2話
――と、息巻いてはみたものの。 実際のところ、私はかなりの小心者である。
「公爵家を乗っ取って、国に復讐してやる!」なんて大それた気力はない。
それに、私は結構な現実主義者で努力家気質だ。
物語のように「白馬の王子様が助けてくれて、そこにおんぶに抱っこ」なんて都合のいい展開、恥ずかしくて想像すらできない。……まあ、だから前世でもモテなかったんだけど。
というわけで、復讐には手っ取り早く『スキル』を使うことにする。
前世の記憶が戻ったあとに判明した、教会でも鑑定不能だった私のスキル。
その名前は、日本語で【呪い】というものだった。 さすがになんちゃって中世ヨーロッパ風の世界で「呪い」のスキル持ちだとバレたら、即座に「急病でお亡くなり(処分)コース」である。そのため、今日までずっと「判別不能の無能スキル」として隠し通してきた。
だが、日本語のシステムメッセージを読み解いたことで、スキルの詳細な使い方はすでに把握している。
この【呪い】は、『自身が獲得したものを対価としてポイント化し、そのポイントに見合う呪いを発動する』という一風変わった能力だった。
実は一度だけ、実験がてら試したことがある。
嫌味ったらしく、少しでもミスをすると鞭で手を叩いてくる家庭教師がいた。彼女に「言葉の『ア』を発音できなくなる呪い」をかけたのだ。
対価にしたのは、もう着なくなったドレスすべてと、いくつかの宝石。
結果、家庭教師はまともに授業ができなくなって体調不良を理由に辞職した。もっとも、半年ほどで呪いは解除されたらしく、今は別の貴族家で働いていると風の噂で聞いたが。
つまり、王家を子々孫々まで滅ぼすような大呪詛をかけるとなると、想像を絶する対価が必要になる。それこそ「領民すべての命」とか、そういうレベルだ。
私は公爵家の当主でもないし、そこまでの外道にもなりきれない。そんな巨大な対価は用意できないのだ。
だから、今回私が差し出す対価は、『もういらなくなったもの』。
公爵令嬢としての地位、財産、そして、これまでの人との縁。 私がこれまでの人生で獲得し、そしてもはや不要となった「未来」のすべて。
これらをスキルに捧げ、ポイントへと換算した。
ピコン、と頭の中に機械音が響く。
――『10,280ポイントを獲得しました』
あの家庭教師に嫌がらせした時のドレスと宝石が「514ポイント」だったから、単純計算で約20倍の価値か。 これから捨てるはずだった「公爵令嬢の未来」の査定額として、これが高いのか安いのかはわからない。
もし婚約破棄騒動の前だったら、王太子妃としての未来分でもっと跳ね上がっていたのだろうか?
とはいえ、どのみちドブに捨てる予定だったものだ。
中古品の買取価格としては上々だ、と結論づけておこう。
では、今の私は完全な無一文(一文無し)なのかというと、実はそうでもない。
『アイリス・バレンタイン(公爵令嬢)』としての対価は払ったが、『アイリス(個人)』としての財産はちゃんと手元に残してある。
亡くなった実母の個人資産や、祖父母から個人的に贈られたプレゼントだ。これらの所有権は「公爵家」にないため、ポイント化の対象から外してある。
我ながらちゃっかりしている。
さて、行動だ。とりあえず着替えをしよう。
ポイント換算を実行した瞬間に、私が獲得していた「財産」はスキルに没収されたのだ。
当然、私が今「身につけていたもの」も対象に含まれるわけで。
私は、今素っ裸なのだ。
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作者が基本的な文章や設定を執筆し、GemminiAIにて、校正・編集をしてもらい、作者が再読し修正をおこなったものを投稿しています。




