71. 開会式の朝
四大祭当日の朝、学園はいつになく騒がしかった。
武闘会でもここまで騒がしくなることはない。
なんせ、4年に一回の大行事なのだ。
前世と比べると、娯楽がほとんどないこの世界では、四大祭は大きな熱狂をみせる。
学園街はどこもかしこも人で溢れかえっている。
こんな日は警備員さんも大変だ。
まあ、通常よりも多く雇っているだろうけど。
俺は開会式で魔法を披露するため。一足先に会場についた。
学園最大の闘技場。
収容人数は3万人を超え、一つの学園が保有するものとしては過剰な設備とも思える。
会場に入ると、スタッフが忙しそうにしていた。
その中にクリス先生を見つけると、話しかけにいった。
「おはようございます」
「オーウェンか。早いな」
「何か手伝えることはありますか?」
「大丈夫だ。それより準備は大丈夫か?」
準備とは、開会式で披露する魔法についてだ。
「もうばっちりです!」
この日のために1ヶ月間練習した。
「私はお前に言われた通りにやれば良いんだよな?」
「はい! お願いします!」
俺は頭を下げて感謝を示した。
「あ、そうだ。朝食買ってきてくれないか? 朝早くから来させられたから腹が減ってな」
「いいですよ。何か欲しいものはありますか?」
「食えればなんでも構わん」
俺は「はーい」と返事をして、会場を立ち去った。
そして、会場を出ると屋台がたくさん並んでいた。
だが、まだ早い時間のため、ほとんどの店が準備中となっていた。
「よし、商業エリアにでも行こう」
商業エリアはここから歩いて15分程度の位置にある。
朝早くから始めているパン屋を知っているため、そこに向かった。
パン屋の店の前に着くと、焼きたてのパンの香ばしい香りがしてきた。
朝から行列ができており、最後尾に並ぶ。
すると、
「オーウェン様?」
この声は! と思い、ぱっと振り返ると、春の日差しのようなぽかぽかした笑みを浮かべた女性がいた。
「カザリーナ先生!」
俺はぎゅっと抱きつくのを我慢し、カザリーナ先生を見つめる。
カザリーナ先生に以前会ったのは、2年も前のことだ。
それ以降は一度も会ってなかったから感激だ。
感謝カンゲキ雨嵐!
「元気そうでなによりです。オーウェン様が四大祭に出場すると聞いて、来ちゃいました」
てへっと効果音が聞こえきそうな表情をするカザリーナ先生。
「どんどん、来てください! というより毎日来てください!」
「ふふふ、そんなには無理ですよ。あ、でもクリスの家に泊めてもらうから、今日と明日はオーウェン様の活躍を見に行きますね」
「とても嬉しいです! 絶対、勝ちますね」
「はい、頑張って下さい。それはそうと、オーウェン様もここのパン買いにきたんですね」
「ってことはカザリーナ先生も……?」
「はい、ここのパン屋の大ファンです。安くて美味しい! まだ、やっていて良かった」
「そ、そうですね……」
拳を握りしめ、力説するカザリーナ先生にちょっぴりびっくりした。
「あ、すみません。久しぶりだったので、興奮してしまいました」
「全然大丈夫です! むしろもっと興奮してください!」
「それは……ちょっと……」
つい言ってしまったけど、この言い方って変態っぽくね?
「じょ、冗談です!」
と、そのタイミングでちょうどパン屋のスタッフが「次の方、注文どうぞ」と言ってきた。
俺はカザリーナ先生の分まで注文した。
スタッフからパンを受け取ると、カザリーナ先生に渡す。
「今からどこ向かうんですか……?」
「開会式まで時間がありますし、学園の中を見学しようかと考えています。久しぶりに来ましたので」
「そうですか。ちなみに僕はクリス先生にパンを渡しにいきますけど、一緒には来ないですよね?」
一緒に来てほしいなーという思いを込めてちらちらみた。
すると、それが伝わったのか、
「クリスのところに行くのですか。それなら私もついて行って良いですか?」
「はい、もちろん!」
俺の作戦が功を奏し、会場まで一緒に向かうことになった。




