65. 予選会②
1回戦ほど簡単には勝てなかったが、2回戦の相手を実力で上回ることができた。
そして、2回戦も勝利。
魔法の扱いが向上しただけでなく、戦うことにも慣れてきた。
そうして迎えた予選会の最終日。
ここまで勝ち上がっきた16人で、四大祭の参加権をかけた最終戦を行う。
俺の相手は、予想通りエミリアだった。
今日は緊張して、早く起きすぎて、一足先に会場についてしまった。
やっぱり、こういう舞台は未だに緊張する。
慣れはするものの、本番になるとやはり緊張するんだ。
初等部の頃、武闘会で3連続優勝がかかった一戦の前には何度もトイレに行ったしな。
ナタリーがベルクに負けるのを見て、「ああ、これは負けられんな」ってようやく覚悟が決まった。
俺って弱いよな。
そこで、気晴らしするために、会場の周りをランニングしていたら、ばったりとエミリアに出くわした。
「あれ? エミリア、朝早いな」
「そういうオーウェンもね。何してるの?」
試合は10時から始まる。
それに対し、今は8時。
待機時間を考えても1時間以上も余裕がある。
「ちょっと、気晴らしで走ってた」
「オーウェンって意外に肝小さいもんね」
「うっせ。今日は手加減無しでいくからな」
「手加減してくれもいいよ。というより、手加減して。ね?」
エミリアは小首を傾げる。
「そんな顔してもダメだ」
ちょっと、可愛いと思ったけど、手加減はしない。
「えー。だってまともに戦ったらオーウェンに敵わないし」
言葉ではそういうものの、エミリアの目は、決して諦めているようには見えない。
「俺は油断してないからな」
「油断して、負けてくれてもいいのに」
「そんなことはしない」
そんなことしたら、本当に負けるかもしれない。
自慢ではないが、エミリアよりも俺のほうが強い。
でも、勝負に絶対がないことはわかっている。
「全力で戦うよ」
「……だから、オーウェンとは戦いたくないの。じゃあ、またね」
「あ、うん。じゃあ」
エミリアと別れた後、ランニングを再開する。
緊張はだいぶ和らいだ。
エミリアありがとう、と独りごちる。
開始時間の30分前になり、受付を済ませ控室に行く。
俺の試合は2試合目。
控室でしばらく待機していると、大きな歓声が聞こえてきた。
おそらく、1試合目が始まったのだろう。
係員に案内され、試合直前の待機場所に向かった。
前の試合が終了して、舞台の上に立つ。
入場ゲートを潜ると、大きな歓声に包まれた。
初めて、こういう舞台に立ったときとは比べ物にならないほど大きな声援。
それらが自分に向けられている。
初めて武闘会でカイザフと戦ったときは酷い言われようだったな。
そのときと比べると、だいぶ周りに認められてきた。
もう、俺を傲慢で無能な少年だと言う人はいない。
「エミリア。勝たせてもらうよ」
俺が入場後に、舞台に上がったエミリアと向かい合う。
ちょっと調子に乗りすぎたかな?
まあ、いいや。
勝ちたいという気持ちは本当なんだ。
「せいぜい、あがいてみせるわ」
エミリアが決意のこもった瞳で言ってきた。
これは、簡単に勝たせてくれないよな。
予選会最終日。
俺とエミリアの戦いが始まった。




