64. 予選会①
予選会が始まった。
3回勝てば、四大祭の参加権を得られる。
初等部、中等部、高等部で別々の会場が用意され、3日間で選手決めが行われる。
本来武闘会が行われるはずだった日程を、そのまま予選会に充てたらしい。
武闘会でないため、例年とは違って、学園は一般向けに開放されていない。
その代わり、出場選手以外の生徒は全員休みとなるため、観客として応援にきている。
そんな中で、試合が始まる。
俺の最初の相手は2年生の先輩だ。
だが、俺の敵ではない!
初等部の頃、すべての試合で優勝した実力は伊達じゃない。
ふははははは。
これぞ、チート無双で最強!
俺TUEEEEE最高だぜ!
……ごめんなさい、調子に乗りました。
そこまで最強ではありません。
学園生活4年目ともなれば、自分がどの立ち位置にいるかはわかる。
同じ年代ならベルクやナタリーと良い勝負だ。
そして、中等部全体で見ても、彼ら2人とカイザフ以外には負けない自信がある。
だから、先輩相手には悪いが、勝たせてもらう。
審判の開始の掛け声とともに、
「火球……!」
魔法を放った。
先輩はそれを避けようとするが―――
「なんだと!?」
火球は、急に方向を変え、先輩へと向かっていった。
ただの火球だと思うなよ。
これは以前、クリス先生が見せてくれた魔力制御だ。
毎日の特訓のおかげでようやく実戦で使えるレベルになった。
先輩は、火球が突然方向を変えたこと対応しきれず、防御を怠り、
「ごばっ……」
腹にあたって、膝をついた。
はっはっは。
勝負はこれからだ!
「イフリートよ! 顕現―――」
「参った!」
先輩はそういって両腕を上げた。
え?
まだ、これからだと思ってたんだけど。
途中で魔法止めると、反動くるんですけど!?
俺は詠唱を止め、反動を抑えるように魔力制御を行った。
暴れる馬を力で無理やり抑えつけるように、魔力を体内に収めた。
「勝者! オーウェン・ペッパー!」
こうして、1試合目はあっけなく終了した。
今日の俺の試合はここまでで、観客席で他の試合をみることにした。
ナタリーは既に勝利を収めていたため、隣で一緒に観戦する。
そして、しばらくするとベルクが出てきた。
相変わらず、黄色い声援が凄まじい。
中等部の試合は中等部のほとんどが見に来ている。
この世界は、前世ほどの娯楽がないため、生徒たちは興奮した表情で観戦している。
ベルクの試合は一瞬で終わった。
多分、ベルクの姿をはっきりと目で追えた者の方が少ないだろう。
俺も目に魔力を込め動体視力を上げたことで、見ることができた。
「やっぱり、強いよなー」
「ええ……。実際に戦えばわかると思うけれど、厄介極まりないわ。雷魔法が直撃しても、平気で動くのよ。嫌な相手だったわ」
ベルクとの戦い。
しっかり対策考えとかないとな。
ベルクの次の試合はファーレンだった。
だが、彼女は運が悪いことに、一回戦でカイザフに当たっていた。
カイザフは、以前よりも磨きのかかった風魔法で、ファーレンを圧倒した。
ファーレンは、戦闘能力がずば抜けて高いわけではない。
それでも1年生の中ではそれなりの成績を残している。
だが、カイザフとの実力差は明白で、彼女はじりじりと追い詰められた。
結果、そのままカイザフ優勢で試合が進み、ファーレンは奮闘したものの負けてしまった。
「あちゃー、やっぱりファーレンじゃ勝てなかったか」
カイザフって、めっちゃ強い。
なんで、あの頃の俺が勝てたの? って疑問に思うぐらいだ。
「さすがに相手がカイザフなら仕方ないわ」
ファーレンもこの結果は当然とばかりに頷いた。
そして、1日目の最後の試合でエミリアが出てきた。
俺が3回戦で戦う相手。
エミリアは、1年生の中では俺、ベルク、ナタリーに続く実力者だ。
幅広い魔法を扱うことができる。
本人は器用貧乏だと言っているが、侮れない相手だ。
エミリアは四大特性である火、水、土、風を全てを扱える。
ベルクのように、一つのことを極められるのは天才だ。
それと比べると、エミリアは凡才になる。
だが、自分の手札を最大限使い、知恵を振り絞るエミリアを侮ることなどできない。
俺は器用貧乏というよりも、万能型だと思っている。
そうして、始まった試合もエミリアは無事勝利を収めた。
「……やっぱり油断できないな」
カイザフのような派手さはないものの、堅実な戦いをする。
最終戦は、厳しい戦いになるかもしれない。




