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召喚

 石の壁。

 高い天井。

 冷たい床。

 薄暗い室内。


 見た事の無い模様の機械?家具?道具?壺?皿?コップ?


 知らない人、人、人、人、人、人、そして近くのナミ。


 知らない人達は、何やら喜んでる。


 ここは……どこだ?


 あたふたするナミ。 フフフ、そんなナミを久しぶりに見たよ。

 もう一人のオレは、寝ている様に倒れている。いや、目は開いている。生きてはいるはずだ……でも、まるで魂が抜けている様だ。


 あれ?ダメだ。今度はボクの息が苦しい……。

 長年着けてた人口呼吸器が口元に無い……。 フフフ、なんだか口元が寂しいのが、逆におかしい。


 ナミが僕を抱える。


 ナミが何か必死に言ってる? でも、聞こえない。

 オレに何か必死に言ってる? でも、聞こえない。


 でも、だから僕は叫ぶ。

「ナ…ジ…ミ……」

      ―― ありがとう ――



 そして僕の意識は、白い――






 ◆ SIDE ピーマン ◆


「おぉ! 成功でおじゃる!」


 異世界からの知的生物転移。 それが今回の実験の目標だ。


 勿論、無条件にではない。

 ある目的の為に、『魔素(まな)』を体内に多く持つ者をターゲットにしたものだ。

 その為に複雑な魔方陣や魔導具が、床、壁、天井、壺、水筒、樽、コップにと所狭しと設置されている。


 しかし、まだまだ試作段階。 初回で成功するとは思ってなかったのだ。


「古から伝わる この魔方陣が、こうも容易く成功するとわな。」

 その言葉は感嘆というよりは、むしろ厭きれ。


「こちらの白い衣(ころも)を着た者は、何者でおじゃる?」

「ここまで白い衣とは……」

「女子(おなご)のようじゃの。異世界の聖女ではおじゃらんか?」

「あの恰幅(かっぷく)は王族の可能性もあるでおじゃる。」

「王族を呼ぶのは問題でおじゃる!」

「そう結論を急(せ)くでないゎ」


 実験の成功に沸き立つ6人の者達。 それが全員、女であることは、声質からなら判るだろうか。


「で、そちらの倒れている者達は何でおじゃる?」

「息はあるようじゃが。」

「転移に耐えれんかったかのぅ?」

「転移の失敗かぇ?」

「陣の見直しをしてたもれ。」

「そう結論を急(せ)くでないゎ」


 細長い顔の女達は、実験の成果に姦しく喜んでいる。

 特に倒れている者達に対して、気遣いがあるわけでは無さそうだ。


「とりあえず、女子(おなご)と会話はしてみるかの?」

「会話は重要でおじゃる。」

「言葉は通じるのかぇ?」

「言葉が通じたるならば、失敗ではないかぇ?」

「また失敗なのか?!」

「そう結論を急(せ)くでないゎ」


 転移実験をした。 そしたら三人来た。 一人は元気そう。 だから実験は成功。 それだけの事。

 倒れている者を助けようとはしない。 何故なら、それは実験の趣旨から外れるから。



 そんな彼女達をこの世界の人々はこう呼ぶ。


 『聖女』


 と。


 ◆


 後に白い衣の女性……ナミは、その女達の顔を見てこう思ったと言う。


 ―― ピーマンみたいな顔 ――


 と。


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