第25話 ずっきゅん
「あのさ、」
ドキン、ドキン、
「この前はごめん、」
カイトが、そっぽを向いてそんなことを言った。
「・・・その、怒ってるわけではないっていうか、まあ、見られるのは恥ずかしいけどさ」
私は、カイトがそっぽを向いていたので、安心して彼の背中を見ていたが、その背中がくるりと動くのが見えたので、私は急いで後ろを向いた。
「ちょっとさ、こっち向いてよ」
恥ずかしいのに!!
私は彼から顔を背けたままブルブルと首を横に振った。
「じゃあ、そっちまで見に行ってもいい?」
もう一度同じように首を振ったけれども、後ろからカイトの足音が聞こえてきた。
「・・・やっぱりさ、なんか俺達どこかで会わなかったっけ?」
そういって、カイトはこちらまで来ると、身をかがめて私の顔を見ようとしてくる。
「やめて!恥ずかしいの!!」
恥ずかしいと言うこと自体恥ずかしいのだ。
私は、またくるりと向きを変える。
「可愛いと思ってるんだよ」
どんどん体温が上がってくる。脇から汗が吹き出してくる。
「あのさ、ルナは俺のこと好きじゃないの?その、前のことは謝るからさ、」
「・・・なんで、私のことが好きなの?」
別に、これは試すためのセリフではないし、私が自信がないからのセリフ
でもない。
とりあえず、体を冷やす時間が欲しかったのだ。
「可愛いから」
可愛いなんて、親にも言われたことないのに!!
あ〜、熱い熱い!!
「あのさ、俺はルナのことが好きなんだけど、どうすればいいんだと思う?」
なんだろうか、でも、体の中が熱い。いくら表面を冷ましても、中から温められるのだから、きっと意味がない。
「・・・なにそれ、好きなのは好きなんだから、それでいいじゃん」
「俺さ、もっとルナのこと知りたいっていうか、・・・やっぱり見せてほしいっていうか、」
私は、またこいつは私の胸が見たいと抜かすのか、と思い、顔を隠していた手を胸のところまで下げたけれども、今は顔も見られたくない。
「あのさ、知ってる?」
精一杯恥ずかしがっている私に、カイトが話しかけてくる。
「好きな人同士で、どんなことをするか、」
「・・・駄目!!恥ずかしいもん!!」
知らないと思われたら困るが、知っていると思われたくはない。
しかし、そんなことを聞いてくるなんて。昨日に続いて、今日もなのか。
やっぱり、カイトは変態だったのだ。
「俺さ、すごいルナのことが好きなんだよ。その、どうすればいいと思う?」
「そんなの、・・・私は知らないよ、」
カイトは、しつこく私の顔を覗き込もうとしてくる。
私はこんなに恥ずかしいのに、
恥ずかしいのは、私だけなの?
「・・・あのさ、キスしていい?」
「・・ダメ!」
「・・・シていい?」
ほんとに、もう!!
一旦恥ずかしがるのをやめて、カイトに杖を向けた。
「・・・ほんと、やめて、」
もちろん、本当に魔法を使うつもりはない。
ただ、もし、ここでカイトに無理やり押し倒されるなんてことがあっても、受け入れるための準備をしたかったのだ。
「俺、隣に座ってもいい?」
私、今立ってるんですけど、と思ったのだが、カイトはベッドに座って、そして私をその隣に座らせようとしたのだった。
しかしまあ、私は彼の言う通りに大人しく座ってしまったわけだ。
「・・・好きなんだけどさ、どうすればいいのかよくわかんなくてさ、フィンに聞いたら、「そんなの押し倒してしまえばいい」って言ってたからさ、どうしようかなって思って、」
あんな奴に、なんでこんなことを聞いてしまうのだろう。
だから、私たちはこんなところに二人取り残されてしまったわけだ。
しかし、どうもそのお膳立てのお陰でカイトと、・・・その、エッチなことをやったとなるのは、嫌だ!
「別に、好きなんだから今まで通りでいいじゃん」
カイトのことは好きだけど、別に今まで通りでいいじゃん、と思ってしまう。
それってもしかして、変なのかな?
