35. モネとカイザフ
クリス先生は、レン先生の方に体を向ける。
「そうだ。うちのルーキーのオーウェンだ。お前も名前は知っているだろう」
「確か『飛翔』でしたか? まだ若いのに大したものですね」
「ど、どうも」
俺は軽くお辞儀をする。
「うちにも1年生のルーキーがいるのですよ。ほら、彼です」
レンの後ろにいた少年が前に出る。
「は、は、はじめまして! と、トールです!」
もじもじしながら、その少年は言った。
「はじめまして。オーウェンです」
いい子そうだ。
良かった。
ドミニクみたいに、癖のあるやつでなないようだ。
トールは挨拶を済ませると、スッとレン先生の後ろに隠れた。
「普段は、大人しい生徒でしてね。こう見えても、実力はありますよ」
「そうか。それは良かったな。最近、セントラル学園は力を伸ばしているようだしな」
サンザール学園の後追いで創設されたセントラル学園だが、すでにサンザール学園と肩を並べていると言ってもよい。
「いつまで、上から目線でいるつもりですか?」
「上から目線?」
「……いえ、なんでもありません。では、私たちはこれで」
レン先生はトールを連れて去っていく。
それを確認した俺は口を開く。
「レン先生とはどんな仲ですか?」
「あいつは私の後輩でな。昔はもう少し可愛げがあったんだが……。そう言えば、カザリーナと私は同級生だぞ」
「カザリーナ先生ですか!」
「ああ。同級生であり、良きライバルだった」
「クリス先生がカザリーナ先生とライバル?」
「ああ。学生時代、私が唯一敵わないと感じた相手がカザリーナだからな」
へー、そうなんだ。
さすがはカザリーナ先生だ。
三ツ星のクリス先生がライバル視するほどの人だなんて。
なんで俺なんかの家庭教師になったのかな?
もっと、よい条件あっただろうに。
「で、お前はいつまでそうしているんだ? そろそろ交流してこい」
「今、交流しましたよ」
「あんな短時間で交流したとは言わん。ほら、いけ」
俺は背中を叩かれ、仕方なく動き出す。
パーティーは苦手なんだよ。
こういうときはナタリーに頼りたいが、彼女は男子に囲まれている。
さすがにあの中に割って入っていくのは嫌だな。
俺はそう思って、会場の中をぐるぐる歩いていた。
「あれ? ひょっとして、オーウェン君じゃない?」
振り向くと、水色の髪の少女がいた。
「そうですけど……あなたは?」
「あたしは、モネよ! よろしく」
「あ、はい、よろしくお願いします」
ペコリとする。
「あたし、あなたのファンなの! 武闘会であのムカつく野郎をぶっ飛ばしてくれて、スッキリしたわ」
モネがそういうと、彼女の後ろからカイザフがひょこっと姿を見せた。
「それは俺のことかい?」
「げっ、カイザフ……」
モネはすかさず、カイザフとの距離を取った。
「久しぶりだね。モネ。元気にしていた?」
「ふんっ、あんたの顔を見るまでは元気だったわ」
「あいも変わらず、君は冷たいね」
「あんたを見るとぶん殴りたくなるのよ」
「それは、俺に負け越しているから?」
「むきー! そういうところがムカつくのよ」
「2人共、知り合いですか?」
「こんなやつのこと知らないわ!」
「モネとは1年生のときからの知り合いでね。初めて交流会に参加したとき、彼女がいたんだ。当時はお互い唯一の1年生ということで、仲良くなったってところかな」
「あんたと仲良くなった記憶なんてないわ! ていうか、オーウェン君にやられていたわね。あれは最高に傑作だったわ」
「いやぁ、実に情けない。まさかオーウェンが空を飛べるとは思わなかったよ」
「あははは、いい気味よ。ところで、オーウェン君。さっきあたしの弟と話していたようだけど、大丈夫だった?」
「あ、はい。普通に良い子でしたけど」
「そう……まあ、またなんかあったら言ってね」
「はい。ありがとうございます」
トールに何か問題があるのだろうか?
まあ、気にしても仕方ない。
しばらく、モネ、カイザフと話していたら、パーティーが終了の時間となった。
よっしゃ。
今回は壁の花じゃなかったぜ。
リア充の仲間入りだ。
俺はこのことをドヤ顔でナタリーに話したら、
「そんなことで威張らないで頂戴」
と、言われた。
俺にしては頑張ったんだけどな。




