37. 身体強化
魔物の講義が終わると、次は外で身体強化を使った講義だった。
校庭に出ると、レン先生が口を開く。
「サンザール学園のみなさんには珍しいと思いますが、うちでは1年生のときから身体強化の授業があります。これは、全てのクラスで行われます」
セントラル学園は、サンザール学園に入れなかった人のために設立された、と言われている。
そのため、学園設立当初は、出来損ないの学園だと揶揄されていたようだ。
だが、近年、その評価は大きく改善されることになる。
魔力制御の授業を取り入れたことが、最も大きな要因と言われている。
サンザール学園では、強力な魔法を放つための教育を施している。
それに対し、セントラル学園の教育者たち、サンザール学園と同じ教育では、いつまでも追いつけないと判断し、身体強化を含めた魔力制御に重点をおいた。
少ない魔力量でも、十分な成果を残せると考えたのだ。
実際、この試みは成功し、エーデルランド王国で開かれる『四大祭』において、セントラル学園は優秀な成績を収めるようになった。
ちなみに四大祭とは、国内にある4つの学園から、優秀な生徒が選出され、競い合うものだ。
4年に一回しか開催されないこの祭りは、前世でいうオリンピックのように、大きな盛り上がりをみせる。
今でも、サンザール学園の生徒はセントラル学園の生徒を見下す人が多いが、実力は拮抗してきている。
このままでは、数年後にセントラル学園に追い抜かれる可能性だってある。
「では、さっそくペアを作ってもらいます。いつもは自由に組んでもらっていますが、サンザール学園の人との交流もありますので、今日は私の方でペアを決めました」
俺はトールと組むことになった。
「お、オーウェン君だよね。よ、よろしく」
「うん、よろしく」
顔見知りでよかった。
先生が配慮してくれたのかな?
「やることを説明します。今からやっていただくのは、組み手です。動作はゆっくりで構いません。細かな動作は指定しませんので、自由にやって下さい。ただし、相手に触れる箇所は、必ず魔力を込めてください。これは、魔力制御の練習でもありますので」
カザリーナ先生と簡単な組み手だったらやったことがある。
動きはぎこちなく、様にならなかったけどな。
俺はトールと相対する。
「こういうの慣れてないから、ゆっくり頼むよ」
「そ、そうだね。じゃあ、始めるよ」
トールは右手を突き出してきた。
非常にゆっくりの動きだ。
これなら、俺でも対応できる。
俺は、左手に魔力を込め、トールの右手を受け止める。
次に、俺は右足で、トールの脇腹目掛けてケリを入れる。
それをトールは左腕でガードした。
こういった動作をしばらくすると、俺は汗で体中がびしょ濡れになった。
動作自体はゆっくりだが、常に体内で魔力を移動させているため、エネルギーの消耗が激しい。
これは常時身体強化を続けているよりもつらい。
魔力制御に無駄があるのが、原因だろうが。
その証拠に、トールは軽く汗をかいているだけだった。
「ちょ、ちょっと、休憩してもいいか……?」
俺は肩で息をしながら言った。
「あ、うん。いいよ」
トールは平気そうだ。
同じような動きをしていたのに、ここまで違うのか。
セントラル学園は想像以上にレベルが高いかもしれない。
それ以降、何度か組手をしたが、俺の方がすぐにギブアップし、トールに迷惑をかける形になった。
「はい。終了です。では、次に手合わせに移ります。まずは、トール君とオーウェン君のペア、こちらに来て下さい」
「何をやるんですか?」
「今からは身体強化を使って、手合わせをしてもらいます。原則、魔法は使わないようにお願いします」
いや、それって俺のほうが不利だろ。
身体強化の授業ってのはわかるが、さすがに力の差がある気がする。
でも、ここで引くのはサンザール学園の代表として、恥ずかしいな。
まあ、トールなら上手く力を抜いてくれるはずだ。
俺は、トールと向き合い、「よろしくお願いします」と頭を下げた。
トールも「お、お願いします」といって、お互い向き合った。
「それでは、始めて下さい」
レン先生がそういった瞬間、トールの雰囲気が変わった。




