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76. トール戦

 2回戦、トールとの戦いが始まった。


 試合開始からずっと、俺はトールとの距離を取りながら戦っている。


 戦闘において間合いを取ることが重要になる。


 トールに接近された瞬間、俺の負けが確定すると思っている。


 3年前はいざしらず、今のトールに対し、接近戦で勝負を挑むこと自体が自殺行為だ。


 常にトールとの距離を取りながら、試合が始まってから20分が経つ。


「大火球……!」


「うるああああああ」


 トールのひと殴りで魔法が粉砕された。


 お互い決め手にかける。


 魔力は無限ではない。


 無制限に魔法を放てるわけじゃない。


 だけど、それはトールも一緒だ。


 どちらかが先に倒れるかという勝負になっている。


「火球!」


 トールが地面から飛んで、火球を避ける。


「火球連打!」


 空中に浮いているトール目掛けて、小さな火球が飛んでいく。


 だが、トールは空中にいながら器用に避ける。


 着地すると、地面を蹴り、俺の方に向かってきた。


「土よ、隆起せよ!」


―――ドドドドドドドッ


 俺の足元からトールに向かって土が盛り上がっていく。


―――ドン!


 トールが地面を殴り、魔法を止めてきた。


 俺は体勢を低くするトール目掛けて魔法を放つ。


「大火球……!」


「波動拳!」


 トールは体を上げて、手のひらを突き出した。


 火球はトールの拳によってかき消えた。


 だが、トールの一撃はそれだけにとどまらなかった。


「うわっ……!」


 俺は咄嗟に危険を感じ、


「土壁!」


―――ドドンッ!


 すると、壁に衝撃が走った。


 まじか……。


 トールって遠距離の技が使えるのか。


 ていうか波動拳とか、超かっこいいんだけど!


 とか、思っちゃったじゃね―か。


 感心ばかりはしていられないな。


「岩弾連打……!」


 土の壁を弾に変えて放つ。


「あああああああああああ!」


―――ドンッ! ババン! バンッ! ドドドンッ!


 岩を全て砕き切ったトール。


「イフリイイィィィィィィト!」


 魔力を一気に込めて発射。


「波動拳……!」


 お互いの魔法がぶつかり合い、会場全体に爆音が鳴り響く。


「うっ……」


 目に砂が入り、一瞬をまぶたを閉じる。


 そして、目を開けた瞬間だ。


 砂埃が舞う中から、


「らああああああああああ!」


「な……!?」


 トールが距離を詰めてきていた。


 この一瞬で、トールが目の前まで迫ってきた。


 まずい……!


 接近戦では勝ち目がない。


 だが、トールはすぐそこにいる。


「―――引力解放!」


「な、な……!」


 重力魔法を使った。


 だが、それは俺が飛んで逃げるためじゃない。


 重力魔法は飛行魔法(・・・)じゃない。


 自分が空に飛ぶだけの魔法じゃない。


 目の前に迫ったトールを空に浮かした。


「波動拳……!」


 トールは一瞬焦りを見せた。


 だが、瞬時に切り替え、不安定な状態で波動拳を使ってきた。


「大火球!」


 二重魔法だ!


 重力魔法を行使すると同時に、右手で魔力制御をしていた。


 波動拳と大火球がぶつかり合う。


―――が、はっ


 魔法の衝突によって後ろに吹き飛ばされた。


 そして、だだだっと地面を転がる。


 なんとか、受け身を取りながら立ち上がると、


「終わりだあああああああ!」


 トールが目前で殴りかかろうとしていた。


―――身体強化!


 接近戦は明らかに不利だ。


 でも、近づかれたなら仕方ない。


 やるしかない。


 ふらっ。


 トールが一瞬、ゆらつくのが見えた。


 そのスキを逃したりはしない。


「鉄拳っ!」


「ごはっ……」


 俺の一撃が、トールの一撃よりも先に届く。


 トールの鳩尾に入り、


―――ドンッ


 トールは吹き飛んだ先で壁にぶち当たる。


「俺は……負けな……い。負け……ないんだ」


 トールは立ち上がろうとする。


 油断はしない。


 だからこそ、トドメをさす。


「イフリートよ、灼熱をもって、敵を滅せよ!」


 トールが灼熱に包まれた。


 しばらく、ぼおぼおと燃え盛る炎。


 そして、焼け焦げた会場の一部で、倒れたまま立ち上がらない一つの影。


「俺の―――勝ちだあああああああ!!!」


 俺は右の拳を上に突き出した。


「勝者あああ! オーウェン・ペッパアァァァァァ!」

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