48. 話し合い
次の日、昼の時間を狙ってファーレンがドミニクを呼び出した。
人気のない校舎裏。俺がいると話がややこしくなると考え、ひっそりと木の陰に隠れている。
ドミニクは俺のことを心底嫌っているらしいからな。
「なんだ? 俺はお前と違って暇じゃないんだ」
「単刀直入に聞きます―――最近、危ないことに手を出していませんか?」
「何のことだ……?」
ドミニクはピクッと眉を動かした。
「あなたの魔力から、本来人間が持っているべきではない力を感じます」
「何を適当なことを……。確証はあるのか……?」
「そんなものありません。でも―――」
「確証がないのに、ふざけたことを抜かすな!」
ドミニク右腕でファーレンの胸ぐらを掴む。
だが、ドミニクの目を真っ直ぐにみたファーレンは、
「ドミニクさん! あなたの魔力から瘴気を感じます!」
「はっ、瘴気? 馬鹿馬鹿しい!」
「ドミニクさん。そのままでは……死んでしまいますよ……その力は人が扱えるものではありません!」
「黙れ! お前まで俺を愚弄するか……!」
ドミニクはファーレンを殴りかかろうとした。
「やめろ―――ドミニク!」
俺はスッと木陰から飛び出した。
「なんでお前がいるんだよ。オーウェン」
ドミニクはファーレンを離す代わりに俺を睨みつけてきた。
「お前を止めるためだ」
「はんっ……俺を止める? お前は何様のつもりだ?」
「俺様だ」
おっと、いかん……昔の横暴な俺が出てきた。
「てめぇ、なめてんのか?」
「ドミニク。最近のお前の行動は目に余る。昨日だって―――」
「惨めだったな! あの程度の魔法も防げないなんて!」
「調子に乗るなよ。不意打ち放って俺に勝ったつもりか? おめでたい頭だな」
「不意打ち? なんなら、今から黒焦げにしてやろうか!?」
「やめてください!」
ファーレンは俺とドミニクの間に入った。
「ふんっ、てめぇなんかに関わっている暇はねぇーんだよ」
ドミニクははっと鼻を鳴らして、この場を後にした。
それを睨みつけながら、俺はファーレンに尋ねる。
「なあ、ファーレン……さっきの瘴気の話って……あの魔物のか?」
「それは―――」
ファーレンはあたりを見渡して誰もいないことを確認すると、俺に耳打ちをしてきた。
「はい……。以前よりも濃く、はっきりと瘴気が感じられました」
「瘴気って……大丈夫なのか?」
俺は小さい声で聞き返す。
「大丈夫なわけがありません! あれのせいで、あの人は……。瘴気は必ず人に悪影響をもたらします。あんなもの……扱ってはなりません。絶対に……」
「ファーレン……何があった?」
彼女は瘴気に対して並々ならぬ感情を抱いているようだった。
「いえ……なんでもありません。それにしても……ここ数日でまさかここまで瘴気が濃くなるとは……」
それは……やばくないことだよな?
「なあ……。このことはクリス先生に?」
「さすがに言わなければなりませんね」
俺たちは急いで教室に戻る。すると、クリス先生がいつもに増して真剣な表情で教壇に立っていた。
なんだろう?
……嫌な感じがする。
俺とファーレンが戻ってきたことを確認したクリス先生は、
「あとはドミニクだな……。どこにいるか知っているか?」
と俺たちに聞いてきた。
「わかりません」
俺が答えると、クリス先生は「そうか」と呟く。
「中等部の生徒の死体が発見された。原因は不明。事件の可能性があるため、私はこれから調査をしにいく。それもあって午後の授業はなしだ。寄り道せずに帰宅するように」
俺はファーレンと顔を見合わせる。
……これはドミニクと何か関係があるのかもしれない。




