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ボールドウィン・ストライカー  作者: 三重野 創


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トータルベースボール

「そんな言葉あったかしら?」

 リーナにとって、幼なじみが日本代表になっているのは、どんな気分だろうか。


「だって全員野球っていうじゃん」

 ビジネス用語にも存在する。

 ノボルはサッカーが本職だが、他のスポーツもそつなくこなす。


「団体競技はそうならざるを得ないわよね」

 よく二人で一緒にいるが、家が隣同士だからという以上に深い意味はない。


「個人で目を見張るような好成績をあげても、それがチームの成績に結びつかないのは本人も歯がゆいと思うよ」

 ノボルは得点もアシストも上位にランクインしている。そしてそれがチームの勝ち数にも直結していた。


「中日が今年はいい線行ってるんだけど、あともう少し爆発力が欲しいところなんだよ」

 サッカー選手が野球をやってみるのは良いリラクゼーションになるし、新たな気づきが生まれる。


「わたしが思うに中田さんを4番に据えるのがいいと思うわ」

 いろんな選手を4番で試しているが、4番を任された途端バットが振るわなくなっている。


「チャンスが来たら燃える男が、4番に必要な資質だよね」

 ランナーがいない時だけ打つバッターや、チャンスに怯えるような打者ではとても務まらない。


「全員野球なんだから、強打者ほどの活躍が出来なくても自分にしかできない役割があるはずなのよね」

 あいつに比べてどうせ俺は、などと腐ることはない。


「そうそう! ファインプレーでピンチを脱出したあとに打線に火が付くなんてままあることだからさ」

 ひたむきなプレーを見ると、力が湧いてくるものである。

 日本情勢に目を向けてみても大ピンチの真っ只中であるが、ここは死守して大逆転の攻勢をかけていきたい。


「学校の例でいうと、文化祭の演し物や体育祭はクラスのまとまりのあるところが強いのよね」

 ノボルの怪演で劇は大盛り上がり、クラス対抗リレーは十人身の差を付けてテープカットした。


「ビジネスマンで自分の成績だけにこだわっても決して待遇はよくならないし、何より達成感がないんじゃないかな」

 ひとりだけでもっているような集団は、かなり不安定なチーム運営である。


「わたしね、個人競技でも自分だけで勝てるなんてそんなことありえないっておもってるわ」

 コーチ、トレーナー、スポンサー、観客、支援者、友人、家族、パートナー・・・。


「行きつけのご飯屋さんが店を閉めたら、いつもの力を出せないかも!」


「ボルらしいわ」

 人に恵まれているという言葉があるが、リーナは人間の可能性をとても強く信じている。世間では二言目にはいい人がいないというが、人間だれしもタイミングさえあえば潜在能力をいかんなく発揮するものである。そう思わせてくれたのは他ならぬノボルであるが、リーナにはその確信があった。






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