とある赤ちゃんの話 あかちゃんタイム
窓の外には、まっ白い雲が流れている。
◆
これじゃまるで牢屋の中だ。
1メートル四方の格子で囲まれた中に、布団だけが敷かれている。
そして、ボクは力無く、ソコに寝るしかないのだ。
何故ならボクは今、赤ん坊なのだ。
勘違いして欲しくないのだが、そういうプレイをしている訳ではない。
いやむしろ、そうであれば どれだけ良かった事か……。
しかし、何故だろう……布団の上に寝ていることに、凄く慣れている感じもする。
でも、自分にそんな過去があるとは思えない。赤ちゃんだもの。
◆
ボクの隣には、もう一人赤ん坊が寝ている。
黒髪・黒目で、何やらバブバブ言っている。正直何言ってるか分からない。
その癖、やたらと泣くのだ。しかも耳元で。そして隣には逃げれないボク。こんな状況だとこっちまで泣きたくなってくる。
でもまぁ察しは付く。 ボクは双子なのだ。
だからボクも同じく黒髪・黒目なのだ。きっとたぶん。
◆
ここに寝てから、四種類の人間がやってくる。
◆
一人は黒髪の女性。
いつもボク達と一緒にいる。
ボクにおっぱいをくれる。
多分お母さん。
たまに独り言を呟く。
何故かその言葉をボクは理解できる。
だからその言葉通りにする。
おっぱいをいっぱい飲む。
大きなおっぱい。
大きなおなか。
大きなおしり。
優しい顔。
誇らしい顔。
◆
一人は、おっさん。
細いピーマンのような顔。
妙にデコボコしてる顔が変。
痩せこけている。
何か言っている。
何を言ってるのか全然解らない。
銀色の髪に、銀色の髭。
口髭があまり似合ってない。
額に宝石が光ってるサークレットが綺麗。
多分お父さん。
たまに、ボクを持ち上げる。
だけど、すぐお婆ちゃんに手渡す。
でも、優しい顔。
誇らしい顔。
◆
一人は仮面の人?
仮面みたいな人。
顔が動かない。
額に宝石が光ってる。綺麗。
お父さんの額にも同じ色の宝石のサークレットがある。綺麗。
何も喋らない。
息をしてるのかも怪しい。
耳が長い。
尖っている。
多分女性。
服が女性服だから。
でも、男かもしれない。
そういう趣味かもしれない。
◆
一人は、お婆ちゃん。
ピーマンのような顔のお婆ちゃん。
妙にデコボコしてる顔が変。
あの顎に見覚えがある気がする。
でも思い出せない。
何を言ってるのか全然解らない。
ボクのオシメを替えてくれたりする。
お父さんの母親かと思ったけど、何か違うみたい。
お父さんが厳しい顔で何か言うと、頭を下げる。
でも、優しい顔。
誇らしい顔。
◆
他にも人は来る。
みんな良い服を着ている。
良い服すぎる気がする。
父親と母親の服は金や銀の刺繍がいっぱい。
ちょっと趣味が悪い。
おばあちゃんの服は黒い。
仮面みたいな人達の服は、額の宝石に似た色。
この人たちが一番趣味が良い気がする。
でも、男かもしれない。女服を着ているだけかもしれない。
昔の西洋のお城に住んでそうな服。
凄く窮屈そうな服。
◆
ボクは喋るのが苦手だ。
なんとなくそんな気がする。
何故かは分からない。
母親の言葉は理解できるのに、父親の言葉が理解できないから、そう思うのかも?
なんか違う気がする。
理解は出来ても、喋れないから?
なんか違う気がする。
あぁ、まだボクが赤ん坊だからか……。
簡単な事だった。
昔の記憶が無い。
赤ん坊だもの、昔なんか無い。
あ、うんこでそう。
とりあえず泣くか。
「おんぎゃーーーーーーー」
ちょっとアザトい?
すると隣の赤ちゃんも泣きだす。
「おんぎゃーーーーーーー」
泣き方がナチュラルだ。
あ、お婆ちゃんが来た。
えい!
気持ち悪い時間は短い方が良いに決まってる。
◆
ボクの目の前を、雲が流れる。
あぁ、多分おねむの時間だな。
窓の外を見ると、遠くに雲が流れる。 雲に鳥の影が走る。
ボクはボクの心に囁く。
【眠れ】
これ……で、すぐに眠……れ……る――
◆ 時は流れ ◆
ボクが卒乳する頃、お母さんがいなくなった……。




