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西果て鉄道運行中  作者: 斉藤さん
第二部 今日死ぬにはもってこいの日だ
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十四章 最低最悪の屑が吐き出す発想

「生態義足じゃなくて良かったんですか」

「うん? そうだね普通は逆なんだと思うけど、生態義手は違和感がどうしてもぬぐえないからね。それなら最初から器械系の方が色々と選択肢が増えると思ったんだよ」


 実際に人間の構造とは違う行動も出来るようにと、技師にあれこれと注文を付けていた様だが、無茶苦茶言うなという悲鳴が響いていた。

 生態義足は反応速度などが殆ど人と変わらない。だから今までの動きが出来るようになるが、ラディアンスはそれが不服だった。


 折角足が無くなったのだ、人間の限界を超えられるならそれに越した事は無い。そんな発想が最初に来てしまう彼女だが、抉られた目やなくなった指までは補填しようとしなかった。

 ポーオレからして見れば、何故足だけと言う疑問にもなるが、這いずられ続けても困るし、むしろこのままなどとわがままを言わないだけマシだと口にする事はしなかった。


 久しぶりの生成食品ではない食事を食べながら、体の調子などを聞いて、先の準備をする。

 人によっては、準備や情報収集に一年以上掛ける。たとえばだが厄災地点の入り口の結晶変化の状況などや、周辺の気象事情、そういったデータを入念に集めてからのアタックなどが、このあたりまで辿り着いた人間の基本的な生活スタイルになるが、ラディアンスが考えている事はまったく別の事であった。


「感覚的に次の厄災地点は簡単に超えられると思う」


 不遜とすら思える暴言を彼女吐き出していた。

 しかしこの直感と言うのが、あながち外れとも言えない。ラディアンスの根底は、強烈な意思力と、それに伴う冷徹さだ。西への執着は当然だが、そこを除いた時に見える彼女の計算力、自身の能力の把握に対する隙の無さは、ぞっとするほどの物である。


「珍しい弱音ではなく確信ですか、ディンがそう言うのなら間違いは無いかもしれません」


 出来ないと分かれば躊躇い無く切り捨てる。それが自身の体であっても変わらず、そうやって生き延びてきたからこそ、ポーオレはラディアンスを疑え無いでいた。

 自信過剰と周りからは聞こえるかもしれないが、擬似的なものとは言え、西を見通そうとした目で見た第七を彼女は知っている。そこから導き出された代物は、どうあっても自分が越えてしまうと言う確信染みたものであった。


「それじゃ足りないんだ。それじゃあ、まだ私は足が届かない。ねえ、私はどこまで私を追い詰めればあれに届くと思う」

「一度死んで生き返って、また死んで生き返る程度の苦労を重ねて見たら良いとは思いますが、厄災の前に厄災を超える何かが必要ですよ」

「第七の前に、新しい厄災地点を作るって言うの、私でも流石にそれは考え付かないよ。常識では考えられないポーオレらしい破綻した発想だねそれ」

「例えでしょう。私は出来るとは思っていませんし、出来るのならやるのは貴方だ」


 突きつけるように言うが、流石分かってると彼女は笑うだけ。

 ああ嫌だと、ポーオレは思う。知っている、この笑顔は知っている。イラつくほどにその顔を彼女は知っている。

 こう言う顔をする時に限って、彼女は無茶をしてしまう。そして何よりそのときに限って、意やこうなった時から、彼女はその行為に妥協しない。


 諦めを知らないからこそ、自分の結果以外の全てに興味を持たない。

 彼女はそうなる。一度方向性を与えてしまえば、必要無い筈の犠牲がここに重なる。今一瞬だかポーオレは周りを見回した。

 ラディアンスの言動が聞かれたかどうかと言うのを警戒しての物だ。


 だが所詮彼女の言葉はニュービーの大言壮語にしか聞こえない。笑いこそすれ、それ以上の反応は無い。この領域まで来た開拓者はそれぞれの考えがあり、開拓の哲学のようなものがある。その中で自信過剰なものが先にこれた事は無い。

