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「友達としてしか見れない」なんて言ってごめん。一緒に異世界転生したので、今度こそ彼とやり直そうと思います  作者: ふたーなる
第一章 魔王討伐

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第7話 広まる世界、狭まる繋がり

 「あの、俺達依頼を探しているんですけど、」


 ここは、街の外れにある冒険者ギルド。


 私たちは、カイトの家でもあるあのギルドに行くとカイトが受付にいる乳母に止められてしまうかもしれない、ということで、わざわざ遠くまで出かけてきたのだ。


 それにしても、私もいよいよ冒険者の仲間入りとなるのか。

 なんだか、感慨深いものだ。



「えっと、今までに依頼を受けたことはありますか?」



 受付嬢が、区切られた窓から顔をだして、私たちの対応をしている。



「あ、ないです」



 それにしても、思ったより綺麗なところなんだな、と思った。

 街の中心部にある建物と、あまり変わらない内装。

 ところどころ、大理石のようなものが使われた柱があり、使われている木材も、種類はわからないが黒く塗られた高級感のあるものだ。


 受付の窓、といえばいいのかわからないが、受付嬢が顔をだしている窓の奥にもいかにも高級そうなタンスが見えるし、顔を上げればシャンデリアのようなものまで見える。

 いつか、我が家のパン屋もこんな風にしてみたいものだ。

 もしかしたら、冒険者として一山当てたら、そんなこともできるかもしれないが、だが、私たちの目標は魔王の討伐なのだ。



「じゃあ、名前を書いてもらってもいいですか?」



 私たちは、一枚の、なにやら色々と文字の書かれた紙を差し出された。



「・・・カイトって文字とか読めるの?」



 すると、意外にもカイトはうん、と頷いた。



「ルナの名前のスペルは、発音の通りだよね?」




「ああ、そうだね」



 自分の名前くらいは少なくとも書けるようにしろ、と父親に言われたので覚えたが、どの文字がどういうことを表しているのかはわからない。

 それに、父親だってわかっていないのだと思う。

 教会で名前を書いてもらったのを頑張って覚えて、私に書かせたのだろう。


 すると、カイトはカリカリと音を立てて、どんどん書き進めていった。


 そして、少し待ってから「どうぞ」とカイトが受付嬢に紙を渡した。



「カイトさんと、ルナさんですね。では、最初はこの中から依頼をお選びいただけます」



 そういってまた紙が差し出されたのだけれども、またもや文字ばっかりだ。

 これから私は、文字の勉強もしなければいけない、ということなのだろうか。

 これは、長い道のりになりそうだ。



「じゃあ、これでいいですか?」



「わかりました。では、依頼が完了したらまたこちらに来てください。成果品の受け取りは隣の交換所で行っているので、先にそちらへ行ってから、こちらで依頼完了の報告をお願いします。では、お気をつけて」



 そう言われて、私たちは後ろに並んでいた冒険者に順番を明け渡す。

 そして、私たちはさっそく依頼のあった場所へと向かって歩いた。



「あの、何を捕まえてくればいいの?」



「鹿だよ。鹿。最近、農作物の被害が多いんだって」



 両親にもちゃんと、「冒険者だって役に立っていますよ」と伝えてあげたいものだ。小麦だって彼らが害獣を退治してくれるからこそ、こちらに安定して供給されてくるものだろう。



「私、緊張してきたな、」



 まあ、生きている鹿を見たことはないが、正直鹿程度なら簡単な話だろう。

 もちろん、魔法使いだって万能ではない。


 杖を正確に相手に向けないといけないし、実際に動く鹿を見たことはないけれども、彼らが俊敏に動くというなら、かなり狙うのは大変になる。


 奇襲をしかけるとするなら、魔法を使えば楽勝だが、正攻法ではかなり大変だ。

 

