72. 開会式
「やあ、カザリーナ。久しぶりだな」
「ええ、クリス。久しぶりね」
会場に戻ると、すぐにクリス先生を見つけられた。
カザリーナ先生はクリス先生との再会に笑みを深めた。
「半年ぶりか?」
「そうね。先生はしっかりやれている? あなたのことだから、生徒を雑用として扱ってそうで怖いわ」
カザリーナ先生の言ったことは図星だった。
その通りです、と言おうとした、そのときだ。
「そんなことないよな。なあ、オーウェン」
ギロリと俺を睨み、脅迫してくるクリス先生。
三ツ星の睨みって凄みがあって、怖いです。
いや、まじで。
「え、あ……はい。クリス先生は素晴らしい先生です」
俺は棒読みで、目を泳がせながら答えた。
「素晴らしく無茶苦茶な先生です」
「おい、オーウェン。お前、どっかいってろ」
「横暴ですよ!」
「そうよ。クリス。オーウェン様が困っているじゃない」
「こいつはこういう扱いがちょうどいいんだよ」
もう嫌だ、この先生。
俺を何だと思っているんだ!
「そう言えば、オーウェンは開会式で飛行魔法を披露するんだな」
クリス先生は、わざとらしく言った。
それに反応するカザリーナ先生。
「え、そうなのですか! オーウェン様さすがですね」
「いやー、それほどでも……」
頭をかきながら、そっぽを向く。
「オーウェン様、頑張って下さい。あなたならきっとできます」
うおおおおお。
カザリーナ先生に応援されたから元気でたぞ!
頑張れそうだ!
「はい! がんばります!」
俺は手を固く握りしめて言った。
「そう言えば、カザリーナ。この前の話はどうなってる。考えてくれたか?」
「もう少しだけ、考えさせてもらってもいい?」
「何の話ですか……?」
俺はクリス先生とカザリーナ先生を交互に見ながら聞いた。
「お前には関係ない話だ」
えー、気になるなー。
■ ■ ■
開会式が始まった。
4万人を収容できる闘技場は、人で溢れかえっていた。
どこを見渡しても人、人、人だ。
聞いた話だと、満員らしい。
コロッセオのような会場は天井部分が開放されており、そこから晴天の空が見える。
そして、闘技場にでかでかと掲げられた旗。
そこには四大祭のシンボルマークが描かれていた。
旗の中央には花が一つあり、4枚の花びらがついている。
そして、それぞれの花びらには異なる色が塗られている。
燃えるような赤色。
澄んだ海の青色。
鮮やかな黄色。
初夏の若葉のみずみずしい緑色。
これらの色は各学園の特色を表している。
そして、花びらの外側には、それぞれの学園を象徴する動物が描かれている。
サンザール学園は、情熱的で生命力あふれる赤竜。
セントラル学園は、冷静で落ち着きある青鯱。
ワルツ学園は明るく華やかな黄虎。
ハランマッタ学園は、おだやかで安心感のある緑鷲。
まるで優勝を争うかのように、それぞれの動物が四大祭のシンボルマークの方を向いている。
そして、開会式は魔法の打ち上げによって始まった。
まずは、サンザール学園の生徒や先生による魔法が披露される。
ちなみにクリス先生が大トリだ。
三ツ星教師の魔法使いの魔法を見に来るためだけに、この会場に訪れている人もいるくらいだ。
そして、式の中盤あたりで俺の出番があった。
俺はドクドクと心臓が脈打つのを手で抑えながら、舞台の中央に立った。
皆が俺に注目をしていることが、会場の雰囲気から伝わってくる。
音が止まっているかのような静寂。
前世でもこんなに多くの人の前で何かを披露することがなかったから、緊張で吐きそうだ。
でも、やるしかない。
俺は、重力魔法を使って空に浮かんだ。




