75. 2回戦にむけて
俺は1回戦を勝ち、2回戦に駒を進めることができた。
試合後、会場を出るとレン先生に会った。
「オーウェン君。お久しぶりです」
「あ、レン先生。お久しぶりです!」
闘技場を出ると、声をかけられた。
その後ろにはトールもいる。
「オーウェン君、こんにちは」
トールはペコりと挨拶する。
俺も挨拶を返したあと、
「1回戦はどうだった?」
「うん、勝てたよ!」
トールは元気よく答えた。
「オーウェン君は?」
「俺も勝った」
そういってトールに向かってVサインを作る。
「そうなんだ。次の試合、お互い全力を尽くそうね」
「そ、そうだな……」
試合中でないのにトールがオドオドしていない!
むしろ俺の方がオドオドしちゃうじゃないか。
「トール君はここ最近、見違えるほど成長しました」
トールは「れ、レン先生。そんな……」と照れたように頭をかく。
え、今までも十分強かったじゃん。
去年の交流戦でも、ベルク相手にいい勝負をしていた。
それ以上強くなったってことか?
「それは厄介ですけど。でも、僕だって成長していますよ」
昨日ベルクと約束したし、2回戦で負けてはいられない。
「その通りです。明日の試合、楽しみですね」
レン先生がそういったタイミングで、
「オーウェンさん、こんなところでどうしたんですか……?」
ファーレンが現れた。
「あれ、どうした。ファーレン?」
「いえ、特に用はないですけど、たまたま通りかかったので」
ファーレンはレン先生とトールの方を向いて。
「はじめまして。ファーレン・アントネリです」
しっかりと頭を下げた。
「は、はじめまして。と、トールです」
トールはおどおどし始めた。
このオドオドしている感がトールらしい。
やっぱり、これがトールだ。
ファーレンは綺麗だし、緊張するよな。
と、思ってにやにやとトールを見ていると、レン先生が視界に入った。
「ど、どうしたんですか?」
俺は恐る恐るレン先生に尋ねる。
「なんでもありませんよ。では、私はこれで」
レン先生はそういって去っていった。
今のは気のせいだろうか?
レン先生が一瞬、ものすごい形相でファーレンを睨んでいるようにみえた。
トールはおろおろとしたが、この場に残った。
「何かしましたか……?」
ファーレンは俺の方を向いて、不思議そうな顔をした。
「いや……そんなことはないと思うけど」
あの反応はなんだったんだろうか。
「すみません。邪魔をしてしまって。私も行きますね」
そう言ってファーレンも去っていった。
取り残された俺とトールは顔を見合わせた。
「とりあえず、飯買いに行くけど、トールはどうする?」
「うん! 僕も行く!」
俺たちは適当に屋台で買ってきて、近くのベンチに腰を下ろす。
「モネさん、四大祭に出れないってな」
俺がモネの話題を出すと、トールの眉がピクッと動いた。
「うん、そうだね。でも、気付けたこともあるよ」
「どういうこと?」
「今までずっとお姉ちゃんに守られてきたけど、そろそろ自分の力で立ち上がらなくちゃいけないんだって」
「トールってシスコンだもんな」
「シスコン?」
「お姉ちゃん大好きっ子ってこと」
「そ、そうかな……」
てへへへと、頬を掻くトール。
いや、褒めてないけど。
戦闘中だと「この雑魚がああああああ!」とか言って人をぶん殴っているのにな。
これがギャップってやつか?
ギャップってモテるらしいな。
俺もなにかしらのギャップ作ろうかな。
「今まではお姉ちゃんがいたから、怖くなかった。でも、これ以上お姉ちゃんに心配をかけたくない。この大会で、お姉ちゃんを倒した人に勝って、もう大丈夫だよってお姉ちゃんに伝えたい」
トールは拳を握りしめる。
その瞳から伝わってくる熱量に、弱々しいトールの影はなかった。
「オーウェン君が強いのもわかっている。だから、僕はオーウェン君に勝つ」
トールが成長したってのは本当のようだ。
精神面で強くなっている。
それがひしひしと伝わってきた。
どの試合も勝者は一人。
決勝戦まで勝ち進むとベルクに宣言したが、そんな簡単なことではない。
まあ、だからこそ楽しいんだ。
だからこそ勝ちたいんだ。
「俺だって負けないからな」




