43. 別れ
俺とトールの試合は20分経過しても、勝負は付かなかった。
基本的に、俺が距離を取りながら、魔法を放ち、それをトールが止めるといった感じだ。
何度か、接近されたものの、そのときは重力魔法を使って空に逃げた。
お互い決め手にかけ、引き分けとなる。
「オーウェン! また、やろーぜ」
戦闘モードのトールは最後にそう言った。
そして、全試合が終了した。
ちなみに戦績は3勝1敗1分だ。
ベルク、ナタリー、カイザフが勝利を収めた。
最近の交流戦の中ではだいぶ良い結果らしい。
セントラル学園の生徒たちは、悔しそうにしていた。
特に今年もカイザフに負けたモネは、
「次こそは、あんたに勝ってやるんだから!」
と涙目になっていた。
こうして、交流戦を終えた俺達は早めの昼食を終える。
そして、セントラル学園の門の前で、交流を持った生徒同士、別れの言葉を交わしていた。
ナタリーやベルクは俺の知らないところで、セントラル学園の生徒と仲良くなっている。
すごいな。
どこで仲良くしてたんだよ。
最初のパーティのときかな?
「やあ、オーウェン君。交流会はどうだった?」
モネが挨拶にきた。
「楽しかったですよ」
「君はずっと特訓しかしてなかったね」
「そうですね。モネさんも特訓に付き合っていただいて、ありがとうございました」
モネのおかげで、トールにやり返すことができた。
「ふふふ。また、何かあれば言ってね。手伝うわ」
「お。お姉ちゃん。オーウェン君の特訓に付き合ってたの?」
後ろにいたトールがモネの袖を引っ張る。
「そうよ。オーウェン君、強かったでしょ」
「う、うん。僕ももっと頑張らなくちゃ」
トールはこくりと頷く。
「それより、あんた、戦闘モードに入ったときの変わりよう、どうにかできないの?」
「ご、ごめん。ちょっと、気持ちが高ぶっちゃって」
あれはちょっとってレベルじゃないだろう。
もはや別人だ。
二重人格と言われても納得してしまう。
「はあ……。もう少し自制できるようになってよね。あんたは才能あるんだから」
「う、うん。ごめん」
「オーウェン君もこれからトールと仲良くしてやってね。こんな性格だから、友達いなくて」
確かに面倒そうな性格だ。
普段仲良くしてるのに、戦闘になったら凶変するとか、どこのラ◯チだよ。
もしくは、キャベ◯ディッシュか?
「お、お姉ちゃん……」
トールは恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「トールとは今後も切磋琢磨していきます」
ベルク、ナタリーと比べても遜色ない実力を有している。
俺のライバルになる存在だ。
「うん、よろしくね」
「オーウェン君。よ、よろしく」
モネとトールとの挨拶が終わると、俺はレン先生のもとに向かった。
「先生、5日間ありがとうございました」
「オーウェン君ですか。お疲れさまでした。何か学びはありましたか?」
「はい!」
「それは良かったです」
そう言えば、レン先生はカザリーナ先生とは昔からの知り合いだよな。
「カザリーナ先生とは、どんな関係だったんですか?」
「先輩と後輩ですよ。少し親しいだけの」
レン先生は懐かしそうに目を細める。
「彼女は、私に魔法使いとしてのあり方を教えてくれました」
「魔法使いとしてのあり方?」
「この国は、魔法至上主義です。そのこと自体を否定する気はありません。魔法が使える者と、そうでない者。そこには明確な違いがあります」
人によってはそれを差別という人もいる。
でも、魔法の才能が評価基準になることを、俺は差別だとは思わない。
ただ、この王国では行き過ぎた選民主義がある。
そこに差別を感じることはある。
「サンザール学園では、魔力量が全てのような風潮があります。私を含め、魔力量が比較的に少ない人は、肩身の狭い思いをしました。ここで教師として努めているのは、魔力量が全てでないことを証明したいからです」
レン先生の瞳から強い意志が感じられた。
最初は嫌味な人だと、思ったけど、そんな悪い人ではない。
クリス先生が「そろそろ、出発するぞ」と、みんなに声をかける。
「そう言えば、以前君に言ったことを訂正しなければなりません」
「訂正……ですか?」
「君は期待以上の人物だ。カザリーナさんが認めただけのことはあります。いずれ、この国を背負う優秀な魔法使いになるでしょう。これからも精進してください」
「短い間でしたが、お世話になりました」
俺はお辞儀をする。
そして、セントラル学園を出発した。




