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■05歓迎会と余興

さて本日の業務が終了した受付ルームでは、既にパートのおばちゃんたちと近隣の住人たちが準備を整えレオパルドを待っていた。

まぁ、近隣の方々に関しては新任ギルド長であるレオパルドの顔見せと、パーティのにぎやかし要員という意味があるのかも知れない。


そして、それらの人々の中にはまだ幼い子供もいた。レオパルドはその事がちょっと気になったようだが、まぁホームパーティと思えば子供がいてもおかしくはない。

つまりエッセニア支部はアットホームな職場環境という事なのだろう。

で、その事をエレベに聞くと然もありなんな答えが返ってきた。


「あーっ、紹介させて下さいね。まずあの小さい女の子と男の子はシャンセの子供たちです。その奥で料理を前にしてよだれを垂らしているのがブランシュの次男。その対面で女の子とお喋りをしているのがブランシュの長男で、その相手をしている女の子がトロワの次女です。そして壁際で給仕をしているのが私の子供たちとトロワの次男ですわ。」

エレベの説明にレオパルドは本当にアットホームな職場なんだなと思った。もっともこれはエッセニア支部の規模が小規模だから出来る事だろう。

さすがに大所帯なハイファーン支部やエンゲージ支部でこのようなパーティは無理だ。


なのでレオパルドは簡単に着任の挨拶をしただけで後は無礼講とし、その後は来てくれた人々それぞれに個別に挨拶をして廻った。

そして言葉を交わし、更にお酒が入った事により緊張が解けたのか、来場者たちからレオパルドに対して様々な余興が繰り出され始めた。


そんな中で一番ウケたのがおばちゃんたちによる寸劇。その名も『冒険者パーティ ストリング・カルテットの大冒険』である。


「こら、悪代官っ!王家の方々は騙せても、お天道様は見ていらっしゃるのよっ!なので私たち『ストリング・カルテット』が月に代わってお仕置きしてあげるっ!」

いや、そこは『月』ではなく『お天道様』じゃないのか?えっ、オリジナルを尊重したの?あらら、そうですか。

そんな『ストリング・カルテット』の決め台詞に対して、悪代官も定番の台詞で応戦したきた。


「むむむっ、バレてしまっては致し方なしっ!曲者だっ!者共であえっ!」

悪代官役に扮したエレベの長男が叫ぶと、竿に貼り付けられた多分子分たちを表しているのだろうへろへろな案山子を肩に担いだシャンセの子供たちが奥から出てきて悪代官の前に整列した。

その愛らしい姿に観客たちは拍手喝采である。


「くっ、子供を盾にするとは卑怯な。」

子供たちの出現に手出しが出来なくなった『ストリング・カルテット』だが、そこに救世主が現れた。そう、エレベである。

因みにエレベはこの劇ではひとり二役を演じているらしい。うん、演出が凝っているね。もしくは人手不足なのか?


じゃじゃ~んっ!

「ひと~つ、善良なる民に重税を課し、ふた~つ、自分たちだけは酒池肉林の贅沢三昧、みっつ、醜い浮世のアホを、成敗せよと天が呼ぶ!俺は正義の宇宙戦士、超仮面マン33号っ!」

いや、なんか色々混じっている気がするんだが、気にしないでおこう。多分この世界での定番キャラクターだと思うから。


実際、超仮面マン33号の登場に観客たちからは「待ってましたっ!」の掛け声が飛んだ。

そして逃げ回るシャンセの子供たちを超仮面マン33号は「悪い子はいねかぁ。」「泣ぐ子はいねがー。」「怠け者はいねがー。」「親の言うこど聞がね子はいねがー。」と言いながら追い掛け回した。

いや、追いかけられたのはシャンセの子供たちだけではなかった。それこそそこに集まった全ての観客たちが「深酒してねぇかー。」とか「おっかぁを泣かせていねかー。」とか言われて改心を求められていた。

因みにレオパルドに掛けられた言葉は「彼女はいんのかぁ。」であった。それに対してレオパルドがしょんぼりしながら「いません・・。」と応えると、どっと笑いの渦が巻き上がり、ならばと今度は何処そこの娘は働き者だぞとか、いや、あそこの娘の方が器量よしだなどとアドバイスが飛び回った。


