第一部幕間:結希乃とミラ7
こうして、一つの戦いが終わった。
だが――世界再生の使命が終わらない限り、アストは戦い続けなければならない。
そして、その戦いを、自ら放棄することはできない。
「……あの、結希乃さん? 何をされているんですか?」
ミラは淡い光を放つ球体に手をかざしながら、
ソファに座って突然語り始めた結希乃を不思議そうに見つめていた。
「ナレーションよ! 一度やってみたかったのよね~」
どこか満足げに胸を張る結希乃。
ミラは何のことだか分からないといった様子で、小首を傾げた。
「……ナレーション、ですか?」
その無垢な視線に気圧され、結希乃は咳払いをひとつ。
照れ隠しのように話題を切り替えた。
「そ、それより。アストが町を作るって」
「はい。順調に活動を進められているようで、頼もしい限りです」
「いやいや! 町の名前に“アストリア”って……あなたの名前そのままじゃないの!?」
「アスト様が私のことを想って付けてくださったのだと思うと、嬉しいですね」
まるで他人事のように、ミラはどこか柔らかな笑みを浮かべた。
結希乃は思わず頭を抱えた。
「あんたって、テップのこと以外には鋼のメンタル持ってるわよね……羨ましいわ。
それにしてもあの子、異世界での冒険が楽しくて私のこと忘れちゃってるんじゃない?
ま、元気にやってるならいいんだけどさ」
テレビを見つめながら、嬉しいような、寂しいような、複雑な表情を浮かべる。
ミラはそんな彼女を横目に、苦笑を漏らした。
「つい先ほど思い出してくださっていたではありませんか、町の名前を決める時に……」
その言葉に、結希乃は一瞬固まり、ゆっくりと天を仰ぐ。
「くぅっ……! 忘れようとしてたのに……!
黒歴史を暴かれて恥ずかしい思いをしたのは、やっぱり私だけなのね……!」
ミラはくすりと笑うと、光球から手を離した。
そして結希乃のそばへ歩み寄り、そっと肩に手を置く。
「でも、アスト様は忘れていませんよ。
結希乃さんのことも、結希乃さんと過ごした時間も」
その一言に、結希乃は照れくさそうに頬をかきながら、
けれど、どこか安心したように息を吐いた。
お読みいただきありがとうございます。
これにて幕間は終了となります。
第一部にお付き合いいただき、改めて感謝申し上げます。
次話からは第二部へと物語が進みます。
これからも見守っていただければ幸いです。




