃破』
「やめてない!」
アキラ三号は少し沈黙した。
『……失礼しました』
なんとなく反省しているように見えた。
機械なのに。
その時だった。
僕とクロの頭に流れ込んできた光景が鮮明になる。
真っ白な空間。
何もない世界。
そこに。
一人の少年が立っていた。
黒髪。
そして。
僕とクロを足して二で割ったような顔。
「これ........」
「僕たち?」
クロが呟く。
ベルが静かに頷いた。
「はい」
「本来のアキラ様です」
その言葉に全員が息を呑む。
「本来?」
リンが聞く。
「どういうこと?」
ベルは空中に光の画面を映した。
「今から数百年前」
「世界の外から来た存在がいました」
画面に巨大な影が映る。
あの門の向こうの存在によく似ていた。
「世界喰らい」
エルフィアが呟く。
「世界を滅ぼす災厄です」
空気が重くなる。
「それを止めるため」
ベルは続ける。
「ある少年が立ち向かいました」
画面の中。
少年が剣を握る。
「その少年こそ」
ベルが僕を見る。
次にクロを見る。
「アキラ様です」
僕もクロも固まった。
「え?」
「え?」
また同時だった。
シオンが吹き出す。
「もうそこは揃うんだな」
慣れてきたらしい。
「でも待って」
僕が言う。
「数百年前?」
「僕十五歳だけど?」
ベルが頷く。
「だから転生したのです」
衝撃だった。
僕の前世。
いや。
もっと前の話。
「その戦いで」
ベルの声が少し沈む。
「アキラ様は力を使い果たしました」
画面の中。
少年の身体が光る。
そして。
二つに分かれた。
「嘘だろ……」
クロが呟く。
「一つは未来へ転生」
「それが今のアキラ様」
僕だった。
「そしてもう一つは」
「別世界に残された」
クロだった。
つまり。
本当に
僕たちは元々一人だった。
「だからか」
クロが苦笑する。
「好きな食べ物も同じなわけだ」
「苦手物も」
「方向音痴なのも」
「それは治してほしかった」
リンが呆れていた。
その時。
メイアが静かに手を挙げる。
「質問」
「うん?」
「二人が一人だったなら」
「今合体したらどうなる?」
全員が固まった。
「確かに」
シオンが頷く。
「気になる」
「気になるじゃないよ!?」
なんでそんな発想になるの。
しかし。
ベルの表情は真剣だった。
「実は」
「え?」
「その可能性があります」
嫌な予感。
とても嫌な予感。
「現在の同期率は?」
エルフィアが聞く。
ベルが確認する。
「九十一%です」
「上がってる!?」
さっき八十二%だったよね?
速くない?
「アキラ様とクロ様が近くにいるためです」
「充電器じゃないんだから!」
思わずツッコんだ。
その時だった。
空が震える。
門の向こうの巨大な存在が動いた。
『見つけた』
赤い目が光る。
『ついに見つけた』
嫌な予感が加速する。
そして。
その視線は。
僕でも。
クロでもなく。
アキラ三号へ向いていた。
『管理者機構』
『まだ残っていたか』
アキラ三号が初めて反応する。
『対象確認』
『脅威度』
一瞬停止。
そして。
『計測不能』
ベルの顔色が変わる。
「まずいです」
「どうしたの?」
「アキラ三号が計測不能と言いました」
「それって?」
「勝率ゼロという意味です」
全員沈黙。
今まで最強だったアキラ三号。
そのアキラ三号が。
勝率ゼロ。
空気が重くなる。
だが。
次の瞬間。
アキラ三号が続けた。
『訂正』
「ん?」
『単体での勝率ゼロ』
ベルが目を見開く。
「まさか」
『管理者二名』
『確認』
僕とクロを見る。
『最終手段』
『解放可能』
その瞬間。
僕とクロの腕輪が同時に光った。
【同期率99%】
【統合システム待機中】
「待機しなくていい!」
僕とクロが同時に叫んだ。
そして。
システムは無情にも表示する。
【あと1%】
全員が固まった。
残り。
たった1%だった。
第十八話へ続く




