44. 魔石の使用方法
交流会が終わってから、しばらく経った。
季節は冬に差し掛かり、厚手の服を着ている生徒が増えてきた。
ちなみに、学園には制服があるが、夏用と冬用それぞれある。
この時期は冬用の制服を着る人が大半だ。
教室の中は、それほど寒くなく、外套を脱いで授業を受けている。
「みなさん、おはよう御座います」
教壇に立っているのはモーリス先生だ。
魔物退治やクリス先生がいないときなどでAクラスの面倒を見ている副担任の先生だ。
メガネをかけたインテリ系の人で、真面目そうな印象を受ける。
「今日は魔石の使用方法についてですね。魔石は普段、エネルギー源として使われます」
モーリス先生はポケットから一つの魔石を取り出した。
「これが何も加工されていない魔石になります。魔道具の開発には魔石は欠かせないものですね。魔道具に使用する魔石は、この状態では使えません。溶かして液状にしたり、粉々に砕いたりして使います。今日のメインテーマは魔道具についてではないので、このことは省略しますね。もし、聞きたい人がいれば授業後に聞きに来て下さいね」
魔道具についての授業は中等部になってから、選択式で授業を受けることができる。
「魔石からどうやって魔力を取り出すか、について説明しますね。魔石は、いざというときのための予備魔力として役立ちます。魔石からエネルギーを取り出すには、魔石に自分の魔力を込めておく必要があります」
魔力がなくなったときのために、魔石を持っておくのは非常に大切なことだ。
魔法使いは魔力が全てだ。
実際、窮地で魔力がなくなったらやばいよな。
何もできなくなる。
名のある魔法使いは、自分の魔力が込められた魔石をいくつか持っている。
「魔石って最初から魔力があるもののことじゃないですか? そんなところに魔力を込められるんですか?」
生徒の1人が質問する。
「その通りです。魔石には最初から魔力が内包されていますね。ここに自分の魔力を注ぐことは、水が満タンに入った容器に、むりやり液体を注ぎ込むようなものです。加えて、魔石に魔力を込めるときは、一度にやらないといけません。ちなみに、魔石に内包されている魔力と人の魔力の割合は8対2がベストです。これを上回ったり、下回ったりしますと、取り出すときのエネルギー効率が下がります」
モーリス先生は、続ける。
「魔石はもともと純度が高く、魔力を込められる余裕がほとんどないです。そこに、むりやり自分の魔力を入れるわけですから、技術がある者でも、自身の魔力保有量の10分の1程度しか、込められません」
「うへー。案外、魔石って使い勝手悪いんだな」
その少年はがっくりと肩を落とした。
「しっかりと使い方を覚えれば、便利です。魔力を込めたら、ようやく自分専用の魔石ができます。例えば、これです」
モーリス先生はポケットから緑色の魔石を取り出す。
「人の魔力を込められた魔石は、色が変わります。魔石の色はその人の魔力特性によって異なりますので、世界で唯一つの魔石ができます。今日は、小さな魔石を用意しました。これを使ってみなさんも自分の魔石を作ってみましょう」
俺は渡された魔石を見る。
サイズはかなり小さく、直径1センチにも満たない。
「魔力を込めるときのコツは、ぎゅうぎゅうに押し込むことです。では、始めて下さい」
もらった魔石に魔力を込めるが、中々魔力が行き届かない。
油が水を弾くように、魔石が魔力を受け入れてくれない感じがする。
モーリス先生の言っていたように、魔力を強め、むりやりに魔力を込めようとした。
そして、しばらく魔力を込めていたが、手応えを掴めずに終わった。
色はほとんど変化せず、透明だったのが少し濁った程度だ。
難しいな。
その後、他の魔石を使って何度か試したが、結果は大して変わらなかった。
「今やってもらったと思いますが、魔石に魔力を込めるのは難しいですね。これには経験が必要なので、今後も頑張って下さい。今日の授業はここまでにしますね。ちなみに、来週から期末テストですが、今日やった範囲は出ません」
モーリス先生がいうように、この時期に期末テストがある。
テスト自体は一年に2回あり、1回目のテストは、ハイオーク戦と交流会の間にあった。
筆記は前世の知識を生かして、好成績であり、実技は、ほとんど満点の成績だった。
期末テストも高得点を取れるだろうな。
これが転生チートだ!
わははは。
まあ、そんな余裕ぶっこいていると、足をすくわれるんだけどな。




