42. 交流戦
交流会、最終日。
今日は午前に試合をして、昼食をとった後にセントラル学園を出発する。
初等部、中等部、高等部と別々の会場で試合を行う。
時間の都合もあり、1試合20分までだ。
それを超過した場合、引き分けで終わる。
他の生徒は授業中のため、試合会場には選手と数人の先生がいるのみだ。
「お、オーウェン君……。お手柔らかに、お願いします」
俺の試合は一番最初だ。
「トール。覚悟しとけよ」
「そ、そんな……。僕がなにかした?」
「自分に聞いてみろよ。今日はお前をぶん殴りにきたんだ!」
トールにビシッと指差した。
「え、そんなぁ……」
だめだ。
戦闘モードではないトールだと、いまいち調子が崩れる。
俺たちは距離を取った状態で、向き合う。
「では、交流戦、1試合目! 開始っ!」
審判の合図とともに、身体強化を使う。
俺が身体強化をしている一瞬で、トールが急接近してきた。
だが、大丈夫。
しっかり目で追うことができている。
俺は両腕を曲げて、体を守った。
「いっ……」
トールの拳が当たった右腕がじんじん痛む。
そして、間髪入れずに、襲いかかる攻撃を腕や足を使って防いでいく。
モネとの訓練のおかげで、トールの動きになんとかついていけている。
とは言うものの、防ぎきれないものがいくつかあった。
たった数秒の攻防で腹や足、腕にダメージが蓄積された。
「おいおい! 守ってばかりかよ!」
トールは右足から鋭い蹴りを入れてきた。
それを左足を蹴り出して、受け止める。
「クッ……」
目に魔力を集中させているため、腕や足には最低限の魔力しか行き渡っていない。
このままではジリ貧だ。
「はっ、俺を殴るんじゃなかったのか? この程度かよ、おい!」
トールが右足を上げて、ドロップキックしてきた。
それを、身を翻して避ける。
トールはすぐさま振り返り、左足を軸に回転蹴りをしてきた。
太ももで止めると、トールはさらに体を一捻りし、左足のかかとで蹴ってきた。
その一撃が脇腹に直撃する。
「……ガッ」
俺は近接戦闘においては、素人に毛が生えた程度だ。
それに身体強化の練度が違う。
かろうじて、トールの動きを目で動きを追えるものの、体がついてこない。
トールは右手の拳を下から突き上げるようにし、
「ガハッ……!」
俺の腹を殴った。
一瞬、息ができなくなる。
このまま、地面に倒れ込みそうになるのを耐える。
ここで倒れるわけにはいかない。
トールは肩甲骨を閉めるように右肩を引き、殴る前のタメの姿勢を作った。
きた……!
その動きを確認した俺は、魔力を右手に込める。
モネとの戦いで学んだことがある。
トールがトドメ刺そうとするとき、必ず動作が大きくなる。
チャンスはここしかない。
腹の痛みに耐えながら、一歩前へと踏み込み、
「―――鉄拳!」
手のひらがトールの腹に入る。
それと同時に、トールの右手が俺の顔に当たった。
「ぐっ……」
「がはっ……」
俺たちは同時に殴り合った。
後ろに吹き飛ばされ、2、3度地面を転がる。
いってえええぇぇぇぇぇ。
危うく、首が一回転するかと思ったわ。
でも、こうでもしなければ、トールに一撃を入れるなんて無理だった。
これぞ、肉を切らせて骨を断つ作戦だ。
トールも、俺の強打がよほど響いたのか、フラフラしている。
「てめぇ……!」
視線をふらつかせながら、強い視線を向けてきた。
ふはははは。
「どうだ、まいったか! 一発殴ってやったぞ!」
めちゃめちゃ痛いし、涙目になるし、馬鹿なことをしたと思っている。
でも、満足した。
一撃を入れたから、もう十分だ。
あとは、俺の土俵で戦おう。
「今からが本番だ」
「本番……? 今までは手ぇ抜いてたってことかよ」
「勘違いしちゃ、困るな。俺は魔法使い。魔法を使って戦うのが俺の戦闘スタイルだ」
そういうと、地面を蹴り一気に後ろに下がる。
そして、
「大火球……!」
トール目掛けて放った。
「おらぁぁぁ」
トールは右腕を振って、止めた。
「―――イフリート!」
さらに魔法を発射する。
短い詠唱のため、大した威力ではない。
だが、牽制程度にはなるだろう。
トールは体を屈めて避け、姿勢を低くしたまま、突進してきた。
「爆炎!」
トールの近くで魔法が爆発し、砂埃がたつ。
そして矢継ぎ早に、
「イフリートよ。地獄の火炎をもって、燃やし尽くせ!」
砂埃が収まらないうちに、放った。
だが―――
「うらああああぁぁぁぁぁ」
トールの咆哮が聞こえてきた。
直後、地獄の火炎がかき消されるのが目に映る。
そして、砂埃から出てきたトールは、ところどころ焼け焦げているもののの、まだまだ戦闘可能な状態だった。
「やるじゃねーか」
いやー、強い。
魔法を使って、ようやくいい勝負ができる。
レン先生が期待していただけのことはあるようだ。
「お前こそ、強いな」
「はんっ。当たり前だろ」
トールは口の端をつり上げていった。
いいねぇ。
倒し甲斐がある。
「全力を見せてやろーじゃないか」
そう言って俺は両腕に魔力を込めた。




