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世界の外側と席取り戦争

第十一話 世界の外側と席取り戦争


 翌朝。

 王立アルカディア学園。

 特別クラス。

 僕はいつものように教室へ入った。

 すると。


「おはようございます、ご主人様!」


「おはよう、ルナ」


「ここです!」


 ルナが僕の隣の席を指差した。

 満面の笑顔だ。

 だが。


「そこ私の席」


 すでにメイアが座っていた。

 無表情で。

 しかしなぜか圧がある。


「むむっ」


 ルナが眉をひそめる。


「そこはご主人様の隣です!」


「私の席」


「でも!」


「私の席」


「でも!」


「私の席」


 話が進まない。

◇◇◇

 数分後。

 なぜか勝負になった。


「なんで!?」


 僕はツッコんだ。

 しかし誰も聞いていない。


「勝った方が隣」


 メイアが言う。


「受けて立ちます!」


 ルナも燃えている。

◇◇◇

 勝負内容。

 腕相撲。

 結果。


「えい」


 ペシッ。

 メイア勝利。


「負けました!」


 早かった。

◇◇◇

 勝負その二。

 計算問題。


「七十八+二十五は?」


「百三!」


「正解」


「百三!」


「正解」


 引き分け。

◇◇◇

 勝負その三。

 方向感覚テスト。


「学園長室まで行ってください」


 先生が言った。

 メイアとルナが歩き出す。

 一時間後。

 メイアは図書館にいた。

 ルナは食堂にいた。


「なんで?」


「メロンパン見つけました」


 ルナだった。

 失格。

 メイアも失格。

 結果。

 両方方向音痴だった。

◇◇◇


「仲間」


 メイアが言う。


「仲間ですね」


 ルナが言う。

 なぜか友情が芽生えていた。

 さっきまで争っていたのに。

◇◇◇

 そこへ。

 学園長が入ってきた。

 珍しく真剣な顔だ。


「全員集まるのじゃ」


 空気が変わる。

 僕たちは席に着いた。

◇◇◇


「昨日の話の続きじゃ」


 学園長は僕を見る。


「アキラ」


「はい」


「お主の転生についてじゃ」


 教室が静かになる。

 シオンまで真面目な顔だった。

◇◇◇


「普通の転生者はのう」


 学園長が話し始める。


「世界の中で生まれ変わる」


「うん」


「しかしお主は違う」


 ルナも頷く。


「アキラさんは世界の外から来ています」


「外から?」


「はい」


 僕は首を傾げた。


「日本から来たけど」


「もっと外です」


「もっと?」


 意味が分からない。

◇◇◇

 ベルが説明を引き継ぐ。


「世界は一つではありません」


 空中に光の球が浮かぶ。


「たくさんあります」


 球が増える。

 何十個も。

 何百個も。


「私たちの世界もその一つです」


「へぇ」


「そして世界と世界の間には境界があります」


 ベルの表情が少し曇る。


「本来は誰も越えられません」


「でもルナは?」


「特別です」


 ルナが胸を張った。

 少し偉そうだった。

◇◇◇


「問題はアキラです」


 ベルが言う。


「僕?」


「はい」


「また?」


 最近こればかりだ。

 するとエルフィアが口を開く。


「アキラは世界の壁を越える力を持っています」


「へぇ」


「へぇじゃないです」


 ベルに怒られた。

◇◇◇

 その時。

 教室の窓が突然開いた。

 バンッ!


「うおっ!?」


 全員が驚く。

 すると。

 一羽の鳥が飛び込んできた。

 真っ直ぐ僕へ向かってくる。


「危ない!」


 シオンが立ち上がる。

 だが。

 鳥は僕の頭に着地した。


「……」


「……」


 鳥も固まる。

 僕も固まる。

◇◇◇

 次の瞬間。

 鳥が喋った。


『やっと見つけた』


「喋った!?」


 鳥だった。

 完全に鳥だった。

 なのに喋った。

◇◇◇


『アキラ』


「はい」


『緊急事態だ』


「最近それしか聞いてない気がする」


 本当にそうだった。


『境界が壊れ始めている』


 鳥は真剣だった。


『このままでは世界同士が衝突する』


 教室が静まり返る。

 今までとは違う。

 本当にまずい話だ。

◇◇◇


『既に最初の敵が動いている』


「敵?」


『境界を破壊する者たちだ』


 ルナの表情も険しくなる。


「そんな……」


 どうやら知っているらしい。

◇◇◇

『奴らの名は――』


 鳥が言いかけた。

 その瞬間。

 教室の天井が吹き飛んだ。

 ドォォォォォン!!


「うわあああ!?」


 生徒全員が叫ぶ。

 先生も叫んだ。

 僕も叫んだ。

◇◇◇

 空から何かが落ちてくる。

 黒いローブ。

 銀色の仮面。

 人影だった。

 ゆっくり着地する。

 そして。

 僕を見た。


「見つけた」


 低い声。

 不気味だった。

◇◇◇


「誰?」


 僕が聞く。

 すると仮面の人物は答える。


「世界の鍵」


「え?」


「アキラ」


 その名前を呼ぶ。


「お前を連れて行く」


 明らかに敵だった。

◇◇◇

 しかし。

 その直後。

 シオンが立ち上がった。


「なるほど!」


 全員が見る。

 なぜか納得した顔をしている。


「つまり勧誘だな!」


「違うと思う」


「就職活動か!」


「絶対違う」


 リンが頭を抱えた。

 メイアは小さく呟く。


「シオンは今日も平常運転」


 その通りだった。

◇◇◇

 仮面の人物ですら少し困っていた。

 たぶん想定していなかったのだろう。

 その隙に。

 メイアが立ち上がる。

 剣を抜く。

 ルナも前へ出る。

 ベルとエルフィアが魔力を展開する。

 そして。

 僕も立ち上がった。

 どうやら。

 平和な学園生活はもう少し先になりそうだった。


第十二話へ続く

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