病床2
―― 10年後 ――
はい、ボクは生きてますよ。
かなり科学と医学の進歩に支えられてます。 最近の医学では、そうそう人間は死なないようです。
とは言え流石は『不治の病』。病気は治ってもいないんですがね。
とある県立病院の五階の病室。 窓から見える景色はかなり変わった。
駅前ということもあり、この病棟より大きなビルやマンションが、あちこちに建っている。
ちなみに『木の葉占い』の樹は数年前、葉が落ちきる前にポっきりと切り倒されてしまった。 なんかゴメン。
◆
今日もナミが病室に入ってきた。 でも今は昔と違い白衣を着ている。
まぁ……やっぱり看護婦ルックだけどね。 やっぱり医者にはなれなかったよね。
男女平等が叫ばれる昨今、男女共に白衣はズボンの看護師スタイルの世の中で、ナミは昔ながらの看護婦衣装だ。
どうもボクの為に、その恰好をしてくれているらしい。
ボクの好みに合わせてくれるなら、そのボンっボンっボンのスタイルをボンっキュっポンにして欲しい。 (が、勿論言葉にした事はない)
どうもボクが大きな胸が好きだと思い込んでいるらしい。 いや好きだけどね。 何かが違うんだ。 (が、勿論言葉にした事はない。)
ボクのいる病院に就職して、ボクの面倒を見てくれている。 そんな彼女に対して、言葉に出せない事は多い。
ナミは笑顔で言う。
「おはよう」
ボクは言う。
―― おはよう ――
ナミはボクと目が合うとにっこりと笑う。そして、ボクと繋がっているボクの生命維持装置の確認を始める。
毎日のルーチンワーク。
本当に大変そうだけど、ボクには彼女を見ている事しか出来ない。
毎日、感謝しかない。
◆
「よう、オレだ。十六夜だ。」
そう言って、もう一人のボクが入って来た。
ボクはオレに言う。
―― よう 久しぶりだな ――
手荷物はない。 (すなわち土産はない)
ナミは言う。
「イザヨイって誰よ。」
オレは言う。
「覚えてない? オレが昔名乗ってた眞名を。」
ナミは言う。
「覚えてるわけないでしょ。」
ナミは覚えて無いようだけど、ボクは覚えている。
つい此間の話だ―― 確かあの時、ボクはこう言った。
「じゃぁ、ボクは十五夜だね」
するとオレは言った。
「お前は十七夜だろ。」
その時のボクは言った。
「きっとボクの方が先だから十五夜なんだよ」
するとオレは言ったんだ。
「十七夜の日に、月に願うと何でも願いが叶うんだよ。だから『十七夜』で『かなう』ってよむんだぜ。だからお前は十七で良いんだよ。」
ボクとオレは双子の兄弟だけど、どちらが兄・弟という訳じゃない。親はそういう上下関係が嫌いなのだ。
でも、コレを認めると弟に認定されそうだな。
悪ふざけが好きなオレだけど、悪い奴じゃない。 こう見えて、今も薬学を学んでいるのだ。 勿論、ボクの為だろう。
◆
ある日、オレは言った。
「ミーコが死んだよ。」
猫のミーコ……まだボクが元気だった頃、三人で育ててきた子猫達の一匹。
タマ、ミーコ、サブロウ。他の二匹は既に死んでしまってた……一匹だけ長生きしてたんだけど……
三人とも猫が好きだった――けど、特にオレは猫が好きだったな。
でも、もう多分――ボクが猫を飼うことはないだろう。
◆
ボクはビックリした!
オレは言う。
「ナミが妊娠した。オレの子だ。」
妊娠5カ月だそうだ。 ナミの恰幅の良さが、妊娠を分らなくさせていたようだ。
オレは言う。
「女の子だってさ……名前は舞にしようと思う。まぁ変わるかも知れないけどな」
舞か……イザヨイじゃなくて良かった……。
オレは言う。
「式も急いで挙げるよ。」
幼馴染との恋愛や結婚は、あり得るようだ……
ミーコが死んで、寂しくなって……と言うこともあり得るな。
だけど、ボクは笑顔で二人に言う。
―― おめでとう ――
◆
三人での会話。
退屈を忘れさせる時間だ。
何時もの時間――のはずだった。
そう、この瞬間が来るまでは……。
突然、病室が白い光に包まれ、三人はその光に飲み込まれる――
あぁ、コレが『お迎え』というやつかな?
コレでやっと……
「え?」
「なに?」
あれ?三人?




