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魔王はこの中にいる  作者: 南蛇井


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27/69

② 記録①:正常な勇者

神谷は、最初のページをめくった。


紙は古いが、文字ははっきりしている。


筆跡は整っていた。


乱れはない。


焦りも、迷いも感じられない。


――理性的な人間の書いた文章だ。


神谷は無言で読み進める。


『本日、王より正式に魔王討伐の任を受けた』


『この身に余る大任だが、全力を尽くす』


簡潔で、無駄がない。


感情に流されず、事実を中心に書かれている。


『城内の状況は安定している』


『騎士団は統率が取れており、士気も高い』


『宰相は合理的で、判断も早い』


観察も的確だ。


対象を冷静に分析している。


『聖女の力は特筆すべきものがある』


『戦闘能力はないが、支援としては極めて有効』


『今後の作戦において重要な存在になるだろう』


神谷の視線が、わずかに止まる。


(聖女……)


すでに、あの事件へと繋がる名前が出ている。


だが、文章自体には何の違和感もない。


あくまで“過去の記録”として、自然だ。


神谷はページをめくる。


『仲間との連携も順調』


『騎士団長は信頼できる人物だ』


『多少強引な面はあるが、戦場では必要な資質だろう』


淡々とした評価。


個人的な感情は抑えられている。


だが、関係性は良好だと分かる。


『現時点で、魔王に関する情報は極めて少ない』


『被害報告はあるが、具体的な目撃例はない』


『存在の実在性すら、確証が持てない状況だ』


神谷の目が、わずかに細くなる。


(ここは同じか)


第1話と、全く同じ構図。


だが、それも不自然ではない。


むしろ当然だ。


問題は――その先だ。


神谷はさらに読み進める。


『現状の情報から判断するに、魔王は直接的な行動を取らない可能性がある』


『あるいは、観測されない形で活動している』


そこで、わずかに言葉が止まる。


だが、まだ違和感と呼ぶほどではない。


推測の範囲だ。


神谷はページを閉じ、少し考えた。


(まともだ)


結論は、それだった。


論理的で、冷静で、偏りがない。


感情に飲まれていない。


状況を客観的に把握しようとしている。


(優秀だ)


少なくとも、無能ではない。


むしろ――


神谷は再び記録を見た。


(似ている)


思考の運び方。


観察の仕方。


結論の出し方。


無駄を削ぎ落とし、本質だけを拾う癖。


それは、神谷自身のやり方に近い。


(同じタイプか)


だからこそ、分かる。


この段階では、何も壊れていない。


正常だ。


完全に。


神谷は静かに次のページをめくった。


(……だからこそ)


この先にある“変化”が、


どれほど異常なものか。


想像できてしまう。


それが、わずかに気持ちの悪さを残した。

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