 対策に対策を重ねて起きる予想外に対応する能力をつける。それが彼らの発想であったが、ある意味ではラディアンスも同じだが、彼女の場合は少し違う。

 彼女にとって厄災地点は超えて当たり前であり、超えるだけでは足りない代物なのだ。


 だから対策はいらない自分の力でねじ伏せるから、準備は自分を縛る制約の為でしかなく、彼らとは発想の段階がずれている。彼女にとっての最後の厄災地点は、少なくともこのバンドの人間が知るには、あまりに強大な存在だとラディアンスは認識している。

 ここまで超えてもなお、彼女はヒサシゲと言う存在に追いついているとは思えない。

 確信出来てしまう事実が、彼女を焦らせ自殺まがいの道を歩ませるが、それをただ見ただけで判断しろ何度と言えるわけもない。


 ポーオレが警戒したのは、もしかしてだがラディアンスの性格の破綻を読み取れる人間がいないかどうかだ。ここはどうあっても化け物の巣窟であり坩堝である。その坩堝の中に開拓のために真の意味で手段を選ばないラディアンスを見切れる人間がいる事に対する警戒だ。

 そんな人間は彼女ならそれぐらいの事をやらかすと言う確信を持ってしまう。その時に邪魔をされる事や、その前に彼女を闇打ちしてしまう人間を警戒したのだ。


 開拓に関してなら厄災的だが、基本的には重大の少女に過ぎない。発狂しているような特性だが、尖鋭化し過ぎていて、それだけが成長したようなアンバランスさを持つ。

 これまでバンドで数々の暴走を行い続けてきたラディアンスは、基本的には世間知らずのお嬢様でしかない。ただ特筆して一つがとち狂っているだけであり、こう言う場での彼女は基本的にはポンコツで、そういう部分に関してポーオレは彼女を守ってきていた。


 そのあたりをラディアンスも自覚はしている。

 直す気はさらさらないようだが、だからこそポーオレを手放す気が余り無い。などという部分もあるが、その大言壮語を可哀相な子扱いしてくれる面々で助かったと、ポーオレはため息を吐く。

 彼女は嫌な目だとは思う。

 世界に希望しか見ていない目。その目で彼女は地獄を作ろうとしている。自分の世界意外に勝ちは無いと本気で思っているから、彼女は故郷すらも台無しにして見せた。


 知っている。

 あれは自分以外の価値を知らない目。

 可哀相といいながらも、仕方ないときって捨てる目だ。

 そして絶対に止まらない目でもある。


 言いたい声を押しとどめる。本来ならば所為のように浴びせたい感情がポーオレにはあるが、それを出さないのはきっと止まらなくなるから。そして最後には自分が気持ち悪いと思いながらも、ラディアンスの言動に賛同してしまうことを知っているからだ。

 彼女の中には、そういう感情があるのを知っている。そうしようと計画した事もあった。


 その引き金が世界に存在しないから、ただ彼女はその顔を見せていないだけである。


 それをポーオレは認めたくない。自分はまとも、自分は正気、自分は何もずれていない。

 本気でそう考えていたいのだ。

 自分を抑える。それはある意味では自分をラディアンスと同類だと認める行為だ。彼女を嫌悪しているからこそ、自分がその位置にいる事を彼女は認めない。


 目の前に見える生きている正気と狂気のボーダーライン。


 あれは幼い世間知らずのお嬢様の皮を被った化け物なのだ。それを見せつけられ続けた彼女は、まとである存在証明を果たしたい。


「それで具体的にはどうするんですか」

「純結晶を使えないかな」


 だが、目の前の怪物は、平気でこのバンドを犠牲する様な発言をする。

 化け物めといいたくなる。それが最後に感情を爆発させてしまいそうになる。そして賛同してしまいそうになる。

 ポーオレにとってもラディアンスにとっても、世界が滅びるような内容が、全てを台無しにしてでも成り立つ力の方向性が、必要であるのだ。

 だがそれを気にしていては狂う。


 夢を果たすのに、夢を願うのに、他者の夢を気にしてなんていられない。


 潰せばいい。ねじ伏せればいい。いっそ彼らの夢を踏みにじってしまえばいい。必要ならばそうできる筈だ、必要であれば社会通念などに価値は無い、認められないのを分かった道を進むなら、結果は彼女という形として存在する。