「・・・それだと、なんかもったいないっていうかさ、俺はルナのことが好きなんだもん」
カイトがくるりとこちらの方を向く。
「ルナも、俺のこと好きなんでしょ?」
私は、恥ずかしかったけど、無言で頷いた。
「やっぱりさ、俺達って冒険者じゃん」
そうだ。
命の危険が伴う、危険な職業なのだ。
「今度魔王に会ったらさ、俺達無事に帰れるのかなって思うんだよ」
カイトが、表情を暗くし、少し声色を震わせる。
「・・・だからさ、その、試しておきたいっていうか、・・・あんまりこういうこと言うのは良くないのかも知れないけどさ、不安なんだよ」
私は、・・・不思議と不安ではないのだ。
きっと、ずっと、つながっていられると思っている。
私が、カイトのことを守るから、
「・・・じゃあ、」
私は、スウ、と大きく息を吸い込んでから、「抱きしめてあげるよ」と言葉をひねり出した。
もちろん、恥ずかしかったし、顔から発光しそうなくらい熱くなってたと思うんだけど、それでも、彼が不安だというなら私は彼のために何かしたいと思ったのだ。
カイトも、ようやく恥ずかしそうな表情をして、「じゃあ、こっち来てよ」と言ってきた。
そして、私よりも雄大な体を大きく広げて、「抱きしめてよ」と手を広げたのだ。
私は、彼とは逆で小さく縮こまったまま彼の体に寄り添っていった。
私は、小さく手を広げて、彼の体に抱きついた。
彼の体は、私を包み込めるくらい大きい。
「・・・そんなに、小さかったんだね」
それは、心外だよ。
私だって、頑張ってきたんだしさ、カイトを守ろうと思ってここまで来たんだから。
私は、ギュッと腕に力を込める。
「・・・私が、その、・・・」
私が守ってあげる、と言おうとしたのだが、どうも恥ずかしくてその言葉を発することができなかった。
「・・・そのさ、ちょっと一回離れてみて、」
どういうことだろう、と思いながら私は彼の体から離れた。
「・・・やっぱり可愛いと思うよ」
「・・・恥ずかしいからさ、やめてよ」
私は、彼の顔を見ながらそう言った。
「頑張って魔王を倒そうよ!!」
別に魔王なんてどうでもいいと思いつつも、やっぱり私には自信があったのだ。
それに、彼は親に認めてもらえる冒険者になることが夢なのだから、それに協力したいと私は思う。
彼が両親と冒険に出かけると言ったって、私はいつまでも待つよ。
カイトのために、頑張りたいからさ。
「・・・じゃあ、また明日、」
「あ、・・・ちょっと待ってよ、」
まだ最後の夜だなんていうには早すぎると思ったけど、それでも何かをやり残してから冒険に出かけるのは、絶対にあとで後悔するだろう、と本能的に感じ取ったのだろう。
「・・・どうしたの?」
ベッドから立ち上がろうとしていたカイトが、くるりと私の方を見る。
「・・・見たい?」
「え、・・・・・もしかして、」
カイトからゴクン、というつばを呑む音が聞こえてくる。
私からは、ビクンビクンという血流の音が聞こえてくる。
私は、服の裾を掴んでたくしあげようかと思ったのだが、それは恥ずかしかったから、少しアプローチを変えて、彼の手を握った。
「・・・見るのはやっぱりダメだけどさ、ちょっと力抜いていてよ」
私は震える手で彼のゴツゴツとした手を握った。彼の手は、硬かった。
私が守るまでもないのかな、と思ったが、でも、私だって負けないぞ、と思うことにした。
彼の思いに応えてあげたい。
それに、やっぱり私にはまだわからないけど、もっと心の奥の方に彼を守ってあげたいと思う本当に理由が隠れている気がするのだ。
まあ、そんなのはまた今度でいいわ。
「ちょっとさ、恥ずかしいから目をつぶっててよ、」
私がそう言うと、彼はまたゴクリとつばを飲み込んで目をつぶった。
そして、彼の硬い手を、私の胸に押し付けた。
カイトが目をつぶったまま「柔らかいんだね」というので、私は「バカ!」と彼の手の皮をつねった。
「痛っ」
彼の手を自分の胸に押し付けてみたけど、なんだろうか、自分でやっているからなのか、思うような感覚はなかったのだ。
でも、今までで一番恥ずかしかった。彼の腕から、私の心臓の躍動が私の手の平に伝わってくるようだった。
「・・・動かしてみてもいいよ、」
私は彼の手から自分の手を離した。
すると、カイトは黙って、頷いて、慎重に手を動かした。
彼の指先が、私の胸に食い込んでいく。私はその様子を上からゆっくりと眺めていた。
こんなことをされる、というか私がさせているわけだけれども、油断すると変な声が出ちゃいそうになるし、でも、もう少しそうやっていてほしいとも思った。
すると、彼が指を立ててもっと激しく私の胸を揉みしだいてきた。そして、指先で私の、って
「ちょっと!!」
彼の動きが止まる。
その、そこまでやるのはちょっと、心の準備とかがさ、
「・・・そこから先はさ、その、・・・今後のお楽しみってことで、」
カイトは私の胸から手を剥がして「ごめんごめん」と言った。
「・・・ありがとう!!俺、頑張るよ!!」
私は少し下を向いて「じゃあ、おやすみ」と言った。彼は「おやすみ」と言って私の部屋を出ていった。




