68. 開会式準備
予選会が終了し、四大祭への参加者が決まった。
中等部からは俺、ナタリー、ベルク、カイザフ、その他先輩たち4人で8人。
四大祭は、サンザール学園とセントラル学園の他にも2校ある。
ハランマッタ学園とワルツ学園だ。
学園ごとに初等部、中等部、高等部からそれぞれ8人が選出され、総勢32人で優勝を争う。
優勝者には莫大な報奨金が得られる。
それよりも、ほとんどの生徒は栄誉を求めて戦い合う。
それは武闘会で優勝するよりも遥かに価値があることだ。
中等部の優勝者は、一ツ星の魔法使い、高等部の優勝者は二ツ星の魔法使いに認定される。
ちなみにクリス先生は高等部の頃に優勝して二ツ星になった。
彼女は卒業後の活躍もあり、10代で三ツ星になった天才だ。
「クリス先生は凄いよな」
クリス先生を含め、サンザール学園が最も多く優勝者を出してきた。
だが、最近はセントラル学園に優秀な生徒が増えたため、実力が拮抗してきている。
さらに、他の学園も着実に力をつけており、サンザール学園の一強ではなくなりつつある。
ちょうど一ヶ月後に四大祭があり、今年の試合会場はサンザール学園だ。
主催校のため、サンザール学園は今年、特に気合を入れている。
そして、俺は開会式でショーの一部を任されることになった。
飛行魔法を披露して欲しいとのことだ。
今、それに向けて練習をしている。
場所はいつも使わせてもらっている訓練所だ。
夕方のこの時間は、俺以外誰もいない。
魔力循環を終えて、一汗掻いた後に俺は立ち上がった。
息を吸い込んで、一気に吐く。
「よしゃ、やるか!」
学園からの要求は、とりあえず観客を楽しませてくれ、というものだ。
え、雑すぎない?
自主性を重んじるのは良いけど、具体的にやること教えてほしい。
と、悩んだ結果、重力魔法を行使したまま他の魔法を使おうと考えた。
難易度は高く、複雑な魔法制御を必要とする。
同時に異なる2つの魔法制御を行う二重魔法。
リフティングしながら縄跳びする動画を見たことがあるが、あんな感じで2つのことを同時に行うようなものだ。
さらに重力魔法で制御を間違えば、地面に落下してしまう。
俺は重力魔法を発動し、空に浮かんだ。
重力魔法の原理は、体全体から魔力を放出させ、引力に逆らうというものだ。
この状態で他の魔法を使えるようになれなければならない。
体全体で魔力制御を行いながら、手や足などの一部の部位で魔力制御を行う。
俺は右手に魔力を込めた。
そして、
「火球……!」
右手から火球を放った。
よし、できた! と安堵した瞬間だ。
「う、うわああああ」
すぐに落下し始め、慌てて重力魔法の制御に専念する。
地面から近い位置で、なんとか魔力制御に成功した。
そのまま地面に着陸する。
「ふー、危なかった……」
いやー、怖かったー。
観客を楽しませる動きを入れるのに、わざわざ二重魔法を使わなくても良い。
でも、空飛ぶだけってつまらないよな?
実際、戦闘では相手の虚を突くぐらいしかできないし。
空に浮かびながら、バンバン魔法を撃つってやってみたいよな。
そういうわけで、今のうちから練習しておこう。
と、もう一度重力魔法を使おうとしたところ、後ろから突然声をかけられた。
「こんな時間まで偉いね」
振り向くと、そこにはカイザフがいた。




