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36. 講義

 セントラル学園に着いた翌日。


 俺たちは、セントラル学園の生徒に混じって、授業を受けることになっている。


 教室の風景は、サンザール学園とは少し異なる。


 サンザール学園では、席は固定であり、それぞれの生徒に椅子と机が用意されていた。


 それに対し、セントラル学園では、一番前に黒板があり、扇状に机が配置されている。


 大学の講義室といった感じだ。


 椅子は3人がけとなっており、自由席だった。


 俺たちは3人揃って一番前に腰掛けた。


 やる気があるだろ?


「サンザール学園から3人の生徒が来てくれました。みなさん、仲良くしてください」


 教壇に立っているのは、レン先生だった。


 そして、教室内には、トールもいる。


 俺たちは、レン先生に促されて、それぞれ一言ずつ挨拶をする。


「さて、今日は魔物についての授業です。魔物には、コアとなる魔石がありますが、これは魔道具等に使われる魔石と区別するために、魔瘴石と呼ばれています。魔物はこの魔瘴石が変異してなるものです。ちなみに、魔物が発生する瞬間をみたことある人はいますか?」


 レン先生の質問に、生徒たちは、一様に首を振る。


 もちろん、俺もそんなの見たことはない。


「あまり、見られるものではありませんからね。魔物になる直前の魔瘴石は、白い光が脈打つように点滅します。そして、その光が徐々に強くなり、最終的には眩い光を出して魔物になります」


 魔瘴石は魔物の卵という認識で問題ないだろう。


 魔瘴石がたくさんあるところに行くと、ゲームのように魔物ぽんぽん湧いてくるのかな?


 それ、ちょっと怖いかも。


「魔石と、魔瘴石の大きな違いは、純度です。魔道具に使われるような魔石は、純度が高く透明な色をしています。それに対し、魔物の核となる魔瘴石は、白く濁った色をしていることが多いです」


 そういえば、前回、森でゴブリンを退治したときの魔瘴石も、濁った色をしていたな。


「では、ここで質問です。なぜ、魔瘴石は濁った色をしているのでしょうか。 ―――今日はせっかく、サンザール学園から来ていただいているので、彼らに聞いてみましょう」


 レン先生の言葉に、ナタリーとベルクが同時に手を挙げた。


 おお、やる気があって良いことだ。


「では、ナタリーさん、お願いします」


 ナタリーは「はい」と言って立ち上がる。


「純度が低い魔石に、瘴気が入り込んだためです」


「すばらしい。まさに模範解答です。では、ナタリーさん。座ってください」


 ナタリーはレン先生に促されて座る。


「今の回答の通り、純度が低い魔石は瘴気がたまりやすくなっています。そして、魔石に瘴気がたまることで、魔瘴石になり、それが魔物へと変化します」


「先生。質問よろしいでしょうか」


 ベルクが静かに手を上げた。


 レン先生が「どうぞ」と言うと、座ったままベルクは質問する。


「間違って魔瘴石を王都に運んでしまったら、魔瘴石が魔物になって危なくないでしょうか?」

 

 ベルクの質問に対して、


「良い質問ですね。全く危険がないとは言い切れません。放置された魔瘴石が魔物になった事例もありますので、魔石は慎重に扱う必要があります。また、魔瘴石を魔物にしようとする輩がいますが、人間の手で魔物を作り出すことはできません。少なくとも、今の人間の技術では。人が住むに適した環境では、空気中の魔力濃度や瘴気が少なすぎますので」


 ふむふむ。


 魔瘴石を王都に運び込んで魔物にし、王都炎上ってことはできないみたいだ。


 そんな物騒なことはするつもりないけど。


「もう一つ質問があります」


「はい、どうぞ」


「魔物が死んだ後に取れる魔瘴石が、再び魔物に戻ることはないのですか?」


「それはありません。一度、魔物になったあとの魔瘴石に、ほとんど魔力は残されていません。魔力が込められていない魔瘴石というのは、言ってしまえば、ただの石と同じです」


「では、魔物を倒したあと、魔瘴石は放置しても構わないってことでしょうか?」


「その通りです。いずれ、魔力や瘴気もなくなりますので、何も問題ありません。他に質問がある方はいませんか?」


 ベルクは納得した表情で頷く。


「はい!」


 と、右腕を勢いよく挙げる。


「どうぞ、オーウェン君」


「魔石はどの辺で取れますか? それと魔石を取る専門の人っていますか?」


 魔石はそれなりの値段で取引されている。


 魔石をたくさん取ってきて、ウハウハできないのかなーって思って聞いてみた。


「この辺りでは、ヨクゾラの大森林ですね。あそこの奥深くでは魔石が取れます。それと、魔石を採取する専門の人たちはいますよ。魔石は市場では高値で取引されるため、腕の立つ魔法使いが取りにいっています。そんな彼らはハンターと呼ばれています。ただし、魔石の近くには強力な魔物がいるため、ハイリスクハイリターンですね」


 おお、ハンターか。


 かっこいいな。


「ただ、腕の立つ魔法使いなら、魔石を取りに行くよりも、国に尽くした方が安定しています。リスクを取って、魔石を採取するよりも、その実力を活かして、国で良い仕事を見つけることをオススメします」


 ハンターを目指すつもりはないけどね。


 実家を継ぐ必要があるわけだし。


 もし、何もしがらみがなければ、ハンターを目指すのもありだったかもしれん。


 俺がお礼を言うと、先生は授業を続けた。

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