 方向性に形はあれど、きっと夢を描いた人間を台無しにする事だってある。

 人の全てを奪い取って、知らずにへらへらと笑う事だってある。

 結局ここにいる女二人は、それが出来てしまう側の人間であり続けるからこそ、言葉が止まらず、行動に起こせてしまう。


 それをまだこのバンドの人間は知らない。

 珍しいペアであり、女同士にしては、殺伐とした関係であり、随分と色物ではあるのは間違いないが、骨の部分をまだ露にしていない。羊の群れにいる牙の生えた羊、それとも牧草の中にいる毒草その様なものだろうか。

 どちらにせよ、どちらでもあるのだ。

 当たり前のことだが、満員電車の自分の隣が殺人鬼であると気付けるかと、問う様な行為に意味はない。もっと言うなら価値はない。


 そんな無駄な行為だが、そんな無駄な行為に気付けと言うのが今の状況だ。

 この世界に対して厄災地点が足りないと言う。自分を追い詰めるものがまだ必要だと言う。そしてそのための発想を、ラディアンスは考え出して作り出そうとしている。


 そのために必要な物を純結晶と言った。

 だがそう簡単に集まるものでもない。


 そのあたりを探せばいくらでもあるが、触れれば簡単に変化を始めてしまう万能結晶相手では、加工などにかなりの苦労が必要となる。戦闘機関の主動力であるとは言え、結晶を操るラディアンスでも扱いには困ることだろう。

 かつてのニトログリセリンよりも更に扱いとしては慎重になる必要がある。


 それ一つで、要塞列車すら動かす代物だ。扱いには相応の技能と設備が必要だ。

 その事を考えれば旧時代の技術はまさに天の力だろう。

 誰もがそれを聴いた途端に夢物語と笑う。しかしそんな事をしなくても、都合よくこのバンドには純結晶は存在している。

 だがそれを誰もが理解した時はもう遅いことだろう。


「難しいかと思いますが、どうやって行うつもりですか。そもそも用意すること自体が」

「え、そこらに一杯有るじゃない。その辺りにさ、それをどうするかはちょっと難しいけど」


 時折だが馬鹿なのか、天才なのか、ラディアンスの言動をどちらと解釈していいのか悩む。

 彼女の言っている純結晶が何かをポーオレは理解はしているが、必要になりそうな結晶の在り処にそこを選ぶ辺りが、酷く厄介だとは思う。

 邪魔をされる事も確実に計算して入れている辺りで、いつもいつも困惑させられる。


 決して頭の周りが悪いわけでは無いのは分かる。だが回転の方向性が完全に狂っているのだろう。


「駅の辺りに有りそうな感じと言う事ですか」

「だね」


 ああと頭を掻く。

 その場所には一つしかないじゃないかと、そしてある意味では納得だ。時間と難易度をすり合わせて、ラディアンスが出来る限界点がここだと言うことだろう。

 彼女が天才じゃないのかと悩むのはここだ。限界点の中にはポーオレまで含まれている。これぐらいの問題行動なら許してくれるよねと言っているのだろう。


 許せるか馬鹿野郎。


 などと思っていても、これぐらいならと思ってしまう彼女は、やっぱり自分もそっち側なのだろうと理解させられるようで吐き気がした。

 彼女の発想はいつだって、いつだって、破滅の道であるのは間違いないのに、誰も停止が出来ない。火の道は積み上げられ、東の風邪が吹き荒れ続けると言うのに、この世界のこの場所の人間は、今の目の前いに現れる彼らを煽り立てる風に気付けない。


