第23話 半廻天
「あの、起きてください。先生!」
「え、・・・あれ、もう朝になったの?」
アッシュくんが私のテントに入ってきて、私の体を揺すっている。
それにしても、だいぶ眠い。何か夢を見ていたような、
「おい、ルナ、行くぞ」
「あ!って、カイトか」
「そうだよ」と照れくさそうに言った。
「お嬢さん、そろそろ出発しますよ」
フィンか。
いちいちムカつくわ。
私は急いで布団から体を引っこ抜き、「ちょっとトイレだけ行っていい?」と聞いた。
「大のほうかい?」
ほんと、朝一番からぶん殴ってやりたいわ。
フィンがニヤニヤとしながらそんなことを聞いてきた。
「うっさい。待ってて!!」
私はどしどしと地面を踏みしめながら森の奥の方に向かった。
後ろを振り返ると、三人が勝手に私のテントの片付けをしていたが、まあ寝坊してしまった手前何も言えない。
とっとと済ませてしまおう。
ちょうど、誰にも見られないチャンスではあるし。
私は茂みに腰をおろし、ズボンと下着をおろした。
「ごめんごめん、お待たせ」
戻ってきたときには、私のテントは小さく折りたたまれていた。
「じゃあ、行くよ。次の街はね、結構頻繁に魔王軍の攻撃を受けているんだって」
次は街なのか。
少し、楽しみではある。
リュックに畳んでもらったテントを詰める。
そして、私はさっきよりも軽くなった体でリュックを背負う。
「じゃあ、また当分歩きだな」
私はカイトの横に並ぶ。
その後ろには、フィンとアッシュくんがいる。
ようやく、パーティが揃ったという感じだろう。
アッシュくんは私の知っている限りの回復魔法は使えるようになったが、まだ実戦の経験がまだまだだ。
まあ、カイトとフィンはもう大丈夫だろう。
私たちが育った街からはだいぶ離れたというのに、ここの道は十分人が安全に歩けるものとなっている。
相変わらず、木ばっかりだ。私はまだ見たことがないけど、海とか砂漠とか、もっと色々な地形があるらしい。
しかしまあ、私は昔から自然はあまり好きではなかったしな。
「長老が言うには、魔王軍はそこにいるって言ってましたけど、」
「でも、こないだの幹部にも嘘つかれたし、嘘というか本当にわかってなかったのかな?そうするとさ、結構どの情報も信じられないよね」
やはり、ある程度の目星はつけておかないと、これからの冒険がかなりキツくなってきてしまう。
せっかく人も揃ったのだから、他の冒険者に追いつかれる前にどうにか魔王のところへたどり着きたいと思うのだが。
道を歩いていると、ときどき私たちと同じような恰好をした冒険者と遭遇することもある。
今、魔王は一番熱い依頼なのだろう。
「魔法でさ、魔王のところまで連れてってくれないの?」
フィンの声が後ろから飛んでくる。
「無理だって。魔法は所詮は人間の力ですから。人間に元々備わっている力なんだから」
私が丸暗記してきた内容を、アッシュくんはこの数ヶ月でかなり頭に詰め込んだのだ。
彼は、魔法を使う才能では私より劣っていても、頑張れる力がある。諦めない力があるのだ。
そんなこんなで、トボトボと歩いていたつもりだったが、一日歩いていれば案外かなりの距離になるもので、私たちは夕方くらいにちょうど次の街リネリンにたどり着いていた。
それにしても、結構小さいというか、明かりは結構灯っているのだが、以前行ったアルネスト街や私の生まれ育った街と比べれば横幅が半分もないくらいだ。
半日くらい歩き回れば全部見て回れそうな距離だ。しかし、他の街と比べて騒がしいというか、街の中に入ってみると、そこかしこに酒場があって、住民たちが元気よく騒いでいる。
「うるさいなっ、ほんとに、」
酒で制御が効かなくなった人間の声というものは、本当にうるさい。
「といあえずさ、泊まれる場所を探そうよ」
酒場もそうだが、街の一番の大通りには屋台なんかも出ていて、そこでも酒を呑んだ大人たちがどんちゃん騒ぎをしている。
喧騒の中、私たちはなんとか宿を探しだし、とりあえず明日から魔王の捜索を始めることにして、各々眠りに落ちた。
(回想)
「だから、俺と付き合ってください!!」
え、・・・・・。
「・・・・・。」
あ、ごめん。その、私さ、海斗のことあんまり異性として意識したことないっていうか、
「・・・いや、」
その、いや、私ずっとこのまま友達でいれたらいいのかなって思ってたからさ、
「・・・もしかしたらあんまり伝わってないのかもしれないけど、俺、ずっと好きだったんだよ。もう、昔っからさ、」
そうだったの?・・・ごめん。
「その、謝らなくていいんだよ。でも、俺は好きだったんだよ。だからさ、もうちょっと考えてもらってもいいかな?」
でも、付き合っちゃったら、なんか喧嘩したりとかあるじゃん。今までみたいではいられなくなっちゃうかもよ?
「大丈夫だよ。ずっと一緒だったんだしさ、今までと何も変わらないよ。ただ、俺はさ、流菜のことが好きだから、それだけはっきりとさせたかったんだ」
・・・わかった、んだけど、・・・もうちょっと考えさせて。あ、そうだね、わかった。今週中までに考えるから、その、
「・・・わかったよ。大丈夫、俺待ってるから、」
でもさ、付き合わなくても私、海斗と一緒にいたいっていうか、今までの関係のままがいいっていうか、
「・・・俺、好きだからさ、考えてよ。それで答えを出してくれればいいからさ、」
・・・・・・わかった。




