↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アスト・プロトコル ―心を得たAIの異世界再生記録―  作者: 手封錦
第一部:ゼフィレイア王国編
PR
78/92

15章:星々の共鳴⑥

【6節.事後処理】


「コーティン様の了承を得られたところで……申し訳ありませんが、残りの話を進めさせていただきたいと思います」



アストの言葉に、アルフレッドは静かに頷き、コーティンへ視線を向けた。



「コーティン・ラグナルド。身支度を整え、アスト殿に同道する準備をせよ。レオニス大団長、後は頼んだ」


「はっ!」



レオニスが敬礼し、扉へと向かう。

コーティンも国王とアストたちに深く頭を下げ、静かにその後を追って退室した。


扉が閉まると、会議室には再び静寂が落ちた。

だが先ほどまでの張り詰めた空気とは違い、どこか柔らかさが戻っていた。



「さて、アスト殿。話の続きとは……?」



アルフレッドが促す。



「はい。考えたのですが……やはり、いくらかの金銭的補助と、土地の権利をお借りできればと思っています」



その申し出に、アルフレッドは嬉しげに目を細めた。



「おお、受け取っていただけるか! では、報奨金の額は後ほど決めるとして……どの領地が良いですかな?

やはりウィンター・ホルンか、あるいは豊かなオータム・ヴァルトも……」


「――アスフェル荒原」



アストの短い言葉に、アルフレッドは思わず間の抜けた声を漏らした。



「……は?」


「アスフェル荒原。聖獣軍が駐屯していた、あの地の開拓権を頂ければと考えています」


「しかし、あの土地は……」



アルフレッドは眉をひそめる。



「ご覧の通り、草木も生えぬ不毛の地。街道の整備もされておりませんが……」



気の進まぬ様子の王に、アストは静かに頷いた。



「承知しています。ですが、あの土地には気になる点がありまして――研究対象として調査したいのです。

開拓の権利さえいただければ、施設の建設などは私が行います。王国にご負担はかけません」



アストは一呼吸置き、続けた。



「それと……もし許可をいただけるのなら、いずれ“町”を作りたいと考えています。

もちろん、彼らの同意が得られるのであれば、ですが」



その言葉に、アルフレッドは何かを察したように目を細めた。



「……此度の乱に参加した者たちを、ですか?」



アストは頷き、計画の輪郭を語る。



「彼らは家や故郷を失った方々です。生まれた地に戻りたい人もいるでしょうが……中には、辛い記憶の残る土地に帰りたくない方もいるはずです」



アルフレッドは深く頷き、さらに問う。



「では、金銭的補助というのは彼らのために?」


「はい。町を作るとなれば、受け入れのための住居、衣服、食料が必要です。

町経営の知識を持つ役員や建設の技術者も必要でしょう。物資や雇用のための資金が必要になります」



アストの声は静かだったが、その奥には確かな決意があった。

それは、ただの再建ではなく――“再生”の始まりを告げる提案だった。


アルフレッドは深く感銘を受けたように頷く。


だが、その静けさを破るように、黙ってお茶を啜っていたリンネがくすくすと笑った。



「アスト様ったら、またまたご冗談を。都市建設くらい、お一人でもできるでしょうに。

民に仕事を与えるためとはいえ、謙遜しすぎですよ?」



その声色はからかい半分、誇らしさ半分。



「でも確かに、民草の家をアスト様自らが建てるなんて勿体ない話です。

自分たちで作ってもらうのは当然ですが、そのための費用をご負担なさるとは……なんというご慈悲でしょう。

これはもう、町にはアスト様の功績に相応しい名を付けるべきですね!」



マティアスも頷きながら相槌を打つ。



「リンネ殿の言う通りですね。確かに聖獣アスト殿が築く町とあれば、相応の格が必要でしょう」


「ま、待ってください。まだ何も始まっていない段階で名前を決めるというのも……」



アストが慌てて制止するが、エルバートが愉快そうに笑いながら口を挟む。



「まぁ良いではありませんか。ただ、そういう話であれば、この場だけで決めてしまうのは早計でしょうな。後々、不満を持つ者も出ましょう」


「うむ、確かに」



アルフレッドも頷き、表情を引き締める。



「褒賞の詳細は後ほど改めて決めるとして……此度の乱における関係者の処遇、アスト殿への受勲、そして表向きの事実公表。

これらは早急に進めねばならん。アスト殿、相談に乗っていただけると助かる」



そして、ふっと息を吐き、穏やかな笑みを浮かべた。



「……しかし、私も少々疲れた。この場は一度、解散とさせていただけるだろうか?」



その言葉に、誰もが静かに頷いた。


長きにわたる対話の余韻が、会議室に柔らかく満ちていた。

お読みいただきありがとうございます。

次話も引き続きよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。