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60. ダンスパーティー

 ダンスパーティーは、学園にあるパーティー会場で行われる。


 俺たちの学年で呼ばれているのは8人。


 その中にはナタリーやベルク、ファーレン、エミリアがいる。


 毎年あるパーティーだけど、俺は苦手だ。


 理由は一つ。


 ダンスが苦手だからだ。


 そしてナタリーは、ダンスがめちゃくちゃ上手い。


 ダンスのレベルが全然違う。


 簡単なステップならできるが、完全に足を引っ張ることになっている。


「いたっ……」


「ごめん、ごめん」


 ナタリーの足を踏んでしまった。


「あなた、家でちゃんと練習してきた?」


「も、もちろん」


 踊れなくて恥を掻くのが嫌だから、しっかり練習してきたのに。


 なんなら、短期間で教師も雇って練習したくらいだ。


 俺の評判はだいぶ良くなったため、今では教師を呼んで断られることはほとんどない。


 俺だって多少はうまくなっているんだ。


 でもな、年々、周りのレベルが上っているんだよ。


 ベルクは運動神経良いし、ファーレンは毎年着実に上手くなっていった。


 エミリアは器用で、カイザフは当然という顔で踊っている。


 そして、ナタリーが桁違いに上手い。


 何度か、ナタリーとベルクがペアで踊っているのを見たが、すごかった。


 何が凄いって?


 動きのキレ、体の可動域、止めの動作、大胆な動き、呼吸のタイミング、腰の使い方。


 二人共体幹がしっかりしており、ブレが全く無い。


 どうやったら美しく魅せられるか、一つ一つの動きに細心の注意を払っていることがわかる。


 少しダンスをかじった程度だが、二人が凄いことだけは感じ取れた。


「俺よりもベルクの方が良かった?」


「そんなことないわ。私はオーウェンと踊りたかったもの」


 彼女は俺の動きに合わせて、器用に踊ってくれた。


 そして、1曲終わると俺達は休憩することにする。


 体力よりも精神面で疲れた。


「オーウェンにも苦手なことがあるのね」


「苦手なことばっかだぞ」


 初対面の人と仲良くするのも苦手だし、大勢の前で話すのは苦手だ。


 水魔法とか回復魔法とか全くできないし、未だ魔石に魔力を込めることもできない。


 できないことばかりだ。


「ふふふ、そうね。もう長い近い付き合いになるし、オーウェンのダメなところをたくさん知っているわ」


 苦手とは言ったけど、ダメとは言ってないぞ。


 ダメな面もいっぱいあるけどさ。


「初めて夜会で会ってから、もう4年か」


 ナタリーは予想以上に美人になっている。


 天使が女神になろうとしているようだ。


 ちょっと、盛ったかな。


 まあ、そのぐらい可愛いってことだ。


 今だって上級生の男の人が、ナタリーにちらちらと視線を向けている。


 一緒に踊っているときは殺気すら感じたからな。


 怖い、怖い。


「そうね。オーウェン、今までありがとう」


「え、あ、うん。急にどうした?」


「なんでもないわ。それより、この花綺麗ね」


「ああ、白透花のことか。気に入ってくれたか?」


「ええ、とっても」


 照明のためか、透明の白透花が白く見える。


 ナタリーは白透花を愛しそうにみつめた。


 その表情につい見入ってしまった俺は話題を変えるように言った。


「そう言えば、長期休暇何してた?」


「勉強にレッスン、魔法の極めに座学。さらには出たくないパーティーに出ていたわ」


「それは、大変そうだ」


「ほんとよ。むしろ、休暇よりも学園生活の方が心が休まるわ。オーウェンは?」


「俺はナタリーほど厳しくはないから、ほどほどに休暇を楽しんでいたよ」


 セバスと遊んだり、使用人と仲良くなったり、たまに遠出したりと充実した毎日を送った。


 もちろん、領主になるために必要な知識をたくさん学んでいる。


「いいわね。私もオーウェンの家に生まれればよかったわ」


「いや、うちは使用人は優しいが、親がな……」


 両親とはほとんど顔を会わせないがな。


 以前と違って一緒にご飯を食べることがなくなった。


 最近は、避けられている気がする。


「確かに、あなたの親はひどいわね」


 俺の評判は改善されてきたが、両親の評判は相変わらず悪い。


「最近は放置されているから、だいぶ気楽だけどな」


 むしろ、公爵家に生まれなくて良かったと思っている。


 ナタリーの話を聞いていると、大変そうだもんな。


「休憩は済んだ? そろそろ、もう1曲どうかしら?」


「うん、そうだな。踊ろっか」


 俺たちは、楽しそうに踊っているカップルたちに混ざって踊り始めた。

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