まぁ、つまりドタバタになったのである。そして寸劇がうやむやの内に終わると、今度は本格的な飲み会となった。

まぁ、その間にも飛び入りで歌や踊りが繰り出され宴は盛り上がった。


しかしそんな喧騒の中、着替え終わったエレベは来場者の中にトワロの長女がいない事に気づいた。そしてその事をトワロに問い質す。


「ねぇ、トワロ。ロゼの姿が見えないんだけど、どうしたの?」

「あーっ、結構人が来てくれたからお酒が足りなくなるかも知れないんで買出しに行かせたの。なので直ぐ戻ってくるはずよ。」


「そう、でもひとりでは大変なんじゃない?もう外は暗いし。」

「お酒は酒屋の息子に持たせるはずだから大丈夫よ。でもあの子って酒屋の息子に気があるらしいからお喋りに夢中になって遅くなるかもね。」


「そう、ひとりでないなら安心ね。でも気をつけないと。さっきギルド長にも報告したけど怪しいやつらが付近に出没しているらしいから。」

「ははは、それを言っちゃうと酒屋の息子が一番危ないんだけどねっ!でも確かに遅いわね。あらら、本当に酒屋の息子に襲われちゃったのかしら?」

まぁ、口ではそう言っているが本気ではないらしい。だが、口は災いの元という戒めもある。そして残念ながら今回、その危惧が現実化してしまった。


どんっ!からんからんっ!


乱暴の冒険者ギルドの扉が開け放たれるとひとりの青年が受付ルームに飛び込んできた。

そんな青年の顔は誰かに殴られたのか赤く腫れあがり、口元からは血を流している。そして青年は床に倒れこみながら叫んだ。


「はぁ、はぁ・・、トワロさんっ!たっ、大変だっ!ロゼがさらわれたっ!」

青年の叫びにその場にいた全員が入り口の方を見る。だが殆どの人はお酒が廻っていたので青年が言った言葉を直ぐには理解出来なかったようである。

しかし娘がかどわかされたと告げられたトワロは別だ。青年の下に駆け寄ると胸倉を掴んで「どうゆう事?いつ、どこでっ!」と詰め寄った。


「はぁ、はぁ・・、俺って丁度酒場に酒を届ける用事があったんで、ロゼも一緒に付いて来てくれたんだ。だけどそこでガラの悪い連中にロゼが絡まれちまって、俺ロゼを逃がそうとしたんだけど負けちまってロゼが連れて行かれちまったんだっ!ごめん、ごめんよ。本当ならば喰らいついてでもロゼを逃がさなきゃならなかったのに・・。」

いや、見たところ青年もかなり抵抗したはずである。でなければこんなに体中傷だらけになる訳がない。

だが、今のトワロにとって青年の事よりも娘の方が大事だった。なので青年からもっと情報を聞きだすべく迫った。


「そいつらは何人?どっちに向かったの?」

「ご、5人はいたと思う。ここいらでは見たことのないやつらだった。そしてやつらは三角山の方へ向かっていた。」

青年の説明にレオパルドは先ほど猟師から聞いた情報を思い出していた。ただレオパルドはまだこの辺の地理に詳しくなかったので、その事をエレベに問い質す。


「エレベさん、今出てきた山って、ちょっと前に猟師の方から聞いた廃ダンジョンがある山の事かな?」

「そうですね、そしてそいつらは本部から通達のあった成りすまし詐欺集団の線が濃厚です。」


「あーっ、やつらって人攫いもするって言っていたからね。となるとこうしちゃいられない。折角の歓迎会だけど僕はそいつらを追跡しなきゃならない。なので後は任せていいかな?」

「いえ、この地の地理に疎いギルド長は足手まといになるのでここにいて下さい。追跡は私たちがやりますから。」

そう言うと、エレベは他の3人に目配せしてぱんぱんと手を叩いた。


「ごめんなさいね。ちょっとヤボ用ができました。なので歓迎会はここでお開きにします。あ、料理とお酒はまだあるので皆さんはギルド長と引き続き会食なさっていて下さいね。ただ私たちはちょっと出かけてきます。」

そう言うとエレベたち『おばちゃんず』は、シャンセが武器庫から出してきたらしいそれぞれの得物を手に三角山へと駆け出した。

エレベに足手まといになるから残れと言われたレオパルドも、はいそうですか、という訳には行かずにおばちゃんたちの後を追う。更にはお客の中からも数人の男が席を立とうとしたが、そいつらは既にお酒が入っていたので周りから止められた。

ただ、ひとりの若者だけは飲んでいなかったらしくレオパルドの後を追ったのだった。

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