第35話 行き止まりと誘い
目を開けると、
光が強かった。
天井が白い。
起き上がって、
窓を見る。
太陽は、
もう高い。
真上に近い。
やってしまった、と思う前に、
部屋が静かすぎることに気づく。
ユイの荷がない。
ミレイアは、
まだ丸くなって寝ていた。
下に降りる。
通りはもう動いている。
露店の準備。
声。
金属の音。
ユイは宿の前にいた。
こちらを見ると、
少しだけ口元が緩む。
「早かった?」
「……遅い」
言うと、
ユイは肩をすくめた。
「朝、少し歩いた」
それ以上は言わない。
でも、
表情が違う。
悪くない顔だ。
ミレイアも合流する。
目は半分だが、
歩き出すとすぐ戻る。
「今日は三人で?」
ミレイアが言う。
ユイは頷いた。
「一度、整理したい」
露店の並ぶ通りを回る。
昨日より、
聞き方を変える。
「王都まで」
「移動手段」
「定期の馬車」
言葉を選ぶ。
答えは、
少しずつ揃う。
「定期はある」
「本来は、な」
「人も、荷も乗る」
話は続く。
「ただ、今は出てない」
理由は、
人によって違った。
「時期」
「人手」
「揉め事」
どれも、
決め手に欠ける。
「いつ再開する?」
聞くと、
皆、曖昧に笑う。
「分からん」
「急ぐなら、
別を探せ」
別。
それが、
一番困る答えだった。
昼が近づく。
太陽は、
相変わらず高い。
立ち話が増え、
足が止まる。
ミレイアが、
俺の袖を引いた。
「……行き詰まり?」
声は小さい。
俺は答えなかった。
ユイが、
一歩前に出る。
「今日は、ここまでかな」
言い切らない。
だが、
引き際の声だった。
その時。
「王都?」
後ろから、
声がした。
振り返る。
四人。
年は、
俺たちより上。
一人は、
肩を押さえている。
「馬車を探してるなら、
話がある」
言い方は、
軽い。
だが、
距離の詰め方が上手かった。
ユイが、
何も言わずに立つ。
ミレイアは、
相手を見る。
俺は、
言葉を選んだ。




