第19話 師
「おい、ガキが来たぞ!!」
フィンがくるりと振り返って私たちにそう言った。
そして、フィンは扉の前に立っていた男の子の手を引っ張って中に連れてきた。
男の子は、だいたい十歳くらいだろうか?
金髪碧眼のおかっぱ頭で、部屋に入ってくるとモジモジとこちらを見ていた。
「こいつが、一緒に冒険したいんだと」
そういって、フィンは彼の頭をポンポンと叩いた。
ほんと、こいつは雑で困る。
私は、男の子の隣に行って彼と目線が合うようにしゃがんでから「どうしたの?」と彼に声をかけた。
すると彼は、私の目を真っ直ぐと見て「一緒に冒険させてください!!」と力強く宣言した。
「えっと、とりあえず話を聞かせてよ」
というわけで、私たちは彼を椅子に座らせて話を聞くことにした。
「その、俺アッシュって言います。ずっと、長老から勇者様のお話を聞いていて、それで憧れてたんです。で、さっき長老の家で話をしていたのをこっそり聞いていたんですけど、その、えっと、カイトさん?ですか?」
「カイトは俺だけど、」
「あ、あなたなんですね!その、俺も勇者様をサポートできるような冒険者になりたいんです!!」
勇者になりたいではなく、勇者のサポートをしたい、か。
健気な男の子だ。それに、どことなく私に似ているような気もする。その、私もカイトのサポートをしたいと思ってこの冒険についてきたわけだからな。
「それで、勇者様たちは、何十人という魔王軍を四人で蹴散らしたって聞いてます!それで、俺も強くなりたいっていうか、勇者様の役に立てるような冒険者になりたいって思ったんです。それで、皆さんのパーティに入れてもらいたいなって、」
「・・・えっと、アッシュくん?君はいくつなの?」
「今、十歳です」
私の予想は当たっていたみたいだ。
「十歳か、・・・でも、俺達も初めて冒険に出かけたのは十歳だったもんな」
そういえば、そうだったな。まあ、冒険を初めて依頼を色々とこなす中であまり苦戦をしたことがなかったから、彼がこれから悩みなどにぶち当たったときに役に立てるかどうかはわからないけれども。
「おい、ガキ。お前、一緒に来たいんだろ。じゃあ、魔法を覚えろ!」
昼間は子どもたちと楽しく外で遊んでいたくせに、なんでこうも横柄な態度を彼には取るのだ。
私はフィンの頭をパシッと叩いてから、「こいつのことは気にしなくていいから、」と言って彼に笑いかけた。
「いやさあ、回復やってもらえばいいじゃねえか。ルナちゃん、教えられないの?一応使えるんでしょ?」
フィンは、私に叩かれた頭を撫でながらそういった。
そういえば、回復がほしいということは常日頃考えていたし、他の皆も同じことを思っていたと思う。
私は、超初級の呪文しか唱えられないが、一応、教室にいたときに必死で暗記したことはまだ忘れていないからな。
「でも、魔法って才能が必要なんだよ。カイトも、使えなかったんだし、それに今までの冒険とかギルドで魔法使いに会ったことってある?」
私がそう言うと、フィンは「そういえば、あの幹部くらいしか魔法使なんて見たことねえな。あ、ガキの頃に一人会ったことがあるけど、まあ、あいつが今何をしているかなんてわかんねえし」と言った。
するとカイトが、「でも、試してもらえばいいじゃん」と言った。
「まあ、そうだね。じゃあ、アッシュくん。魔法を使ってほしいんだけど、じゃあ、」
そういって、私は自分の杖を取り出した。
彼と一緒に屋外に出た。
フィンとカイトも一緒についてきた。
『魔法っていうのは円環なんだ。相手とも円環でつながっている。魔法の発生源である自分の体、手と、それを相手に向けるための杖。そして相手の体と、そこから魔力が自分の体に戻ってくるための地面。これが、円環となってつながっているからこそ、魔法が発動するのだ』
という教室でアルカナム先生から教わったことを思い出し、それをまるまる彼に伝えた。
彼は、ポカンとしていたが、私は「とりあえず、ものは試しだよ」と言って彼に杖を持たせた。
近くに、何か燃やしても問題の無さそうかつある程度の大きさのものがないか探すと、ちょうど家の近くに切り株があった。
これでいいだろう。
「えっとね、アッシュくん。その杖をあの切り株に向けてみて」
アッシュくんは私の言われた通り、杖を切り株に向けた。
一応、私がちゃんと狙いが定まっているか彼の肩に顔を乗せて確認する。
よし、問題ない。
「じゃあ、そのまま「フレイ」って言ってみて!」
「え、えっと、フレイ!!」
すると、切り株の上部、年輪の見えている部分が燃え出した。
アッシュくんは、それを見て一瞬ビクンと肩を震わせた。
しかし、これは才能がある、という証拠だ。
少なくとも、魔法使いとしてやっていくことができる。
すると、カイトとフィンがこちらにやってきて「やるじゃねえか!」と言ってアッシュくんの背中をパチンと叩いた。
アッシュくんは痛そうにしながらも、「ほ、ほんとですか?」と嬉しそうに笑っていた。
私も、アッシュくんの下に近寄って「すごいよ!!才能あるよ!」と言って彼の頭をゴシゴシと撫でた。
「じゃあ、もう一回杖を構えて「アクア」って言ってみて」
このまま、切り株が燃えたままでは困るからな。
アッシュくんが先程と同じように杖を切り株に向けて構える。
そして、そのまま「アクア」と呪文を唱えた。
すると、切り株の炎は、少し弱まった。
まあ、これは呪文の方に問題があるだけで魔法を使うことには成功しているのだ。
すると、フィンが「あれ、呪文唱えたんだよな?」と言って少し心配そうにこちらを見てきたので、「これでいいんだよ」と答えてあげた。
そして、アッシュくんにも「大丈夫。今の君の魔法で、切り株が少し濡れたから成功はしているんだよ」と言ってあげた。
そして、私は急いで切り株のところに向かって「フレイ、アクア」と呪文を唱えた後「ウィンド!!」と呪文を唱えて炎を吹き消した。
「じゃあ、アッシュくん。これから、特訓してあげるから、ちゃんとついてくるのよ!!」
すると、彼が少し緊張した面持ちで、でも、大きな声ではっきりと「はい」という返事をした。




