↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/174

101. 《続》ユリアン戦③

 俺はユリアンとイフリートの戦いを外から見ていることしかできなかった。


 致命傷を受け、なおかつイフリートを出現させるのに大半の魔力を使ってしまったため、戦いに参加する力がほとんど残っていない。


 戦いの余波を受けないように立ち回っていた。


 それにしても……と考える。


 イフリートは自分が出現させたとは思えないほどの強力な精霊だった。


 今までイフリートを出現させようと思ったことは何度もある。


 だが、何回やってもイフリートを出現させることはできなかった。


 その理由はいくつか考えられる。


 その中で最も大きな要因が『イフリートの意思』であると考えていた。


 精霊を作り出すには魔法に意思を持たせる必要がある。


 その意思とは使用者の人格の一部でもある。


 しかし、イフリートとは怒りの化身。


 俺が思い描くイフリート像と俺自身の人格が全く一致していない。


 そのせいでイフリートに意思を持たせることができなかった。


 そんなとき、過去の俺と出会った。


 イフリートという器に過去の自分を入れ、イフリートを顕現させる。


 この結果は、俺の予想を遥かに超える精霊が誕生した。

 

 イフリートとユリアンによる激しい戦い。


 それを見ながら、必死に意識を繋ぎ止める。


 彼らがこの場で戦いを繰り広げていると同時に、俺も自分自身と戦っていた。


 体中に走る痛み。


 すぐにでも意識を手放したくなる。


 だが、それを我慢しつつ常にユリアンに意識を向けていた。


「ああぁぁぁぁぁ――――!」


 イフリートがユリアンに向かって拳を振ったのが見えた。


 その瞬間、ユリアンの意識が完全にイフリートの方に向くのを感じた。


 イフリートとの激闘を繰り広げるユリアンだが、同時に俺への警戒を怠らずにいたことを知っている。


 ユリアンはちらちらとこちらを確認していたからだ。


「黒―――」


 ユリアンがとっさに防御魔法を使おうとしたときだ。


「大火球―――!」


 ユリアンの意識から抜けた隙をつき、魔法を放った。


「―――な……っ……!」


 ユリアンが俺の方を向いた。


 その瞬間、


「が……はっ……」


 イフリートの拳と俺の大火球が同時にユリアンに当たる。


 そして、吹き飛ばされるユリアン。


 ドカッ―――っと勢いよく壁にぶつかったユリアンだが、それでもすぐに立ち上がろうとする。


 だが、イフリートがすぐさまユリアンを追撃する。


 先程の一撃が効いたのか、ユリアンの反応が一拍遅れたようだ。


――――ドンッ!


 イフリートがユリアンの頭を掴み取り―――地面に叩きつけた。


 そして―――ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 イフリートは何度も何度もユリアンを叩きつける。


 やばい……!


 イフリートは俺の制御下にはない。


 やつはただ怒りに身を任せて動いている。


 もはや戦意のないユリアンに対し、攻撃を加えているのだ。


 このままではユリアンが危ない―――。


「そこまでだぁぁぁぁぁ!」


 俺の叫びに反応したのか、イフリートがピタッと攻撃をやめて俺を見た。


 そして、ニカっと嗜虐的な笑みを浮かべたイフリート。


 ―――その直後。


 イフリートは一瞬で俺との距離を縮めてきた。


 そして、俺の顔を掴んで―――ドンっと後頭部を地面にぶつけた。


「……が……っ」


 一瞬で意識を刈り取られそうになる。


 こいつには……敵も味方もないらしい。


「もう……十分だろ」


 イフリートの中にいるオーウェンに向かって言った直後、


「ああぁぁぁ!」


 イフリートが俺の顔を握る力を強めた。


「ごは……ぁ……」


 猛烈な痛みが走る。


 顔が変形してしまいそうなほどの強い力で顔を掴まれている。


 涙で視界が霞む。


 でも、俺は諦めない。


 俺はイフリートの腕を掴み、


「や……めろ……」


 といった瞬間、イフリートの中にいるオーウェンと共鳴するような奇妙な感覚に襲われた。


 ぐっと腕を握る力を強め、俺(オーウェン)を自分の中に引き寄せるように、

 

「も……どれ……ッ!」


 といった。


 すると、俺でないオーウェンの感情が一気に流れ込んできた。


 そして、俺は感情の奔流に飲み込まれるかのように意識を手放し―――はしない!


 俺を俺(オーウェン)をぎゅうぎゅうと自分の中に押し込める。


 俺(オーウェン)もさすがに暴れまわって疲れたようで、それほど抵抗はされなかった。


 俺の中で俺(オーウェン)が静かに眠る。


 そして、意思をなくしたイフリートがパラパラと消えていく。


 俺は満身創痍の体をなんとか起こす。


 もう、立てるほどの力が残っていない。


 ユリアンを見ると、彼は地面に伏したまま動く様子はない。


「勝った……のか?」


 正直、ユリアンよりもボロボロのせいで、勝った気がしない。


 でも、この状況は間違いなく俺の勝ちだ。


 ぐっと拳に力を入れて、無言のまま右手を空に向けて突き出した。


 と、その直後、


―――勝者、オーウェン・ペッパー!!!


 審判の勝利宣言が鳴り響き、割れんばかりの歓声が会場一帯に轟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。