74. トーナメント表
開会式は終了し、四大祭がスタートした。
大会は10日間で初戦から決勝戦まで行われる。
決勝までいくことになれば5回も戦うことになるため、結構ハードな日程だ。
選手は次の試合も考慮して、戦いに挑まなければならない。
初等部の生徒から試合が始まり、1日目は開会式以外で特にすることはなかった。
一人でぶらーん、ぶらーんと歩いている。
初戦の対戦相手はハランマッタ学園の人らしい。
手強い相手ではないとのことだが、四大祭に出るくらいなのだ。
これからの戦いは全て油断できないな。
と、思っているときだ。
ちょうど目の前を通った水色の髪の少女。
「モネさん!」
「あれ? オーウェン君じゃない。久しぶり!」
いつもの陽気な笑顔のモネ。
「あの……」
「ん、どうしたの?」
「モネさんの名前がありませんでした」
四大祭のトーナメント表にモネの名前がなかったことを話す。
セントラル学園の生徒でモネを上回る生徒がいるとは思えない。
「ああー。あれね。予選会で負けちゃったのよ」
「負けたって誰にですか?」
「ユリアンよ」
意外な人物の名前、俺は目を見開いた。
「ユリアンって……あのユリアンさんですか!? でもワルツ学園の生徒だって聞きましたよ」
「そのユリアンよ。今年からセントラル学園に転入してきてね。予選会で運悪くユリアンにあったったのよ。それで負けて予選落ち」
モネはなんでもないように言うが、俺だったらかなりショックだ。
今年がモネの最後の四大祭になるからだ。
「それは……」
ショックだろう。
こんなときには魔法の言葉がある。
「モネさん、ドンマイです」
「どんまい?」
「気にするなってことです」
「えー、なにそれ」
モネはくすくすと笑う。
「ぜーんぜん、気にしてないわよ。それに、これで弟を気兼ねなく応援できる。それだけで十分よ!」
モネは心からそう思っているようだった。
◼️ ◼️ ◼️
モネと別れて、再び歩き始めると女子の集団を発見した。
ん?
よく見てみると、その中にベルクがいる。
女子に囲まれて大変そうだなー。
今日はいつにも増して、ベルク親衛隊の人が多い。
四大祭のため、中には他の学園の生徒もいるのかもしれん。
ベルクは人気があるからなー。
全然羨ましいなんて思ってないぞ。
いや、本当に思ってないからな。
ちらちら。
ベルクを横目に見ながら通り過ぎようとしていたら、ベルクと目があった。
「オーウェン! ちょっと待って」
「ん? どうした?」
ベルクに声をかけられた。
「ああ、すまない。今からオーウェンと用事があるんだ。僕はここで失礼するよ」
ベルクは後ろにいた女子生徒たちに笑って言う。
彼女らが俺を睨んでくる。
ちょっと、怖いんだけど……。
「……いや、俺は特に用事なんか……」
「さあ、行こうか。オーウェン」
ベルクは俺の肩の腕を掴みながら、その場を離れた。
「おい、ベルク。どういうことだよ」
「あはは。すまないね」
全然申し訳なくなさそうな表情のベルク。
「もしかして、女子から逃げてきたのか?」
おい、お前。
そんな羨ましい理由で逃げてきたなら許さんぞ。
「あ、うん、そうだよ。さすがにあの人数に囲まれたら大変でね」
こいつ、一発殴らせて欲しい。
俺は無言でベルクを睨む。
べ、べつに羨ましいなんて思ってないからな!
この差はなんだ……?
顔か?
身分か?
性格か?
もしかして、全部か?
くそー!
王族で顔も性格もイケメンに生まれたい人生だった。
「オーウェンと当たるのは決勝戦になりそうだね」
「え、ああ、そうだな」
俺はトーナメント表を思い返す。
ベルクとは反対のブロックだった。
お互い勝ち進めば決勝で戦うことになる。
「決勝戦まで行けるかはわからんけどね」
なんたって、準決勝でユリアンとあたるからだ。
最近、よく名前を聞くあのユリアンだ。
「僕は君と戦いたい。3年生のときにチームを離れた理由、言ってなかったね」
「あれは方向性の違いによる解散じゃなかったの?」
よくバンドとかにある音楽性の違いによる解散かと思っていた。
「うん? どういうこと?」
「いや、なんでもない。続きをどうぞ」
「あのとき、僕はオーウェンと戦いたかったんだ」
2連続で優勝した俺とナタリー、ベルクは初等部最強チームだった。
3年生のときも同じチームで武闘会に挑むと思っていたが、突然ベルクが抜けたいと言ったのだ。
「そんな理由だったのか……」
ベルクとは模擬戦で戦ったことはあっても、本気で戦ったことが一度もない。
「俺もベルクと戦いたい。お前、決勝戦まで負けんなよ」
「もちろんさ」




