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54. クリスの到着

 クリスは学園長がいる執務室に足を運んだ。


 コンコンと扉を叩くと、中から返事が帰ってきた。


「入っていいぞ」


 クリスは、「失礼いたします」と言って扉を開けた。


 壁には歴代の学園長の肖像画が飾られている。


 窓の近くに置かれた机で黙々と作業をしている男―――フレデリック・バージに、クリスはオーウェンたちから聞いた話を伝えた。


 太い眉にスキンヘッド。


 鋭い眼光は裏社会のボスと言われた方が納得できる。


 フレデリックは眉間に皺を寄せ、クリスに尋ねた。


「その話は本当かね?」


 その話、というのは瘴気の話だ。


 ドミニクの魔力から瘴気を感じる。


 それが本当であれば、大問題だ。


 クリスが知っている中で、瘴気が使われた大事件は一つだけあった。


「はい。聖女がそう言っておりました」


 聖女の能力の一つに、瘴気の感知能力がある。


「先日の不審死と言い、これは……これは、厄介だな」


「もしや、【狂人】の仕業では―――」


「やつは既に死んでいる。それは、わしがこの目で見た」


「……はい」


「早急に職員会議を開くべき案件だが……。その前にクリス。商業エリアに向かえ。すぐにドミニクを連れてこい」


「承知いたしました」


 クリスは頷くと執務室を後にした。


 そして、全速力で商業エリアに向かう。


―――身体強化


 クリスの身体強化は接近戦をメインに行う騎士を相手にも引けを取らない。


 すぐに商業エリアの近くまで来れた。


 嫌な予感がする。


 人間から瘴気を感じる。


 クリスが過去に知っている事件では、瘴気をまとった【狂人】によって大勢の人がなくなった。


 瘴気をまとった人間。


 そんなのが存在してはならない。


 もはや人間ではないのだから。


 これが、ドミニクだけの問題だとすれば、彼を処分するだけで良い。


 だが、もし誰かが意図的に人間に瘴気を植え付けたとしたら……。


 そんな技術がある事自体が問題だ。


「ギィヤアアァァァァァ」


 研ぎ澄まされた聴覚により、遠くからの雄叫びが聞こえた。


 クリスは両足に魔力を集中させ、走る速度を上げた。


―――う、うわああああ!


―――こんなところに魔物が!?


 商業エリアは、喧騒に包まれていた。


 そして、騒ぎの中心にたどり着く。


 そこには、嘔吐するオーウェンに項垂れるファーレンがいた。


「何が起こった……?」


 クリスはそういうと同時に、ドミニクの頭を見つけた。


 首から下が綺麗になくなっている。


 さらに、ドミニクの首からは血が全く出ていなかった。


「クリス……先生」


 オーウェンがうつろな目でクリスを見てきた。


 本当に何が起こったんだ?


 クリスは眉をひそめる。


 そこらに戦闘の跡が見える。


 まるで、魔物と戦ったような跡だ。


「オーウェン。ここで何があった?」

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