63. 対戦相手
入学式から数週間後。
学園に行くと、校舎の前で人だかりができていた。
「何があったんだ?」
近くにいたエミリアに声をかける。
「予選会の対戦相手が貼られているらしいよ」
そういってエミリアは、人が群がっている先にある掲示板を指差す。
ちなみに、俺とエミリアは予選会の参加権を得ている。
「もう予選会なんだよな。もう対戦相手は見たのか……?」
「まだ、見てない。人が多いから全然見れないの。もう、どいてくれないかな」
エミリアは鬱陶しそうに言った。
俺よりも背が高い人が多いから、背伸びしても見えない。
「ここは大人しく人が少なくなるまで待つか」
そして、しばらくすると、ようやく掲示板が見えるところまできた。
掲示板には、トーナメント表が貼り付けられており、その中から自分の名前を探した。
「あった」
「あたしも見つけた。どこのブロックだった?」
トーナメント表はAからHブロックまで分けられている。
「Cブロックだ。エミリアは?」
「同じく……Cブロックよ」
ってことは、俺たちは予選で当たることになるってわけか。
各ブロックでの勝者、つまり、1番になった者のみが四大祭に参加できる。
「はあぁ……。あんたと戦うなんて、最悪。これで四大祭参加の可能性がぐんと下がった」
「お手柔らかに頼むよ」
「せいぜい、足掻いてみせるから」
エミリアはそういって教室に向かっていった。
あれ?
これの流れって一緒に教室に行く流れじゃないの?
置いていかないでくれよ。
■ ■ ■
授業後、俺はクリス先生のところに向かった。
訓練場を使わせてもらう代わりに、クリス先生にはちょくちょく頼み事をされる。
今回は、商業エリアにある有名店の焼き菓子を買ってきて欲しいと頼まれた。
俺はお菓子が入った袋をクリス先生に渡す。
「クッキー買ってきましたよ。これ買うのに結構並んだんですからね」
最近流行りの店らしく、買うのに1時間も待たされた。
その店に訪れる人は女性が多いため、ナタリーについてきてもらったのだが、
「誰に買っていくの?」
と聞かれて、
「クリス先生」
と応えたら、
「先生のことが好きなの?」
と、疑われてしまった。
そんなわけないだろ。
生徒と先生で恋愛に発展することがないとは言えないが、クリス先生をそういう対象として見ることはない。
「あの店に行列ができるのは知ってるぞ。以前行ったときに買えなかったからな。だから、お前に行かせたんだ」
クリス先生は俺が渡したクッキーの入った袋を開けた。
そして、中からクッキーを一つ摘んで口に入れた。
「美味いな……! お前もどうだ?」
「大丈夫です。自分の分を別で買ってありますので。それより、公私混同してません……?」
「はっはっは。まあ、小さいことは気にするな。お前は訓練場を使えて、私は美味しいクッキーを食べられる。お互い好都合じゃないか」
「それは、そうですけど」
実際、訓練場を使わせてもらえるのは、だいぶありがたい。
重力魔法や強力な魔法の練習をするときは、訓練場のような広いスペースが必要になる。
「それで、夜の特訓とやらは順調か?」
彼女はポリポリとクッキーを食べながら聞いてきた。
「少しずつですけど、魔法が上手く使えるようになってます」
同じ魔法を使うにしても、威力や精度は確実に上がっている。
「そうか。魔法使いとしてお前は誰よりも成長しているからな、これからも頑張れよ」
クリス先生は俺の左肩をバシバシ叩いた。
「あ、それとまたクッキー頼むな」
「え、またですか!?」
「このクッキーが美味しいのが悪い」
袋に入っているクッキーを指差して、先生は言った。
「はあ……。わかりました」
毎度、クリス先生のお使いとして、クッキーを買わされるのは面倒だ。
次は箱買いして、少しずつ先生に渡そうと決めた。




