■06人身売買グループの摘発・・という名の殲滅
さて、おばちゃんずの後を追ったのはいいが、ここでレオパルドは驚愕の事実を知る。
そう、実はレオパルドはおばちゃんたちを普通の女性と思っていたのだが差にあらず。なんとその脚力は相当なもので、レオパルドは追いつくどころか引き離されてしまったのである。
「まっ、マジか?俺だって脚には結構自信があるんだぞ?いくら知らない地だからって置いて行かれるってどうなってるんだ?」
そんなレオパルドの独り言に後ろを走る若者が答えを示してくれた。
「あーっ、ギルド長。あの人たちって現役の冒険者パーティだから。ランクこそこB級だけど、それは昇格試験を受けないからであって実力はS級だから。最近もAランクドラゴンをあっという間に捕縛してるから。おばちゃんと侮っていると失敗するよ?」
「マジか?『ストリング・カルテット』って冗談じゃなくて本物だったのか?」
「マジもマジ。だから本来なら俺が付いて行く必要も無いんだけど、まぁ、屍を放置すると腐って魔物を呼び寄せたりするから、埋設用の穴掘り要員として出向くだけさ。」
そう言いながら青年は手にしたスコップをレオパルドに見せてきた。
うん、当初レオパルドはそれを打撃用の武器として青年が持ってきたと思ったのだが、本当に穴を掘る為だけに持ってきたらしい。
とは言え内容が凄すぎて、逆にレオパルドには嘘っぽく聞こえてしまった。まぁ、所謂『盛った』というやつだ。
いや、話半分としても盛り過ぎな話だったので、この件でレオパルドを責めるのは酷だろう。
だって彼女たちは『おばちゃん』なのだぜ?何処の世界におばちゃんが活躍するアニメがあるって言うんだよっ!
だが、レオパルドのそんな怪訝もおばちゃんたちに遅れること数分、漸く犯罪者たちが根城にしていたはずのダンジョンに着いた時には納得せざるを得なかった。
何故ならば20数人はいたであろう武器を手にした犯罪者たちの死体がダンジョンのあちらこちらに散らばっており、中には黒焦げになっている死体も数体あったからだ。
たった数分・・、その間に『おばちゃんず』、いや『ストリング・カルテット』は全ての犯罪者を地獄の裁判所に送ってしまったらしいのだ。
「ゲロゲロ、マジか?幾らなんでも手際が良過ぎないか?こんなのアニメで放送したら無双過ぎるって苦情が来るぞ?」
いや、なんでここでアニメの話が出てくるかな。でもブルース・リーはひとりでこれくらいの人数の悪役を倒していたけど苦情はこなかったらしいぞ?
いや、この例えは駄目か。そもそもブルース・リーが誰なのかを知っている子が今はいないもんな。
とは言え、レオパルドが見ていないからと言って『ストリング・カルテット』の戦いぶりを説明しないのもあれだろう。
なので時間を少し巻き戻して『おばちゃんず』がここに来たところから場面を見てみよう。
さて、辺りはもう暗闇に包まれていたがおばちゃんたちは地面から飛び出している木の根っこに足元をすくわれる事もなくロゼが連れ去られたと思われる廃ダンジョンの入り口まで走ってきた。
そして入り口に見張りの姿を見ると、歩みを止めて茂みから様子を伺った。まぁ、これは呼吸を整える時間稼ぎでもあるようだ。
そう、如何に驚異的な実力を持っている『おばちゃんず』でも数キロの山道を全力疾走しては息が上がるのだろう。
だが、そんな準備時間もダンジョンの中からロゼが飛び出してきた事により終わりを告げる。
そう、どうやらロゼは監視の隙を窺って果敢にも脱出を試みたようなのである。だが、両手を縛られた状態で走ったので小石に躓いた時にバランスを崩してしまいダンジョンの入り口で転んでしまった。
そして追って来た男たちに呆気なく捕まってしまったのだ。そして油断からロゼを逃がしてしまった男たちは、その怒りをロゼに向け、倒れているロゼを思いっきり足蹴にしたのである。
「このアマっ!いい加減しやがれっ!面倒をかけさせるなっ!」
「がはっ!」
