41. 交流戦前日
3日間の特訓が終わり、明日はいよいよ最終日だ。
特訓によって体の至るところに痣ができていた。
こういうときにファーレンが近くにいればいいなって思う。
大抵の傷は一瞬で治せてしまう。
ファーレンの回復魔法はすごいからな。
そんなこんなで特訓をしてきたわけだが、モネは強かった。
モネというより、トールと言った方が正しいかもしれんが。
「オーウェン君。まともにやったらトールには勝てないわ。だから、耐えなさい。ひたすら、耐えて耐えてチャンスを待つの」
俺はその言葉の通り、守りに全力を注ぐようにした。
だけど、それでもモネにはやられっぱなしだった。
「魔力を目に込めて。もちろん身体強化した状態でね。まずは相手の動きを目で追えなきゃ話にならないわ」
目の辺りで魔力循環を行うと、動体視力が上がる。
ただし、全体の身体強化を使いながら、なおかつ目に魔力を込めるのは大変だ。
「そうそう。いいわ。だいぶ、あたしの動きについて来れるようになったわね」
最終日前日にして、少しの間、モネの攻撃に耐えられるようになった。
やったぜ。
最初は一瞬で倒されていたから、凄い進歩だ。
少し耐えたからってどうにかなるものではないが。
それに、守るばかりで一度も攻撃を入れることはできなかったのだ。
「オーウェン君。明日の試合、魔法なしではトールには勝てないわ。たかが、3日間の特訓で勝てるほど甘くはない」
「わかってます」
「でも、あの子は油断してるわ。運が良ければ一発ぶん殴れるかもね。期待してるわ。じゃあ、がんばってね」
「ありがとうございます」
お礼を言ってから頭を下げる。
「モネはオーウェンの心配ばかりしていいのかい? 明日は俺との試合もあるだろう」
すでに明日の試合の相手は発表されている。
モネとカイザフは毎年戦っているらしく、明日も二人は戦うとのことだ。
そして、俺の相手はトールだった。
というより、クリス先生に頼んで、対戦相手をトールにしてもらったのだ。
「心配しないで。今年こそ、あんたを倒してみせるわ」
「おお、それは怖いね。楽しみにしてるよ」
カイザフはおどけてみせた。
その後、俺は二人と別れ、芝生を囲んでいる木のもとへといく。
「よっ、ナタリー」
「お、オーウェン……気づいていたのね」
木の影にはナタリーがいた。
「訓練中にたまたま見かけてな。いつからいたんだ?」
「つい、さっきよ……。ところで、いつも夜遅くまでやっていたのかしら?」
「まあな」
「すごいわね」
「何が?」
「前向きなところよ。トールに負けて落ち込んでると思ってたけど、全然そんなことないんだもん」
「そんなことない。結構、悔しかったぞ。こうやって特訓してるのも、ただ負けず嫌いなだけだ。明日は、トールを一発ぶん殴ってみせる!」
倍返しだ!
「トールを殴るつもり? 魔法でやり返すのではなくて」
「身体強化だけでやれるところまでやってみたいんだ」
「無茶するわね」
側から見れば、無謀だと思われるだろう。
実力に差があるのは重々承知だ。
「俺は一流の魔法使いになりたいんだ」
身体強化が使えない魔法使いはたくさんいる。
むしろ、実戦で身体強化が使える魔法使いの方が少ない。
でも、一流の魔法使いになりたいなら、身体強化ぐらい使えるようにならなくちゃ。
「無茶でもしなきゃ、一流にはなれないだろ」
「ほんと……オーウェンは馬鹿ね」
ふふっと笑ってナタリーは言った。
「でも、応援している。それに、あなたなら何かやってのけそうで、ワクワクするもの」
「ありがとう。ナタリーの応援があれば、俺は無敵だ」
「無敵ってことはないでしょう。期待しているわ」
「ナタリーも頑張れよ」
「大丈夫よ。私の相手はそこまで強くないもの」
「そっか。でも、油断は禁物だからな」
「ええ、誰が相手だろうと全力で望むわ」
ナタリーなら心配はいらないだろう。
むしろ、俺の方が心配か。
短い訓練期間だったけど、それなりに頑張ったんだ。
俺の成長をみせてやる。