 だが納得ともポーオレは思った。かつての自然現象の一つに台風と言う代物が有ったのを思い出す。

 彼らは彼女が災害だというのを知らない。人の身で、人の形を否定された、人災の極地とも言える存在だなんて知りえない。だから目の前の姿に騙され気付く事は出来ない。

 例え出来た人間がいたとしても、もうその中には言ったのなら気付けない。彼女は年相応であるのは間違いなく、ただ一つがずれているだけだ。だから気付いても錯覚してしまう。そんな事が出来る様な子じゃないなどと言って、否定してしまうだろう。


 台風もその中心に限るのなら、一種の安全圏であるのは間違いない。だがひとたびずれれば分かるその性質の苛烈さは、時として全てを薙ぎ払う事を忘れては行けない。

 そこにその原因がいるのに、一瞬だがポーオレは誰かに止めてくれと願うように見回す。それは救いを求めると言うより、謝罪に近い行為だっただろう。だが気付けるものも、止められるものもいない、ただ薄ら笑いを浮かべながら最低最悪の発言をするだけだ。


「ね、戦闘機関が一杯あるでしょ」


 怪物は笑っていた。

 確かにそこにはある。たしかにそれはあるが、彼女は平気で言うのだ。

 彼女の故郷でも人が生きていた、そこには必死になって生きていた人々がいたはずだ。その全てを自分の道理だけで食い潰す。彼女はそれを当然の事だと思っている。

 理不尽にただ当たり前のように、自分にとって使える物は、そしてそのための被害はもう考えない。


 仕方ない、彼女にとって必要だから仕方ない。

 たとえ自分と同じ夢の方向性を向いている者達の結晶とも言える戦闘機関さえも、そこにいる幼さの残る少女にとっては、自分への供物としか考えていない。

 まさかここまでとは思わなかったとは思う。自分と同じ夢を抱くもの達の夢の形をさして、一杯あると抜かし腐りやがったのだ。


 だがある意味ではこれは当たり前の事でもあった。

 夢を食いつぶす事に、ラディアンスは躊躇わないが、それは自分の夢の為でもある。だが同じ夢を抱いている者達にすらと、ポーオレは考えていたが、逆なのだ。

 同じ夢を抱く者達だからこそ、ラディアンスはいっそう苛烈になる。


 なぜならそれは全て自分への試金石であり、開拓に賭ける意思の張り合いの延長線上に過ぎないのだ。同じ夢の方向を目指すのなら、食いつぶされる覚悟をしなくては行けない。

 むしろこのバンドにいる開拓者達全てが、彼女にとっては叩き潰すべき敵に過ぎないのだ。

 ここは夢を語らい肩を組む場所ではない。ただ穴倉から餌をめがけて掛けだす狼の一群なのだ。ただ全てが一匹狼とも言うべき存在で、ただ偶然同じ場所にいて牽制しあっているだけ、そこに現れた彼女という名のけだものは、なりふり構わず全てを餌に使用としていた。


 自分と同じ願いを持つなら、それは彼女にとっても最大の西に自分を問う試金石である。

 ラディアンスからしてみれば、食いつぶされたくないのなら、お前らが足掻いて私を食いつぶして見せろ、私を脅かして見せろと言っているだけなのだ。

 出来ないなら、この場で夢の全てが根こそぎ奪われる。彼女にとってはこのバンドを使ったヒサシゲに対する前哨戦のようなものだろう。


 しかしここで彼女を止める存在が出る事をラディアンスは願っている。

 足りない自分の穴を埋めるだけの内容を求めているからこそ、ここで自分を絶望以上の奈落に落とす存在を願っている。


「最低の発想ですよ」

「最悪だって構わないけど」

「なら、貴方の発想は最低最悪と言うしかないものでしょう。楽しいですか自分と同じ夢を潰す行為は」


 しかしだ、ラディアンスの感情を理解したくないポーオレは、彼女の本質を理解しておきながら、認める事は絶対にない。

 だから語調が荒くなり、皮肉と罵倒が言葉に混じる。

 そしてそれが暖簾に腕押しなのも更に彼女の不快感を深める事になっているのだろう。


「そうだね。そりゃ、ポーオレだって敵に容赦なんてしないでしょ、だったら踏み砕いたって何にも不思議じゃないと思うよ。

 これから私が思うことを実行して、彼らがなにも出来ないなら、その程度でしかないって事だよね。彼らはここにいるだけで、誰かの夢の為に蹂躙される覚悟を持ってるんでしょう。彼らの感情を読み取って理解してあげるなんて、価値の無い無駄な行為を私はしないよ。