男に腹部を蹴飛ばされたロゼは苦しそうに体を丸めた。その光景を目の当たりにしたロゼの母親は一気に頭に血が上ったようである。
なので茂みから飛び出すと一目散に男に詰め寄り、最大威力で賢者の衝撃攻撃魔法である『ドシン』をぶつけた。
哀れ、S級の威力がある『ドシン』をぶつけられた男は吹き飛ぶどころか、細胞ひとつすら残さずに消滅してしまった。なのでもうそこに男がいた事を示すのは残された血霧の匂いだけだ。
だが、その光景を見たにも関わらず、他の犯罪者たちはその威力が理解できなかったらしい。なので仲間が一瞬で消えてしまった事を訝りながらもロゼに駆け寄るトロワに向かって剣を振り上げてきた。
しかしこれもまた不発に終わる。そう、今度は魔法使いであるシャンセの火炎魔法『アチチ』が男たちを襲ったのだ。
哀れ、火球に飲み込まれもだえ苦しむ犯罪者たち。さすがにこの光景を見た生き残りの男たちは恐怖を覚えたのだろう。なので我先にと逃げ出そうとした。その中には犯罪者の元締めらしい男もいた。
だが、そんな犯罪者たち対して聖女であるブランシュの拘束魔法『慈悲の呪縛』が襲い掛かった。
これにより犯罪者たちは見えないロープに縛られたかのように身動きが出来なくなってしまった。
そんな犯罪者たちに対して勇者エレベが長剣を鞘から抜き放ち、ひとりひとりに話しかけた。
「ちょっと、あんたらってなんなの?どうしてロゼをさらったの?」
「しっ、知らないっ!俺は金で雇われただけだっ!」
「あら、そうなの?ならば用はないわ。」
そう言うとエレベは真一文字に男の首を刎ねた。哀れ、首無しとなった男は、それでも拘束魔法によって立ち続け、今だ動き続けている心臓が首から鮮血を吹き上げ続けたのであった。
そんなやり取りを数人続けて漸くエレベは元締めらしい男を見つけた。
「ねぇ、知っている事を洗いざらい喋ったらあなただけは見逃してあげるわ。どうする?」
エレベは動けない男の首筋に剣先を突きつけながら質問をする。そんな恫喝に男は呆気なく情報をゲロした。
「おっ、俺たちは『まお~ん』の人身売買グループから依頼されて子供たちを集めていただけだ。」
「ふ~ん、『まお~ん』ね。で、ロゼの他にさらった子はいるの?」
「こ、ここでの仕事はあの娘が最初だった。なので他にはいねぇ。」
「そう。で、予定数が揃ったらどこに連れて行くはずだったの?」
「そ、それは。その時々で色々だが、今回はカンボチャ王国が集積場所だった。そこから各国の闇奴隷市場に振り分けられるはずだったんだ。」
「あっそ。」
その後もエレベは男から様々な情報を聞きだした。そしてもう引き出せる情報がなくなるとニコリと微笑んでブランシュに男の拘束を解くように言った。
その後、体の自由を取り戻した男は一目散でその場を走り去ろうとしたが、そんな男の背中に賢者トロワの衝撃攻撃魔法『ドシン』が襲い掛かる。
ぽん。
哀れ、S級の威力がある『ドシン』をぶつけられた男は吹き飛ぶどころか、細胞ひとつすら残さずに消滅してしまった。なのでそこに男がいた事を示すのは残された血霧の匂いだけだった。
そんな男の残り香を嗅ぎながら、エレベは今はもういない男に向かって言い放つ。
「まっ、私は見逃してあげると言ったけど、他の仲間たちもお前を見逃すとは言ってないからね。なので私は約束を破ってはいないわ。」
成る程、そうゆう理屈ですか・・。まぁ、言い分としては合ってますね。
と、ここまでがレオパルドが到着するまでの顛末である。うん、『おばちゃんず』侮りがたし。確かにこれはB級レベルの技能ではないな。と言うか、エレベたち普段の雰囲気と全然違うんですけど?
まぁ、今回は身内を危険な目に合わせられたからね。なのでエレベたちも多少頭に血が上っていたのかも知れない。
まっ、なんにしてもこれで明日レオパルドがダンジョンを調べる理由はなくなった訳だ。
いや、犯罪者が持ち込んだ証拠物件の押収とかの仕事はあるか。それに死体も埋めなきゃならないからね。
うん、やる事がいっぱいだっ!全く迷惑なやつらだぜ、悪の組織『まおーん』はっ!




