34. パーティーにて
その後、俺たちはパーティー会場に案内された。
学園に着いたのが夕方だったこともあり、お腹が空いている。
目の前には豪華な料理が並んでおり、今すぐにでも食べたい。
腹が減っているときはどの料理も美味しそうに見えるもんだな。
あの肉、美味そうだな。
こんがりと焼けた鳥の丸焼き。
と、料理に気を取られているとき、
「皆様。セントラル学園にお越しいただき、ありがとうございます」
パーティー会場の舞台の上に、さっきクリス先生と話していた男が登場した。
「私、レン・ノマールと申します。以後、お見知りおきを。さて、この交流会も、今年で10回目となります。サンザール学園とは、これまで切磋琢磨し―――」
レンの挨拶を話半分に聞きながら、ナタリーに話しかける。
「あそこのお肉取りに行ってもいいかな?」
ナタリーに尋ねた。
「駄目よ。挨拶が終わるまで待っていなさい」
11歳の子供に怒られてしまった。
だけど、待てないんだ。
鳥の丸焼きが、食べて欲しそうにこちらを見ている。
食べますか? 【はい/いいえ】
オーウェンは【はい】を選択した。
早く食いてェェェ―――!
ようやく挨拶が終わり、乾杯の音頭とともにパーティーが始まった。
俺はすぐに動き出す。
目当てであった肉を皿に入れ、空いたスペースにサラダやパンを盛っていく。
前世で一番食欲旺盛だったときよりも、今のほうが食べている気がする。
日常的に魔法を使っているため、その分エネルギーの消費が激しいのだ。
以前の俺なら、無駄にあった贅肉があり、問題なかったが、今の俺は普通の体型である。
むしろ、ちょっと痩せている。
すでに俺の体には消費できる贅肉が残っていないらしい。
エネルギーを使ったんだから、食えと体が言っているようだ。
体の成長期ということもあって、最近はどんどん食欲が増している。
俺は鳥の丸焼きにかぶりつき、
「美味い―――!」
肉を頬張ったその瞬間にジューシーな味わいが口いっぱいに広がった。
肉肉カーニバルだぜ!
俺は無我夢中で肉を頬ぼった。
「あれ? そう言えばナタリーがいないな」
ふと、辺りを見渡すと、ナタリーが男子に囲まれているのが見えた。
ナタリーは可愛いからな。
少し離れたところでは、ベルクが女子に囲まれていた。
2人共モテるよな。
まあ、確かに顔も家柄も性格も良いからな。
俺はって?
もちろん1人さ。
これが俗に言う独身貴族というやつだ。
べ、べつに嫉妬なんてしてないからな!
ふはははは。
周りのことを気にせず、夢中になって料理を食べていることにした。
すると、いつの間にかクリス先生が隣に立っていた。
「こら、もう少し他の人と交流せんか!」
「先生。僕はコミュ障なので、無理です」
「コミュショウ? そんなもの知らん。さっさと行ってこい」
コミュ障が通じなかった。
とあるアンケートによると、日本人の3人に1人がかかっているという、コミュニケーション障害だぞ。
だが、自分で自分のことをコミュ障というやつに騙されるな。
自己紹介で「僕(私)、コミュ障です」と言うやつは大抵嘘だからな。
コミュ障は自分がコミュ障であることを恥じて、人に言えないんだ。
俺みたいにな!
さっき俺も自分で自分のこと、コミュ障と言ってたって?
そんなの知らん。
俺は例外だ。
コミュ障の俺からすると、パーティーは恐怖だ。
知らないやつらと騒ぐなんて無理。
俺はそんなリア充じゃない!
よし、トイレに行こう。
トイレという名の安住の地。
約束されたフロンティアだ。
パーティー会場を出ようとしたとき、またしてもクリス先生に声を掛けられた。
「おい、オーウェン。どこに行く?」
「……トイレです」
「なら、私もついて行こう」
なんで、クリス先生もついてくるんだよ!
ていうか、先生と連れションってどういう状況?
絶対おかしいよね?
「冗談です。今から、交流しようと思ってました」
俺はくるっと回って会場に戻る。
「お前は今日の主役でもあるからな。頼んだぞ」
クリス先生がそう言って、俺の背中をバシッと叩いた。
主役の割に人がほとんど寄ってこないんだけど。
「おやおや、クリス先生。そちらは自慢の生徒ですか?」
セントラル学園のレン先生が、少年を引き連れて現れた。