 嫌なら抵抗すればいい、その権利が無いとは私は言わない。その代わり私は自分の権利として彼らを踏む潰す。されたくないのなら足掻けばいいだけの事だよ。出来ない弱者の言い訳に付き合う暇は無いからね」

「そういわれれば否定はしません。私としては貴方が屈服し、絶望に嘆く声が聞こえる事を願います」

「酷いなぁ、こっちは一生懸命誠実に答えているのに」

「一生懸命でも、誠実でも、発想が屑なら、周りの人間に評価されると思わない事です。貴方はその才能があり過ぎるのですから」


 むしろそれしかないレベルである。そうポーオレは思ってはいるが口にはしない。

 ラディアンス自身それに思い当たる事はいくつもあるが、それを言われても変えられないのだからどうしようもないと、反省する感情が出てこないわけでもないが、出された珈琲を一気に飲み干して、苦味と共にそれを塗りつぶす。

 笑う事もせずに、ただ粛々とその事実を受け止めて、ありがとうと彼女は頭を下げた。


「ポーオレからのお墨付きが出るなら、ことごとく全ての人が私の敵になってくれるって事だよね。私の狙いは絶対に成功するって事だよね。

 保障をありがとうポーオレ、やっぱり私は間違っていないと思うよ。少なくとも私と言う方向性を間違っていない」

「なら問題ないとでも、問題は大有りですよ」

「問題は無いよ。なに一つ問題が無い、ポーオレの言葉は私以外の人にとっての問題なんだから、全く考える必要が無い内容だよ。私には何の問題がある訳でもない、都合がいいだけも内容だからね」


 確かにそうだろう。 

 ポーオレからして見れば頭の構造が壊れた化け物の発想など知りえるわけも無い。ポーオレがそう思うのなら、ラディアンス以外の人間は彼女の行動にきっと反発する証明だ。

 なら彼女の狙いの一つは、既に達成されたと言ってもいい。自分の発想が人に拒絶されるのであれば、この見渡す限りのバンドの人間は、全て自分の敵になると言う事だ。


 目の前の食事では無くその事実に彼女は舌なめずりをした。


「餌がね」

「餌、なんですそれは」

「私のだよ。私の夢への餌だよ。ポーオレにとっての問題はね、私にとってはどこまでも都合の言い道具でしかない。人の感情だって、夢だって、何だってそうだよ。所詮私の道具でしかないんだよ」


 吐気がする物言いだ。

 仕方ないときて次は餌と抜かしくさる。


「だから徹底的にやろうよポーオレ。私といる以上は、手抜きなんて出来ると思わないほうがいい。私の開拓手段は、きっとポーオレが思うよりもあいつとの距離は近くなる」


 そしてなによりも付いてくるのを疑わないその自信だ。

 何故揺るがない、何故私がそちら側に来ると確信する、あまりにも疑わないラディアンスの行動に、ポーオレは感情を抑え切れずにテーブルを殴りつけた。

 周囲に響き渡る音が自然と彼女達に視線を向けさせる。逆鱗に触れたのが理解できるのか、表情が困ったような物になっているが、目の据わったポーオレになにを言っても無駄なのだろうと、じっと彼女の次の行動を待った。