 まあ、カイトもいるし大丈夫だろう。



「あのさ、初めてだけどさ、俺色々やってみたいから、ルナは、俺が取り逃がしたのだけ魔法でやっつけてくれればいいから、」



 いつもは結構ふざけている彼だが、今日はかなり真剣な様子だ。


 私は「わかった」と言って頷いたが、いざというときは、私が助けなければ駄目だ。そのための魔法なのだ。


 魔法は円環である。

 相手とつながっていなければ、駄目だ。

 敵とつながるイメージを持たなければいけない。



「あと、間違えて俺に撃たないでくれよって、痛い!」



 私は彼の手の甲をつねった。



「それはやめてってば、」



 こっちは、この前のことを結構気にしているんだから。

 この年になって泣いたのも、結構恥ずかしいし。



「まあ、いつも通りっていうか、なんだろうな、」



 いつも通りなんて、緊張を紛らわす言葉でしかない。

 緊張を紛らわすことが良い行為なのかはわからないが、でも、緊張したままでは何事も上手くいかない気がする。



「じゃあ、私後ろで応援してるから、」



 まあ、少なくともこれで私の気は紛れるだろう。



「取り逃がしたのは、ちゃんとお願いね。まあでも、俺一人で全員やっつけるよ」



 彼の腰には、小さな剣が鞘に入ったまま刺さっている。


 そして、私も今日は、魔法使いらしく、ローブを身に着けて、両手で杖を握りしめている。


 ローブには、相手とつながりやすくなる効果がある。らしい。



「そういえば、どこに行くの?」



 前を歩くカイトに、尋ねる。



「依頼者のところだよ。畑に行くんだ」



 畑か。

 もちろん、パン屋として小麦畑にはいつもいつもお世話になっているわけなのだろうが、見たことはなかったかもしれない。


 いや、おそらくないだろう。



「場所はわかってるの?」



 カイトの歩くスピードは、緊張からだろうか、少しずつ早くなっている。

 私も、彼になんとか歩調を合わせようとすると、カイトが振り返って「あ、ごめん」と言った。



「横に並んで歩くか、」



 そういって、私は彼の横に並んで歩くことになった。

 さっきは少し冗談めいたことを言っていたけれども、どうもかなり緊張しているみたいだ。

 何かしてあげなきゃ、なにかしてあげなきゃ、と私までもが緊張してきた。


 誰に言われたわけでもないが、こんなところでつまずいていたら魔王討伐どころではないだろう。

 せっかく、カイトだって才能があるのだから。


 私は、彼の手を握りしめることにした。



「え、そ、急にどうしたの?」



 びっくりしたのか、彼の動きが止まった。

 私は、ぎゅっと彼の手を握る。



「絶対に、大丈夫だもん!!私は、わかってるから、」



 私は怖くなって、そんなことを口走っていた。

 稲妻が走ったかのように、彼の体が固まる。



「自信を持って!!」



 カイトには、夢を叶えてもらいたいもの。



「ああ、わかったよ」



 さっきよりもガチガチに固まっていたが、私はそれで満足だった。

 しかしまあ、鹿なんだしそこまで緊張することもないだろう。


 そして、そこから畑に歩いて向かうと、畑らしきものが見えてきた。



「あ、そろそろ畑に到着するかな〜」



 黄金色をした何かが、風に揺られてざわめいている。



「すごいね、あれなんだ、」



 私はぐるりと辺りを見回す。

 一面の黄金色。

 その中に、・・・あれ?なにやら茶色いもぞもぞと動く影がある。



「カイト、・・・あれが鹿?」



 私は、隣にいるカイトにも指を指して異変があることを知らせる。

 そして、彼も私が指さした方向を凝視してから、「鹿っぽいね」と言った。


 なるほど。


 まだ距離が遠くて魔法が届かなさそうだが、あれなら簡単なもんだ。



「依頼者の人が見当たらないけど、でも今止めたほうがいいもんね」



 カイトは独り言をつぶやく。

 作戦でも立てているのだろうか。



「よし、俺行ってくるよ!その、大丈夫だから、」



 私は、ついに初陣に出たカイトに「頑張ってきて」とだけ伝えて、魔法がなんとか届きそうな距離まで近づくことにした。

 魔法の届く距離というのは、理論上無限なのだが、やはり正確に狙いを定める技術と、対象とつながるイメージというものの両方ができないといけないので、現実的な距離はせいぜい視界の手前半分くらいだろう。


 もう少し正確に言うなら、遠近法で手が届くところ、とでもいうべきか。

 まあ、ある程度近づく必要があるのだ。

 カイトは、ゆっくりと獲物に近づいていく。


 鹿は、まだ迫りくる危機に気づかずに、のうのうと作物を食っている。 

 彼が鞘から剣を抜く。

 実戦は、当たり前だが初めてだ。

 私は逃げ遅れた獲物を仕留める役割のはずだったのを忘れ、両手で杖を握りしめて、ゴクリとつばを飲んで状況を見守っていた。


 鹿が食べるのを一度止めて、辺りを見回した。

 カイトとの距離は、あと三、四歩程だ。

 それにしても、あんなに近いのに気が付かないものなのだな。


 畑に生えている作物に紛れ込んでいるとはいえ、かなり近い距離だ。


 なんて思っていたら、鹿がまっすぐとカイトの方を向いた。

 カイトも気がついたのだろう。 

 しかし、問題ない。カイトはそこから跳んで一気に距離を詰め、見事に鹿を仕留めた。


 鹿が血を流して倒れる姿は見ていて心地の良いものではないが、それでも、彼が成功させたことは私にとってもものすごく喜ばしいことなのだ。


 私はその場でぴょんぴょんと飛び跳ねて彼を祝福した。

 そして彼も「ルナ!俺、出来たよ!!」と喜んでいるようだった。

 彼の下に駆け寄りたかったが、鹿の死体があるので、「こっち来てよ!!」と言って彼をおびき寄せた。


 そして、手を広げて待ち構えて、彼に抱きついた。


 きっと、大丈夫。魔王だって倒せるわ。


 あなただけじゃない。だって、私もいるんだもん。

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