28. ハイオークとの戦い①
俺たちはドミニクのもとにたどり着いた。
そして、そこには、醜悪な豚の顔をした魔物―――オークがいた。
ドミニクは、尻もちをついた状態で、オークと相対している。
「オークか……」
なぜ、こんなところにオークが?
いや、ありえない話ではない。
はぐれオークが出没する可能性はゼロではない。
通常、オークが王都付近に現れれば騎士団の手によって退治されるのだが、その前に運悪く遭遇してしまうこともある。
「……違うわ。あれはただのオークじゃない―――ハイオークよ」
エミリアは声を震わせながら言った。
ハイオークは初等部の学生が相手にできるものじゃない。
ここは、逃げるしかない。
そう思ったが、
「ドミニクさん!」
ファーレンが駆け出していた。
正義感が強いのはいいが、今回はドミニクの自業自得だ。
そんなやつを助けて、自分がやられたらどうするんだよ。
「大火球!」
俺はハイオーク目掛けて魔法を放つ。
しかし、オークは手に持っていたこん棒を振って、火球を消し去る。
オークの意識が俺の方を向いた。
そして、オークが気が逸れた瞬間をついて、
「ああああああああ!」
ドミニクが逃げ出した。
おい、一人で勝手に逃げんな。
なんで、お前の尻拭いを俺たちがしなきゃいけないんだ。
いい加減にしろよ。
俺だって怖いんだよ。
今すぐに逃げ出したいわ。
だけど、ハイオークは俺をターゲットにしているようで、簡単に逃げられそうにない。
豚に好かれても嬉しくないのだが。
「エミリア、ファーレン! 逃げろ!」
「―――私は残ります!」
「足手まといだ!」
ファーレンの意見を一蹴する。
一人なら連れて重力魔法で逃げることも可能だが、二人を連れて、飛ぶことはできない。
「ファーレン、行くよ!」
「でも―――」
「今、ここに私達がいる方が迷惑よ」
そういって、エミリアはファーレンの手を握って、動き出した。
「すぐに先生を呼んでくるわ!」
エミリアたちが離脱するのを確認した俺は、ハイオークを睨む。
……でかいな。
改めて見ると物凄い威圧感だ。
だが、ハイオークを倒す必要はない。
それに、ファーレンとエミリアがある程度のところまで逃げれば、俺は空に離脱すれば良い。
それまで、俺に注意をひきつけ、時間稼ぎをする。
身長は2メートルを超え、でっぷりした体に反して、俊敏な動きをする。
いわゆる動けるデブだ。
どうせなら、動けないただのデブであって欲しかった。
以前の俺のように。
「イフリートよ、敵を殲滅せよ!」
短い詠唱のため、威力は多少落ちる。
それでも十分な威力を誇る。
「―――ふんぬっ!」
だが、ハイオークの一振りによって、防がれた。
同時に、ハイオークの周りにあった木々も粉砕される。
ハイオークは一気に距離を詰めてくる。
速い……!
「爆炎!」
俺の放った炎の塊は、こん棒によって粉砕される。
だが、甘い!
―――ドガンッ
炎の塊は、こん棒が当たると同時に爆ぜた。
衝撃によって爆発するように設定しておいたのだ。
それによって、一瞬隙を見せるハイオーク。
「イフリートよ、殲滅せよ!」
一気に丸焦げにしてやる!
ハイオークに炎が直撃した。
「やったか……?」
だが―――、
「グラアアアアアア」
ハイオークの体は、多少焼け焦げているものの、致命傷ではないようだ。
そんな簡単には倒せないよな。
まあ、予想通りだ。
ていうか、「やったか……?」と言ったときは、大抵倒せていない。
ちょっと、言ってみたかった。
まあ、でもこのぐらい時間を稼げば、逃げても問題ないよな。
「―――引力解放!」
空に逃げ、ハイオークを見下ろす。
ふはははは、人がゴミのようだ。
ハイオークもここまでは追って来られないだろう。
あとは、逃げるだけだな。
と、安堵したときだ。
「グラアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ハイオークが『雄叫び』をした。




