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59. 白透花

 俺は鬱蒼とした森の中を歩く。


 今いる場所はヨクゾラの大森林だ。


 魔物が頻繁に出てくる場所であり、一般人は立ち入りが禁止されている。


 クリス先生に許可をもらって入らせてもらっている。


 訪れる者といえばハンターがほとんどだが、そもそもハンターの数自体が少ない。


 なので、この森で人と遭遇することはめったにない。


 草木をかき分けながら進む。


 季節は春で寒い季節ではないが、森の中は日が当たらず、肌寒さを感じる。


 しばらく歩くと、


「うがあああああ」


 一体のオークに遭遇した。


 複数相手だったら、多少手間取るが、一体だけならすぐに倒せる。


「大火球……!」


「ぎゃあああああああ」


 あまりの熱さに叫び声を上げるオーク。


 オークはその場で倒れ、灰となって消えていく。


 オークが魔障石になったのを確認すると、俺は再び歩き始めた。


 俺は今年から中等部1年生になる。


 と言っても、初等部からエスカレーター式で中等部に上がるため、環境はそんなに変わらない。


 ちなみに、俺は次席で初等部を卒業した。


 主席はナタリー。


 前世の知識があるのに、なんで負けたかって?


 前世で習った内容がほとんど役に立たなかったんだ。


「私の勝ちね」


 そう言ってドヤ顔するナタリーは、正直めっちゃ可愛かった。


 悔しくはない。


 別に1番でも2番でも、そこまで拘ることじゃないしな。


 学園入学時と比べて、魔法全般の威力がだいぶ向上した。


 さっきも大火球で、オークなら一撃で倒せたしな。


 何度か魔物と遭遇しながら、目的のところまでたどり着く。


 そこには一際、大きな木があった。


 精霊樹と呼ばれる大木だ。


 魔物は精霊樹を嫌うフシがある。


 そのため、ここはハンターの休憩所にもなっているのだ。


 もちろん、全ての魔物が近づかないわけではないが、他の場所と比べると安全だ。


「ふー、ちょっと休憩」


 ここまで来たら引き返すのが、通例になっている。


 俺は「よいこらしょ」と、おっさんくさいセリフとともに腰を下ろす。


 ヨクゾラの大森林には、魔石があるが、もっと奥までいかないと手に入らない。


 今回の目的は魔石じゃないから、危険を犯してまで奥に行く気はない。


 俺がわざわざ、ここに来ている理由は他にある。


「おっ。あった、あった」


 精霊樹の近くにある花。


 座っていたところから、透明の花びらに雄しべが黄色い花がある。


 これを取りに来たのだ。


 白透花付近の土を堀り起こし、花を根っこから取る。


 そして、持ってきた収納袋に花を入れる。


「よし、これで大丈夫だ。……あって良かった」


 俺はほっと胸をなでおろす。


 明日は、成績上位者だけが参加できるダンスパーティーがある。


 毎年、入学式の前日に行われ、俺は今年で3回目の出席になる。


 ダンスパーティーだが、パートナーに花を送るという慣習があるとのことで、それを用意しなくちゃいけなかった。


 学園内の花屋で買えばいいのだが、


「白透花が欲しいわ」


 と、パートナーであるナタリーに言われたのだ。


 白透花は魔力があるところでないと2日で枯れてしまう。


 そのため、わざわざこうして取ってくるしかない。


 クリス先生から許可を貰うの大変だったんだぞ。


 正直に、ナタリーに白透花をあげたいって言ったら、ようやく許可をもらえた。


 そう言えば、あのときクリス先生はニヤニヤしていたな。


 なんだったんだろう?


 まあ、いいや。


「よし、帰るか」


 俺はケースの袋をポケットの中に入れて、立ち上がった。

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