73. 魔法の披露
空に飛び上がった瞬間、歓声が沸き起こる。
―――おおおおお!
―――飛行魔法だ! 初めてみた!
徐々に高度を上げていき、地上から20メートル付近で止まる。
ここからは、会場全体が見渡せる。
「いくか……!」
会場をぐるっと回りながら、途中で一回転したり、観客の目の前で急に止まったりして場を盛り上げる。
そして、しばらく会場を回っている途中、突如前方に氷の輪っかができた。
クリス先生に頼んだ演出だ。
氷の輪は直径2メートル程度であり、人が一人入れるほどの穴が空いている。
それが、自由落下で地面に落下していく。
俺がその中を潜った途端、氷の輪は粉々に砕けて、きらきらした粒子になる。
すると、また前方に氷の輪が出てきた。
サーカスでライオンが火輪を潜るように、俺はクリス先生が作り出してきた氷の輪を一つずつ潜っていく。
最後の輪を潜った後、俺は再び中央に戻ってきていた。
「……ふうぅぅぅぅぅ」
俺は肺にあった息を全て吐き出し、そして、もう一度大きく息を吸う。
そして、空に向かって手を突き出した。
「花火……!」
右手から魔法を打ち上げる。
―――どんっ
空で弾けた魔法は、ぱっと光って満開の花が咲かせた。
オレンジ色の花火。
やはり、こういった場では花火がよく似合う。
俺は、何度も何度も花火を打ち上げた。
そのたびに歓声が上がる。
わっはっは。
どうだ、凄いだろ!
大きな花火だ!
そして、最後に俺は両手から空に向かって魔法を放った。
「満開の桜!」
打ち上がった魔法が弾け、満開の桜が空に舞った。
そうして、地上に降りてきたら、大きな歓声が耳に入った。
「よし!」
俺はガッツポーズをした。
ふー、練習した甲斐があった。
まるでスターになったかのような気分で、大きな喝采のもと、俺は舞台を降りた。
■ ■ ■
その後、クリス先生の魔法披露で会場が盛り上がっている間、俺は四大祭出場選手として準備を始める。
そして、選手の入場が始まった。
最初に行進するのは、サンザール学園だ。
竜を描いた旗をもった旗手を先頭に、サンザール学園の生徒24人が舞台の中央へと歩いていく。
それに続いて、セントラル学園、ワルツ学園、ハランマッタ学園の生徒たちが入場した。
舞台中央で各学園の生徒がそれぞれ2列に並んで、立ち止まる。
そして、会場に用意された壇上に学園長が立ち、学園長による開会の挨拶が始まった。
学園長のスキンヘッドの頭が晴天に照らされ、ぴっかぴかに光り輝く。
ちょうど、その光が俺の目にあたって、学園長の話がほとんど頭に入ってこない。
と、そんなとき、
「これが、トーナメント表です!」
そう言って、学園長は後ろに手を向けた。
その瞬間、会場の後ろにある幕が一気に降りる。
しかし、幕だと思われていたそれは、よく見るとスクリーンだった。
そのスクリーンには、トーナメント表が映し出されていた。
―――おおおお!
どよめきが起こる。
「この仕掛は我が校の卒業生が作り出したものです」
学園長は得意げにいった。
馬車の揺れを軽減する魔道具―――ひそかにサスペンションと呼んでいるが、サスペンションを作った人と同じ人がこのスクリーンを制作したらしい。
俺は、その卒業生は前世の記憶持ちなんじゃないかと思っている。
なぜなら、その人の作品はほぼ全て、前世で日常的に使われていたものだからだ。
一度会ってみたいと思ったんだが、残念ながら消息不明だった。
そんなことを思いながら、トーナメント表を見る。
俺は自分の名前を確認し、対戦相手を見ていく。
「順当に行けば2回戦でトールとあたるのか」
ちらっと、セントラル学園の選手たちを見て、その中にいたトールがいることを確認する。
「あれ?」
セントラル学園の選手団を見ていると、違和感を覚えた。
そして、トーナメント表の方に目を向ける。
「やっぱりだ。……モネがいない」




