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15. 旅立ちの日に

 誕生日会から半年が経った。


 俺はダイエットに成功し、学園に入学する前に痩せることができた。


 頑張ってダイエットしたわけじゃないけどね。


 魔法を楽しく極めていただけだ。


 そして、俺は学園に向けて旅立つ。


 学園は王都にあり、ペッパー家から馬車で丸一日かかる。


 ちなみにだが、俺たちが住む国は『エーデルランド王国』と言うらしい。


 魔法大国として周辺の国家から一目置かれている。


 そのせいか、魔法ができない貴族はこの国での立場が低い。


 魔法を学んでおいて良かった。


 カザリーナ先生、ありがとう。


 入学式は3日後であるが、余裕を持って今日出発する。


 今まさに出発するというときに、なぜか使用人に囲われていた。


 見送りに来なくても大丈夫、ということを伝えたんだけどね。


 父と母以外は全員来ているのではないか?


 なぜだろう?


 俺は嫌われていたんじゃないのか。


 これはまるで、使用人たちが俺との別れを惜しんでいるみたいだ。


 ははは、そんなわけないか……。


「どうして、皆さん集まっているのですか?」


 俺は隣にいるセバスに聞いてみた。


「オーウェン様のことが好きだからです」


 本当か……?


 挨拶とか、世間話はするものの、そんなに関わって来なかった。


 料理長やセバスとなら頻繁に話したけど。


 それに、最近では使用人に暴力を振るっていないが、以前は暴言を吐き、使用人を傷つけてきた。


 嫌われる理由はわかっても、好かれる理由が思いつかない。


「オーウェン様、あなたは変わられました。それは、この2年半の間、私を含め使用人全員が見てきました」


 セバスの言葉に、使用人たちは頷く。


「そうですよ。オーウェン様。あなたの頑張りは私が保証します」


「……カザリーナ先生」


 そう言われると、嬉しくなる。


 もっと、冷めた感じで追い出されると思っていた。


 セバスとカザリーナ先生が見送りに来てくれれば十分だと考えていたのだ。


 せっかく皆が来てくれたんだ。


 何か言わないと……。


「僕は、皆さんに酷いことをしてきました」


 俺は使用人たちに向かって口を開く。


「昔のことだと言って無かった事にする気はありません。過去は消えないのですから」


 例え、俺(オーウェン)がやったことでも、それは今の俺が取るべき責任である。


「恨まれても仕方ないし、憎まれても仕方ないことをしたと思っています。―――でも、そんな僕に愛想を尽かさず、仕えてきてくれたこと、そして、今日この場に集まってくれたことを僕は決して忘れません。……ありがとうございます」


 使用人たちに向かって頭を下げた。


 顔を上げると、使用人たちが唖然としていた。


「立派な人になれるように、学園でたくさんのことを学んできます。そして、いつか、あなたたちも含め、この領地の人々を幸せにできる立派な領主になります」


 記憶を取り戻したときは、伯爵家なら裕福だから、人生安泰だなと考えていた。


 だから、楽に生きていこう、と思った。


 でも、そんな簡単な話じゃない。


 魔法の練習をサボれば、父のようになり、使用人に暴力を振るえば悪い噂が立つ。


 ナタリーが自分の行動に責任が伴うと言ったように、俺にも伯爵家嫡男としての責任がある。


「……オーウェン様」


 使用人の誰かが呟いた。


 それが端を発し、次々に俺の名を呼ぶ使用人たち。


 そんな中から、料理長が一歩前に出てきた。


「オーウェン様に料理を作る機会は、しばらくなさそうです」


 彼の料理はどれも絶品だった。


 前世から苦手にしていたキノコも、彼の料理なら美味しく食べられた。


 今ではキノコが大好物だ。


 学園では、彼の料理を食べられないと思うと、残念で仕方ない。


「料理長も一緒に来ませんか?」


 冗談めかして言ってみる。


 すると、料理長は目を見開く。


「とても……とても、ありがたいお言葉です。しかし、私はペッパー家の使用人。こちらに残らせていただきます。そして、オーウェン様が戻られたときに最高の料理をお出しできるよう、腕を磨いておきます」


 今でさえ、もの凄く美味しい料理を作るのだ。


 これ以上の腕になったら、もう料理長以外の料理が食べられなくなる。


「そうですか……。期待しています」


 俺の言葉に料理長は静かに頭を下げてから、後ろに下がった


 そして、すれ違いでカザリーナ先生が近づいてきた。


「オーウェン様。私はあなたに魔法を教えることができて、本当に良かったです」


 カザリーナ先生は俺をぎゅっと抱きしめる。


 いい匂いがする。


「もっと前からあなたに出会い、守ってあげたかった」


 もっと、早く出会っていたら、俺(オーウェン)が先生を追い出していただろう。


 だから、あれが最も良いタイミングだった。


「……ありがとうございます。カザリーナ先生が僕の先生で本当に良かったです」


 先生が来てくれたことに、心から感謝している。


 他の人だったら、こんなにも心を許せなかった気がする。


 カザリーナ先生は他の使用人と違って、期限付きでここに来てくれている。


 だから、今、別れたら次会うのがいつかわからない。


「オーウェン様はずっと、私を先生と呼んでくれましたね」


「先生のことを尊敬してますから。カザリーナ先生は最高の先生です! 先生に出会えた僕は幸せ者です」


 カザリーナ先生が俺を抱きしめる力を強くする。


「あなたは私の大事な生徒です。これから、たくさんのことを経験するでしょう。辛いことがあるかもしれません。……ですが、忘れないでください。……私はいつでもあなたの味方です」


 先生の肩が震えている。


 先生と過ごした2年と半年という期間は楽しく、あっという間だった。


 大事なことをたくさん教えてもらった。


「はい……」


 先生は俺を放すと、優しく頭を撫でてくれた。


 そして、真っ赤になった目で笑いかけてくれた。


 綺麗な人だ。


 外見ではなく、心の話だ。


 嫌われ者の俺に愛情を注いでくれた。


 優しく接してくれた。


 先生と過ごした日々は本当に大切な思い出だ。


 カザリーナ先生。


 本当にありがとう。


「行ってきます」


「はい。いってらっしゃい」


 こうして、俺は多くの人に見送られ、ペッパー家を出発した。

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また、感想や誤字脱字報告もありがとうございます!


これからも面白い話を書いていきますので、応援よろしくお願いします!

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