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魔王はこの中にいる  作者: 南蛇井


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⑥ 神谷の違和感

詰所を出ると、神谷は足を止めた。


振り返らない。

だが、意識は背後――あの扉に向いている。


 


(密室は成立している)


 


証言は揃っている。

結界にも異常はない。


侵入も、脱出も、不可能。


 


(なら――どうやって殺した)


 


思考は、同じ場所を回り続ける。


犯人は中にいた。

それは血痕が示している。


だが今はいない。


 


(消えた?)


 


その結論を、神谷はすぐに捨てた。


 


(ありえない)


 


超常を前提にすれば、何でも説明できる。

それは推理ではない。


 


では、何が間違っているのか。


 


神谷はゆっくりと歩き出した。


石の床に、規則的な足音が響く。


 


(侵入できない)


(脱出できない)


 


この二つは、動かない前提だ。


崩す必要はない。


 


ならば――


 


(どこで、間違えた)


 


 


脳裏に、あの光景が浮かぶ。


遺体。

短剣。

血の位置。


 


すべては、あの“部屋の中”で完結している。


 


(……部屋の中)


 


そこで、思考がわずかに止まった。


 


違和感。


 


ほんの小さな、引っかかり。


 


神谷は足を止める。


 


(“中”とは、どこだ?)


 


 


封印室。


そう呼ばれている空間。


 


だが――


 


(本当に、あの位置なのか?)


 


 


神谷の目が、わずかに細くなる。


 


今までの思考は、すべて同じ前提に立っていた。


 


人が“移動する”こと。


 


入る。

出る。


 


その線でしか、考えていない。


 


だが――


 


(違う)


 


神谷の思考が、ゆっくりと組み替わる。


 


(問題は“移動”じゃない)


 


視線が、再び封印室の方向へ向く。


 


重い扉。

閉じた空間。


 


だが、その“場所”そのものは――


 


(固定されていると、誰が決めた)


 


 


神谷の中で、何かが繋がる。


 


侵入はない。


脱出もない。


 


それでも殺せる方法。


 


 


「……そうか」


 


小さく、呟く。


 


(“移動”ではなく、“位置”)


 


 


人が動く必要はない。


 


なら――


 


“物”はどうだ。


 


あるいは――


 


“場所”そのものは。


 


 


神谷は、ゆっくりと目を閉じた。


 


(密室は壊れていない)


 


(壊れているのは――)


 


一拍。


 


(“前提の方”だ)

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