「はっきり言って私は貴方が昔よりは嫌いです」


 静寂自体は一瞬だったが、殺気すら混じった視線は、体を削るような代物に錯覚させられる。

 その視線から敵対宣言とも言うべき言葉が出され、ようやくラディアンスは肩の力を抜いた。


「うん、今までの暴言聴いてたらそう思うよ。と言うか、やっぱりと言う感情しかないね」

「その理由をようやく理解出来ました。今までは馬鹿なだけの馬鹿でしたが、ヒースくんにあってからは、不愉快な馬鹿に変わっていましたが、ようやく決着が付きました」


 その決着が何かは余り興味ないが、目の色が変わったのだけは感謝だと思った。


「つまらない嫉妬なんですがね。きっとですよ、きっと、貴方と彼の距離はそれほどはなれて無いんですよ。私よりもきっと近いぐらいの距離に貴方達はいる」

「そうなのかな。ま、ポーオレが言うんだから間違いじゃないんだろうけど、あいつは遠いよ、私の想像の範疇でもまだ先にいる」

「それが殺したい程度には不愉快で、貴方の行動の全てがあまりにも彼とダブル、それが不愉快だったんでしょうね」


 そしてそれを認めるのがあまりにも不愉快だっただけ。

 だがそれでもポーオレがそれを認めたのには理由があっただけ。自分とラディアンスを比べて、必然的に付いて行けないという感情が芽生える時に、遠まわしにヒサシゲに追いつけなくなる自分がいると言う証明がされるからだ。

 それほどに女ヒサシゲと言えるほど、ラディアンスの変化はそちら側によっていた。


 だから彼女自身に一つの問いが投げかけられていた。

 しかし彼女はそれを口にはしない。認めたとしても、目の前の少女にそれを知られるのは、不愉快じゃあすまない。そのまま憤死してしまうほどの感情の暴発を招きかねないほどには不快だ。

 そのかわりの先生とも言うべき行為は、今ここにいる人間達の視線で語るだけだ。


「ま、それだけですよ。それだけ、本当にそれ以外無いです」

「そうなんだ。少しはその懸念も晴れたって事」

「そんなわけがありますか、貼れたところで不愉快なのは変わりません。だから貴方のぬるい成長案に少しだけ刺激を加えてあげます。少しだけ変えるだけできっと、貴方の道はいっそう粗くなる」


 望む所だよと、自然体で答える災害を見て、じゃあ一つお願いしますとだけ言って、彼女は席から立ち上がる。

 先ほどから行動が目立ち過ぎる彼女達から視線を外せなかった彼らは、脈絡も無い彼女達の行動に視線の全てを集中させていた。


「皆様」


 行動も言動も不遜を極めたような彼女の内容を少しは聴いていたのだろう。

 これからなにをしでかすのかと、余裕を感じさせる態度をとっていた人間達に、ポーオレと言う論外の一人は災害としての本性を明らかにしていく。


「宣戦布告を、行わせていただこうかと思います」


 目を丸くしたのは、ラディアンスだった。自分の目的なら、ここでこんな予定は無い。

 だが最近彼女に振り回されていて影も形も無かった彼女の本性は、ラディアンスが今も勝てないと言わしめる男を負かした女だ。


 その彼女が牙を剝ける。しかもこれはある種の意趣返しだ。

 ラディアンスが望まない方向へのシフト、状況を作る側ではなく、状況に流される側への方向転換をさせられ、予定をポーオレに台無しにされる。

 彼女の予測していた方向には確実に移動する事は無い状況で、目を丸くしながら彼女は仕方ないと諦める。


 自分が作る状況よりも、今からポーオレが作り出す景色のほうが魅力的に思えたのだろう。

 どうせ自分でも修正していくのだ。計画よりも、不安定に崩れるアドリブばかりの状況のほうが、未来が読めないからこそ、更に先を手に出来ると彼女は直感で判断した。


 だからポーオレの言葉に身を預けるように席にドンと背を預けて状況を楽しもうとした。だがポーオレの話を聴いていて、ラディアンスは一言だけ言いたい事が出来る。


「つまりですね。あれこれと御託を並べましたが、私の言いたい事は一つです。負け犬野郎共潰してやるから掛かって来いと、そう申したいわけです」


 そんな言葉で相手に喧嘩を売って、最初の一手目から読めないポーオレの言動に、困ったように笑って、こうくるかと呆れた声で呟いた。


「ポーオレさんそれは、流石にないと思います」


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