6章:幕間
【幕間.結希乃とミラ4】
高次元空間のリビング。
柔らかな光が差し込む窓の外には、現実では見られない幾何学模様の空がゆっくりと流れている。
ミラが紅茶を入れ、結希乃はテレビの前であぐらをかいてチャンネルを回していた。
「ねぇミラ。前から気になってたんだけどさ」
「はい、なんでしょう?」
結希乃はリモコンをぽちぽちしながら、ふと呟く。
「那琉ちゃんって、何者なの?」
ミラは一瞬だけ手を止め、静かに瞬きをした。
「……那琉様、ですか?」
「うん。テップにはまだ会ったことないけど、なんとなく……従者って感じしないのよね。メイド服着てるけど、あれ絶対“職業”じゃなくて“趣味”でしょ? 物腰は丁寧だけど、あの子……なんか違うというか」
ミラは困ったように微笑む。
「詳しくは……私も存じません。ただ、私が“拾われた”時には、すでにテップ様のお側におられました」
「普段はいつも一緒なの?」
「はい。テップ様に対しても常に丁寧な物腰ですが……時折、強い姿勢を見せられることもあります」
結希乃は目を丸くする。
「あの子が? 強い姿勢?」
これまでの出会いを思い返してみても、優雅で優しげなイメージしか湧かなかった。
ミラは少し思い出すように視線を落とす。
「ご存じのようにテップ様は少々……気さくなお方ですので。つい歯に衣着せぬ物言いをされる時があるのです。そういう時には、お言葉を戒めるように、抱きしめる腕をこう……ギュッと」
「あ~……そういう感じ……」
結希乃は腕を組んで唸る。
「そういえばさ、あの子……声、聞いたことなくない?」
「私もありません。ですが、身振りで何となく意図は伝わります。不思議と……分かるのです」
「ふーん……」
結希乃は顎に手を当て、じっと考え込む。
そして――ぽつりと呟いた。
「……実はテップより強い、とかない?」
ミラは慌てて手を振る。
「ま、まさか……そんなこと……」
しかし、その否定はどこか弱々しい。
結希乃はニヤリと笑う。
「否定しきれないんだ?」
ミラもつられて苦笑した。
「……はい。そもそも、お二人とも私から見れば天上の存在なので……」
二人はしばし黙り込み――
次の瞬間、同時に吹き出した。
「ないわけじゃないかもね」
「……ないわけでは、ないのかもしれませんね」
高次元空間に、柔らかな笑い声が響いた。
お読みいただきありがとうございます。
これにて第6章は終了となります。
次章も引き続きよろしくお願いいたします。




